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われら地域市民
わかるためには来てもらえ、この中を見てもらえ
地域との交流をめざす知的障害者更生施設
四賀アイ・アイ(長野県)
 「歓迎の音楽が始まりますのでこちらへ」と主任指導員の川上都子さんの案内で作業室へ。入居者の皆さんが“四賀アイ・アイのテーマ“の演奏で迎えてくれた。
 
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四賀アイアイ全景
 
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食事やおやつ作りのグループ活動
 
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クリスマス会の練習

 長野県松本市から30分、東筑摩郡四賀村にある知的障害者更生施設「四賀アイ・アイ」を訪ねた。1993年の設立、松本養護学校の卒業生を中心に50名が入居、職員は31名(臨時も含む)、北アルプスを望む約6800m2の小高い丘にある。月曜日から金曜日までここに宿泊、週末は家で家族と過ごす。
 「知的障害のある人たちを鍵のかかった部屋に閉じ込めておいてもだめ。彼ら自身が自然の中で生きていくことを動物的本能で体感することが必要です。村の中へどんどん出しました。村の人たちとのトラブルが絶えなかった」と「四賀アイ・アイ」施設長の大池幸一郎さん。あっちで事故、こっちで村の人たちから文句を言われ、職員はそのつど謝り回った。
 「今は村の人たちにご迷惑をかけているけれど、将来きっと村の人たちにも良いことがある。この子たちがきっと証明してくれる」と思っていたという。現在では大池さんの思惑通り、村の人たちの理解も進み互いに協力し合う関係。村の中へどんどん出て行った子どもたちが、四賀村住人として地域の人たちと仲良くなり愛されたからだ。
 「5年間かかりました」と大池さん。閉鎖的にならざるを得ないこの種の施設には珍しく地域との交流を大切にする。
 地域とのつながりの中でも一番関係深いのが松本青年会議所。1982年から毎年夏に地元の障害を持った子どもたちと近隣の子どもたちとを一緒にして、2泊3日の共同生活を行う「フレンドシップキャンプ」という催しを行ってきた。
 「四賀アイ・アイとのお付き合いは、1995年4月、私たちJC(青年会議所)会員やボランティアが同所を訪問し交流の輪を広げたのがきっかけ。以後施設の行事などには青年会議所の誰かが必ず参加しています」と話す田中浩二さん、現在同会議所で福祉関係のリーダーとして活躍している。
 「老人クラブ、ボランティア団体、学校など村内のあらゆる団体と交流しています。四賀アイ・アイの活動が村人の中に自然と溶け込んでいる感じ。何かをやるときには必ず村の人と一緒」と職員の白井尚子さん、田中さんも頷く。
 1996年7月に県の定例議会もここで開催されたことがあるというから行政との交流も相当なもの。ボランティア団体や青年会議所の会議、学校の研修会、村の奥様方の料理教室などにも会場として施設を使ってもらう。職員の川上さんや白井さんのもっともっと地域の人たちと仲良くしたいという思いがひしひしと伝わってくる。それは大池さんがいつも口にするこの言葉を信じているからだ。
 「わかるためには来てもらえ、この中を見てもらえ」
(取材・文/三上 彬)








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