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地域のふれあいの多さ、役割の多さが長寿の秘訣!
 こんな沖縄の高齢者パワーの秘訣を伺おうと、県内高齢者の現状を様々に研究している琉球大学の平良一彦教授(教育学部生涯健康基礎学講座)を訪ねた。平良さんは沖縄本島北部の出身で長崎大学で医学を勉強したのち、10年ほど前から沖縄県内の高齢者の健康調査をしている。沖縄ならではの長寿の秘密を探ることで、これからの高齢社会を迎え撃つ手がかりを見つけたい、という考えである。
 数年前ハワイに住む日本人の高齢者の健康調査をしたとき、温暖な地でのんびり暮らすのはいいけれど、やはり言葉の不自由さが付いて回る、という意見が多かった。このとき「なぜハワイなのか。沖縄なら言葉だって通じる!」とひらめいたそうだ。温暖な気候と豊かな自然は、沖縄もハワイも同じ。これからは沖縄だ、と再発見した平良さんは、高齢者が平穏に暮らす沖縄の知恵を全国に広めたい、沖縄から健康生活の提言をしていきたい、と東奔西走の日々である。
 「観光局の人ですか?」といわれるほどピーアールに熱心な平良さんに、沖縄の人々が一人であっても生き生きと長寿を過ごす理由を聞くと、まずこんな答えが返ってきた。
 「沖縄県のお年寄りの友達の数の多さ、その友情の深さは日本一でしょう」と。
 気候、風土、食べ物、家の構造など、高齢者の暮らしやすい利点はいろいろあるが、何よりいいのは高齢者が寂しくならないような人のつながりだという。
 「袖ふれ合うも他生の縁、なんてもんじゃない。1回会ったらもう兄弟同然、何の隔てがあるものか、という独特の人なつっこさがあります。家族や地域から孤立して、完全にひとりぼっちで暮らしている人なんていないです」と自信たっぷりの発言。沖縄にはいわゆる“過疎“の町や村はない。本島なら2、3時間あれば端から端まで行けてしまうからだという。また、良くも悪くも年中行事の多い土地柄ゆえ、一人でひっそりしていたくとも、何かしら人の出入りがある生活ぶりだという。
 「二つめの特長は、お年寄りが役割を担って生きている環境。高齢になっても、かけがえのない存在として、何気なく人の輪の中に入っています。だいたい沖縄には隠居という言葉がないんです。最晩年でも現役です。要は、一緒に遊ぶ人がいて遊ぶことがたくさんあること」。そのために行政もボランティア団体も、もちろん高齢者自身もあれこれ努力している。「今県内で1 00歳以上が457人です。お年寄りを大事にする気風はありますが、お年寄りの方でも甘えてはいません。亀の甲より年の功ですか、自信を持って自分の役目を果たしている生き方には学ぶべきものがたくさんあります」
 
きれいなお年寄りを増やそう!
沖縄美容介護協会の奥平郁江さんの話
 
 高齢になっても身だしなみは大切。お化粧することで心身ともに若返るというのは今や知られるところだが、ここ沖縄でもそんなボランティアが根付いている。「お年寄りにお化粧してあげると表情に輝きが出る、と言いますでしょう?私たちは、自分で化粧ができない方にお化粧してあげるボランティアをしていますが、比重が大きいのは、ボランティアの美容アドバイザーの養成です。講座開催を呼びかけて、少しでもできる方には資格を取っていただく。それを県内各地で開催しボランティアグループをつくっていきます。ちょっとしたおしゃれを心がけるようになると気分も若返りますし、周りも明るくなります」
 ここのお化粧講座で面白いのは、講座に最後まで出席した人は、熟年美容指導員として、今度は他の人のアドバイスをするような仕組みになっていること。結局地域のお年寄りをひとりぼっちにしないで、何とか人の輪の中に入ってもらう手段なのだ。「病気ではないけれど、という受け身の状態から一歩進んで、どうせなら自分も周囲の人も気分良く美しく、の心がけで変わりますよ」
 奥平さんは、これを化粧療法と呼ぶ。高齢や病気や障害のため、引っ込み思案になっている人の心を活性化する作業療法に通じるものだ。目をのぞきこみ、肌を、ふれあうので、化粧はコミュニケーションの方法として有効、女性だけでなく男性の参加も多い。出かけていくところがある、生活にメリハリをつくる、という高齢者の基本的生活の一つの柱である。こういつたことが行き渡っているせいか、もともと沖縄は美男美女の産地だからか、県内の路線バスや町中で見かけるお年寄りは、皆すっきりと明るく美しい印象だった。








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