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今、心の教育を考える
学校と地域が一体になった子育て
―セカンドファミリー活動―
静岡県中川根町立中川根南部小学校
 
 「私は、今まで早起きができなくて、勉強も帰ってきてからすぐにやらなかったけれど、他の家に泊まって、ちょっと早起きができるようになって、勉強も帰ってすぐやるようになりました」(5年女子)。「お風呂もおじさんと一緒に入り、自分の家よりも早く眠ってしまいました。起きる時は、自分の家と同じでした。毎朝、牛乳とチーズを食べました。「また、春休みに来るね」○○さんに言ったら「ああ、いつでも来い」と言ってくれました。とてもうれしかったです」(5年男子)。
 これは、中川根南部小学校が実施している「セカンドファミリー活動」に参加した児童の感想文である。「セカンドファミリー活動」は、家庭交流をさせてもよいという家庭の4年生以上の子どもを、地域の子どものいる家庭や子育ての終わった一般家庭、老人家庭、その他受け入れを希望する家庭に日常生活のすべてに責任をもって2日から1週間程度預かってもらい、その家の子どもとして特別扱いせず生活をさせてもらうというものだ。地域みんなで子どもを育てるにはという課題に取り組んだ飯田隆校長が発案し、教頭、教務主任に相談して先生たちに提案した。
 そして、PTAの委員会や総会、教育協議会(評議委員会)、地域の人たちとの地区懇談会の席上で趣旨説明や協力依頼を実施。教育委員会にも通学路の変更等について相談、南部小だよりや地区臨時広報で実施希望家庭募集を行った。参加家庭を決定後は、実施の1、2週間前に学級懇談会や地域受け入れ説明会を開催して、子どもと受け入れ家庭の顔合わせを行い、実施に向け日程調整を行った。この活動への思いと実施状況、効果について飯田校長に伺った。「最近は都会ほどではないが、地域や家庭で人と人とのつながりが薄れつつあるように感じています。ですから、地域のコミュニケーションを良くしたい。また、子どもたちは溢れる物資の中で心が弱くなってきていると思います。そこで、心が逞しくなってほしいという期待を合わせて提案しました」。実施状況は「2000年から始めてその年は3回、2001年は2回と学期が変わって1回、その都度預け入れ、受け入れ家庭10組を選び、協力をしてもらった。初めての子どもたちは、2泊3日が多い。しかし1週間が限度とする中で、慣れると3泊4日から4泊5日と泊まる子もいます」という。
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ご主人と学習
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授業打ち合わせ
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ホストファミリーと
 効果については「家庭では自分の子どもの存在を見直したり、預かった子と自分の子どもとの違いに気づいたり、子どものいない高齢者宅では生活に張りができた、親戚がもう一軒増えたというような声があります。参加した子どもたちも、以前より、しっかりしてきたように思います。しかし、一方、感謝の気持ちを伝えない親もいて、気がかりもあります」と話してくれた。
 実際に預け入れ家庭と受け入れ家庭の感想文を紹介しよう。
 「帰ってきてからは、以前にも増して自分のことは自分でするようになりましたし、親の方もよそのお宅の話を聞いては、反省することしきりです」(預け入れ家庭)。 「今回初めてだったので、子どもにいろいろ教えてもらった3日間でした。学校生活には、10年以上離れて、ほとんど様子も忘れてしまっておりました。子どもからいろいろ頼まれて嬉しかったです」(受け入れ家庭)と大変好意的に受け止めているようだ。
 学校・家庭・地域が連携して、日常生活の中で子育てに取り組む。地域の教育力は学校だけでなく、地域においても発揮できるというよい事例だろう。あらゆる活動の可能性を否定せずに検討し、子どもたちに豊かな体験活動の場を提供してほしい。








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