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会員が自由に過ごせる場づくりを目指し
 「ただ実際には、この2年近くはいささか介護保険事業にとらわれがちだったかもしれません」とも振り返る星川さん。
 何もかも初めて尽くし。人もシステムもおぼつかない中で多くの需要に応えていかねばならない大変さを思えば、それは致し方ないことではあろう。
「でもようやく介護保険のほうも落ち着いてきたので、これからはもう一度、たすけあい活動のあり方を見直してみたい。そう思っているんですよ」
 その方針の一つの表れともいえるのが、冒頭に紹介した「たすけ愛の家」の開設。そもそもは、利用会員の中に在宅の痴呆のお年寄りがいて、家族から「何かのときには気軽に預かってもらえるような場所が欲しい」との声が上がったことが、ここをつくろうと思った理由だという。
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第2回「オルゴール&お茶の会」
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入院中の方の外泊時の見守り。1泊して病院に戻るところ「たすけ愛の家」を開設
 「どうせやるなら、介護保険対応のデイサービスにすればいいじゃないか、との声もあったんですが、お年寄りだけでなく子どもも預かりたかったし、会員が買い物の途中や散歩がてらにフラリと立ち寄れる場にもしたいと思いましてね。それであえて、利用料は無料。いつ来ても、いつ帰っても、どんなふうに過ごしてもいいですよって、ことにしたんです」
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 通院介助のお手伝い
 その結果、お年寄りはもとより、「ただいま」と学校から帰ってくる子どももいれば、「一人でいると話し相手がいなくてつまらない」とお茶を飲みにやってくる未亡人など、9歳から90歳まてが集う、賑やかな市民の交流の場となった。またいつの間にか、ちぎり絵や絵手紙のサークルもできて、趣味を楽しむ人々も集まってくるそうだ。「思い起こせぼ7年ほど前、この活動を始めた頃には、まだ他人の手を借りて介護をすることに抵抗を持っている人が多く、“ご近所の目があるから、会の名前の入った車で家には来てくれるな”と言われるなど、裏方に徹するためにずいぶん気も使ったものです。それが今では、“病気の友人へのお見舞いとして、お金を包む代わりに会の入会金をプレゼントしたい”といった申し出があったり、“サービスチケットを知人へのお礼にしたい”という方もいる。たすけあいのシステムが市民の間に知れ渡り、いろいろな人が私たちの思いつかないような形で会を利用してくれるようになったのは、本当にうれしいことです。それとともに活動を通して感じたことは、助けることを経験しておけば、いざというときに助けられることにも抵抗がなくなるということ。だから、一人でも多く仲間を増やしてふれあい社会の実現を図りたい。そのためにも市民のニーズを把握して、そのときどきに必要とされることをやり、“ああ、ここの会員になってよかった”と皆さんに思ってもらえるような活動を展開していかないとね。“たすけ愛の家”はそのための第一歩でもあるんです」
 設立当初に誓い合った、「不幸を追いかける会ではなく、幸せを追いかける会にしよう」との思いは、今も変わらず健在。これからも楽しくそして温かなNPOならではの活動が展開されるに違いない。
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昨年秋に行った「かくし芸大会」の様子。様々な催しに大爆笑あり大拍手あり。写真左は「いつも外に出る機会がなくて本当に楽しかった」というご夫婦を見送る星川さん
 
 北海道登別市に本拠地を置くNPO法人いぶりたすけ愛は、高齢化が進み、核家族化が進む中で、お互いが相互扶助の心と対等な立場で、いろいろなサービスの交流を行い、心豊かに「たすけ愛」、生きていく地域を目指す市民団体。家事援助やお年寄りの話し相手、産前産後の手伝い、留守番、散髪、保育園の送り迎え、通院送迎など、幅広いサービスを行っている。会員になるには正会員は入会金1万円(サービスを受けることも提供することもできる)、運営会員は同1万5000円(総会に参加し、会の運営を考えることができる)が必要。サービスはチケット制で1時間5点(1点100円)。サービス提供者が受け取ったサービス券が100点に達したときに精算できる(うち2割は会の事務費に充当)。時間預託をすることも可能。介護保険サービスとしては、居宅介護支援事業と訪問介護事業を行っている。(→連絡先は最終頁)








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