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今、心の教育を考える
体験型進路指導「城南ドリカムプラン」から生まれた主体的ボランティア活動
福岡県立城南高等学校
 
 ここ城南高校では生徒会が中心となって、各種募金活動、老人ホーム訪問、校外清掃、その他ボランティアイベントヘの参加の呼びかけなど様々なボランティア活動を積極的に行っている。特に昨年4月に行ったあしなが学生募金では、有志が30名ほど参加して実施。募金高は全国の参加1961校中、九州第2位、全国第4位だったほど。ところで城南高校は、県下でもトップレベルの大学進学率を誇る進学校。進学校というとボランティア活動にはあまり熱心でないのが一般的だが、その他の活動にしても教師主導ではなく、まったくの生徒主体の活動である。たとえば校外清掃は体育大会の前後に近所に迷惑をかけるからと、体育大会の各ブロック役員を中心に自主的に行う。
 「城南高校のボランティア活動の基本方針は、ボランティア活動の大切さを伝えて皆さんに積極的に参加してもらうこと、そしてボランティアを通して豊かな心を育み、人のために働くことによって社会的視野を広げるような環境をつくることです」ときっぱりとした口調で説明してくれたのは、生徒会執行部ボランティア担当の宮本一慶君、2年生。「いろいろ学校に送られてくる資料を渡し、後は彼らに任せておけば自分たちでやってくれるので安心です」と目を細める生徒会担当の兼松健一郎先生。
 普通だったらガリ勉のはずがどうして?実はこれには訳がある。話は1994年にさかのぼる。個性重視の教育課程で育った新入生。騒がしく話を聞けない、暗記やドリルに熱心でない、そんな新入生たちを前に、これまでのやり方ではだめだと1学年担任が一致団結して考えた。「勉強に関しては物量的にはこれ以上入れられないというほどやっていたので、残るところは精神的な部分、心の部分だったんです」と当時を振り返る和田美千代、井上英一郎両先生。目標をはっきり持っている子は放っておいても勉強する。だから目的(夢)を探させようと。活動的、個性豊かといった点に着目し、生徒自身が自分の将来設計をし、様々な体験を通して、将来自分の進むべき道を模索するという新しい進路学習ドリカムプランをつくり出した。今年度は、志望系統別に理学、工学、医療・保健、教育など10のドリカムグループに分かれて、木曜日の5限、ジョイントという名の総合的な学習の時間(2単位)を中心に活動している。
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 介護体験「おばあちゃん、気持ちいい?」
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 生徒会ボランティア担当の宮本君(右)と古賀君
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 ボランティア清掃に大ハッスル!
 このドリカムプランを続ける中で、医療・保健グループが老人ホームを訪問するようになり、その他のグループでも生徒が独自にボランティア活動を行うようになってきた。しかし、ばらばらに活動しているため、活動内容が重なったり、ドリカム活動の時間だけでは消化しきれなくなったりという問題が出てきた。そこで、グループの枠を超えて生徒がもっと効率よく自由にボランティア活動ができるようにと、窓口として生徒会にボランティア担当をつくり一本化したのである。企画はすべて、生徒会。新たに始めた南アフリカヘ教科書を送る活動も学校に送られてくる資料の中から選び、実施した。初めは不安だったが、実際やってみたらみんなの協力があり、大成功。プルタブ・アルミ缶を1100kg集めて車イスを1台送る活動では現在5kg、何とか自分たちの卒業までに実現しようと、年末年始でキャンペーンをはり、クラスマッチ形式で活気付けていきたいと考えている。「警察官の父に小さい頃から人のためになることをしなさいと言われ、ボランティアはずっとやってきました」と話す同じくボランティア担当の古賀君は1年生、来年度は宮本君に代わり中心となって活躍する予定。ドリカムプランで育つ主体的な高校生に明るい未来を見た。
 取材・文 川尻 富士枝








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