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ありがとうを循環する地域通貨 11
男性の皆さんも参加しませんか?
 これまでの地域での助け合いの事例を見てみると、その活動が、女性が中心となって進められているものが多く見受けられます。また、実際に団体を運営されている皆さんからも、どのようにして男性に活動に参加していただくかについて苦労されているとのお話がよく聞かれます。「助けてあげたい」と思うやさしい気持ちは誰の心の中にもあるものでしょう。ただ、どちらかというと女性のほうがその気持ちを素直に行動へ移せるのに対して、男性は、行動する前に頭で考えてしまったり、少し照れくさかったりして、なかなか参加しづらいのかもしれません。
 先日、社団法人全国信用金庫協会が開催した「地域支援推進セミナー」の中での地域通貨研修会において、参加者の皆さんに本誌1月号でご紹介した地域通貨(時間通貨)体験ゲーム集「ふれあいゲームキット」を行っていただきましたが、このセミナーでは参加者が一人を除いて、各地の信用金庫の店舗から出席された男性でした。皆さん初対面同士であるこということから、10人程度のグループに分かれて自己紹介することころからゲームを始めました。
 ゲームでは、自分が選んだ「助けてほしいこと」のカードを示し、グループの中から「助けてくれる人」を探します。どうして助けてほしいのか、どんなことなら助けてあげられるのか、お互いに話しながら交渉を行い、交渉が成立すると「助けてほしいこと」のカードと「ふれあい切符」を交換します。さらに、助けてあげた人も「ふれあい切符」を使って、「助けてほしいこと」をグループの中の「助けてくれる人」に助けてもらいます。
 このようにしてグループの中をカードが循環した結果、自分の手元に残ったカード(自分が助けてあげたこと)を見てみると、「子どもの世話」や「ペットの世話」などが多い世話好きな人や、休みの日ならゆとりがあると「洗車」や「日曜大工」などで助けてあげる人など、参加者それそれの性格や生活が垣間見えてきました。また、唯一の女性参加者には、「アイロンがけ」の依頼が殺到するなど働くお父さんの困っていることも明らかになっきました。
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 また、地域通貨(時間通貨)のポイントは、恥ずかしがらずに「ちょっと助けてほしい」と言えるようになることですが、男性の参加者ばかりだったことから、皆さんが恥ずかしがってしまい交渉がスムーズに進むかどうか少し心配をしていました。しかし、実際にゲームを行ってみると、男性の皆さんであっても地域通貨(時間通貨)を使うことで自然と打ち解け、お互いの人柄を知り、話も盛り上がっていました。さらには、ゲーム終了後、助け合い活動中に何か事故があった場合の責任の在リ方や企業がどのように地域通貨の運営にかかわっていけるのかなど、勤労者らしい質問も飛び出しました。
 今回のセミナーでは、それぞれの性別、年齢、職種などの立場を超えて人と人を結びつけるきっかけづくりとしての地域通貨(時間通貨)の可能性が見えたような気がします。そして、地域での助け合い活動も、男性が参加することにより、「助けてほしいこと」のニーズや、団体運営面での充実など男性の視点からの新しい発見があるでしょう。そのためにも、地域での助け合いのきっかけづくりとして地域通貨(時間通貨)をより多くの皆さんに活用していただき、地域の中で皆さんがもっと顔見知りになって、それぞれの立場を超えた助け合いの輪を広げていただければと思います。
 (地域助け合い普及事業担当/三輪 修)








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