日本財団 図書館


ありがとうを循環する地域通貨 12
自由に楽しいアイデアを出し合おう
 「地域通貨ってどんなもの?」「地域通貨を始めてみたいのだけれど…」といったお問い合わせを、さわやか福祉財団宛にもいただきます。どのようなきっかけで地域通貨に関心を持たれたのか、思いも様々です。
 「地域の顔が見えにくい関係を何とかしたい」―。
 先日、財団に来訪された、ニュータウンにお住まいの方がありました。外の地域から引っ越してきた人か多く、知り合いも少なく孤立しがちなので、地域に交流の場をつくりたいという思いが、以前からあったそうです。そこて、数年前から自治会の中でメンバーを募り、福祉・ボランティアをテーマに勉強会を始められたとのこと。しかし、なかなか人が集まらない、さらに活動に積極的にかかわれない人がいるなどと悩みが出てきました。そんなとき、地域通貨の言葉が目に止まり、新しい展開のきっかけにしたいということでした。
 自治会の活動に取り入れたいというお話は他からも聞こえてきます。さわやか福祉財団では昨年10月に地域通貨の研修会を開きました。全国から約70名の方々にご参加いただき、みなさんに参加の動機を伺いました。自治会の役員をされているという方は「高齢者も安心して住めるよう、必要最小限の防災ネットワークをつくりたい」とのことでした。他には「PTAの活動をしているがみんな消極的なので、地域通貨を使って楽しく参加できる雰囲気にしたい」「子どもも一緒に参加できる仕組みにしたい」という方も。さらに、「退職後、何か地域での活動を考えていたところ、地元に地域通貨のグループがあって参加するようになった」という方もありました。
 このように、自治会、PTAなどの活動の中やボランティアクループのメンバー同士で、地域の人たちが気軽に集まれる場づくりに、あるいはご近所での交流を深めるきっかけとして、地域通貨を活用できる場面はいろいろ考えられます。
 どの方の意見にも共通していえるのは、地域に暮らす人々の交流をもっと広げたい、という思いがあることです。地域通貨はサービスを交換するツールですか、それ自体が本当の目的ではないことがわかります。サービスのやりとりをしなから、参加者の間に会話か生まれ、和気あいあいとした関係のきっかけをつくることが、地域通貨の大切な役割です。人間関係が希薄になってきたといわれる今日、改めて地域でのつながりが見直され始めてきたことと、地域通貨の取り組みが盛んになってきたことは無関係ではありません。
 現在、全国には何十もの地域通貨のグループがありますが、始まった背景も仕組みも様々で、それぞれに独自の工夫が凝らされています。地域通貨は始めたいと思った人たちか自由につくり出していけるものですから、正しいやり方、間違ったやり方というものはありません。たとえば交換するサービスについても、「助けられ上手・助け上手体験ゲーム」に参加された方の中には、「こんなことでも地域通貨でお願いしていいの!?」「こんなことをしても地域通貨がもらえるの!?」と、思いもかけないことか「サービス」になることに驚かれる方もあります。「モーニングコール」でも「お酒の相手」でも、自分が頼みたいこと、できることで思いつくものであれば、どんなことでも構わないのです。
 自分の地域で安心して暮らし続けたいということは誰もが持つ願いです。地域通貨はそんな願いを実現するヒントを出してくれるかもしれません。
 みなさんの自由なアイデアで、楽しく、地域通貨を始めてみませんか?
(地域助け合い普及事業担当/松宮 さと美)








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION