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喜・涙・笑 ふれあい 活動奮戦記
NPO法人いぶりたすけ愛(北海道)
 助けることを経験すれば、助けられ上手にもなれる。
 だから楽しみながら活動を広げていきたい
 
 「会員の方がいつでも気軽に訪れ、自由に過ごせる場がほしいと、昨年6月、新しく広い事務所に移ったのを機に、“たすけ愛の家”を始めたんですが、先日ここで隠し芸大会が催されましてね。それも事務局からの働きかけじゃなく、来ている人たちが“せっかくだから、何かやろう!”と自主的に発案、企画してくれたんです。当日は50人も集まる大盛況で、歌に踊りに手品にと、それぞれが持ち芸を披露。私もついつい悪ふざけをして、“叶姉妹”ならぬ、“叶おしまい”なんてものをやってしまいました(笑)。こんなふうに仲間と一緒に楽しい時間をすごしながら、お互いに助け合って暮らしていけたらいいなと、改めて感じた1日でした」
 
 はずんだ声でこう語るのは、設立7年目を迎えたNPO法人いぶりたすけ愛の代表を務める星川光子さん。代表の苦労は多いのでは? と水を向けても「いいことも、悪いこともすぐに忘れちゃうタチだから」と笑いとばす、明るく元気な人だ。
事務所外観
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無関心を反省し自分たちでできることから始めようと会を設立
 星川さんが福祉の世界に足を踏み入れたのは、今から10年以上も前のこと。友人の誘いで、在宅のお年寄りを特別養護老人ホームに連れていく入浴介助のボランティアに携わったのがきっかけだという。
 「それまで福祉にはまったく無関心で、バドミントンに、木彫りにと、日々、遊びほうけていたんです(笑)。でも、ほんの軽い気持ちでこのボランティアを始めてみたら、それはもう驚きの連続で。介護を担っている家族は疲れきっていたし、介護される側のお年寄りも、“寝たきりなので月に1度のこの機会しかお風呂に入れない”とこぼされる。これでは、いったい自分が年を取ったときにどうなってしまうんだろうと、不安を通り越して、憤りすら感じました。でもよくよく考えてみたら、私みたいな無知・無関心の人間が、こういう遅れた福祉情勢をつくり出しているのかもしれないなと。それで反省を込めて、まずは自分ができることからかかわってみようと、仲間と一緒に勉強を始めたんです」
 そして本で読んだ「時間預託」に興味を持ち、兵庫県神戸市まで足を運んで時間預託を取り入れている在宅福祉団体を見学。その際にさわやか福祉財団の存在を知り、また堀田力理事長の講演会を聞く機会もあって、リーダー研修会にも参加。その過程で、「私のやりたいことはコレだ」との思いを深くし、会の設立の決意をしたのだという。
 「立ち上げに際しては、広報紙を作って回ったり、地元紙にも何度も掲載してもらいました。また少しでも多くの人に在宅福祉の問題に興味を持ってもらうために、痴呆性老人の問題を扱った羽田澄子さんの映画の上映会も開催。そうした中から入会してくださった方も少なからずいましたね」
 こうして1995年4月に会員38名で、「いぶりたすけ愛」(「登別ライフケアを考える会」として発会。その後改名)が誕生。とはいえ、当初は社会福祉協議会の机を1つ借りてのささやかな船出だったが、その後、活動が広がるのに併せてアパートの一室から一軒屋、そして店舖へと少しずつ大きな場所に事務所を移転。そして現在では会員数600名を超える大所帯となり、NPO法人格を取得して2000年4月からは介護保険事業への参入も果たした。
 
1995年4月   社協の机一つを借りて「登別ライフケアを考える会」を発足
1996年4月   事務所を借りて独立
1997年5月   会の名称を「いぶりたすけ愛に改名
1999年4月   北海道よりNPO法人として認証される
2000年4月   介護保険事業に参入。訪問介護と居宅支援事業を開始する
2001年6月   事務所転居に伴い、市民の集いの場「たすけ愛の家」を開設
 
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 会員さんから借りた100年前のオルゴール
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「オルゴール&お茶の会」。100年前のオルゴールを聞きながらアンティークなコーヒーカップでコーヒーと手作りケーキで憩いのひととき
「活動を始めてからはほとんどP RらしいPRはしたことがないんですが、会員から会員へと口コミで輪が広がっていきましてね。やはり、一つ一つのサービスを丁寧にやってきたのが良かったのかなと。ただ正直なところ、住民や行政から私たちの会がどの程度の信頼を得ているのかは、日々の活動からはなかなか推し量れるものじゃない。でも介護保険への参入を決めたところ、市や社協も応援してくれたし、当初予想していたのをはるかに上回る需要もあった。それで、夢中でやってきたけれども、これって今までの活動が生きているんだな、認められているんだな、と初めて実感することができたんです。そういう意味では、介護保険は事業の安定だけでなく、これまでの活動に自信を持たせてくれるいいきっかけにもなりましたね」








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