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渉外代表・自治体プロジェクト
ボランティア・NPOと行政の協働推進委員会に参加して 
 行政が多様化する社会のニーズに対応できなくなってきている」一方で、市民が自らの課題としてそうした問題に積極的に取り組み、特に、NPO法施行とともに、その動きが活発化しできました。そして今、ボランティア・NPOと行政とのさまざまな「協働」の在り方が日本各地で模索され始めています。自治体プロジェクトを推進する立場とも併せて、委員として参加した東京都と愛媛県の動きについて報告します。
「ボランティア・NPOとの協働に関する検討委員会」−東京都
 
 東京都では、1999年5月末に「ボランティア・NPOとの協働に関する検討委員会」を設置し、翌年10月に報告書と提言をまとめました。報告書によると、残念ながら協働の現状は極めて少ないものです。協働の効果としては、行政側では、社会的ニーズへの柔軟な対応や政策への新しい発想の導入、硬直的組織の自己改革が挙げられます。一方、ボランティア・NPOにとっても、新しい公共領域の育成、責任ある体制での社会サービスの提供、政策提言の実現と自己改革等への期待が挙げられます。
「協働の推進指針」策定への提言では、1 新たなニーズへの対応、2 事業の見直しによる協働の拡充、3 目標設定と事業評価の実施(目標の明確化、事業目標の見直しと共通目標の検討、市民活動育成の見地からの事後評価の実施〉、4 政策策定過程の公開の推進,(NPO実践活動から得た知識の政策策定過程への有効活用)、5 総合的な情報収集・提供システムの確立、6 職員の意識改革、等が盛り込まれています。
 行政と市民活動には組織原理や行動習慣等に大きな差があり、協働を進める上では、まず互いに理解し合うことが重要だと考えます。さわやか福祉財団にも長期研修で自治体から参加されていますが、こうしたNPOへの職員派遣研修がさらに進めば意識改革に役立つはずです。
「県民による地域社会づくり推進懇談会」−愛媛県
 
 愛媛県は、加戸守行新知事の提案で、1999年7月に「県民による地域社会づくり推進懇談会」が発足、その後1年6か月にわたり討議されてきました。県が重点的に取り組むべき施策として、当方から政策提言した内容は次の通りです。
(1) パートナー構築のための環境づくりについて
[1] 県の姿勢の明確化、[2] 県及び職員の意識改革と地域活動への参加促進、[3] 情報公開・情報提供の促進
(2) 県民による地域社会づくりの仕組みづくりについて
[1] コミュニティー再生に向けた活動展開、[2] 地域課題を考えるワークショップの検討、[3] 起業家への支援
(3) 県民の公益的活動への支援について
[1] 支援の仕組みづくりの検討、[2] 活動評価の仕組みづくりの検討等
 最後に、県が条例を検討する参考として、「愛媛県市民公益活動促進条例案[骨子]」を提言しました。「市民公益」は、私が委員として主張した重要点で、今後、県議会、県民公聴会を通じ、県がどのようにまとめるか、大いに注目するところです。
 日本における「協働」は、今後地方分権が進展し、自治体独自の地方政策が展開され、情報公開が推進されていくに伴い、ボランティア・NPOの知恵を生かした開かれた地域社会づくりとして展開していくと思われます。「市民活動」も、新たな市民公益,の担い手として、また責任感ある多様な活動体として、多くの人々の信頼を得て市民権が構築されていくことでしょう。
(和久井 良一)








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