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ありがとうを循環する地域通貨 9
 今月は地域内交易システムyufuを紹介します。NHK−BS放送の番組「エンデの遺言」に感銘を受けた仲間が集まり、少人数でもそれに合った暮らしの助け合いをと参加者5人から始まりました。
 
地域内交易システムyufu
 大分県湯布院町は、温泉と朝霧で知られる観光の町です。ここ数年は町外資本の土産物屋や旅館が増え始め、過当競争にどこも厳しい経営を余儀なくされるようになりました。私の周りでも自営業者が多く、お互いの空いた時間をちょっとやりくりすれば助け合いに役立てられそうなのに、自分の場から離れられないという状況があり、何とかできないかなあというジレンマを抱えていました。そんなときに地域通貨を知って、2000年4月から取り組み始めました。
 1yufuは約10分間のサービスまたは100円相当のモノと交換がきでます。ただし円との交換は不可。「通帳方式」と「借用証書方式」を併用しています。会員は2001年9月現在で71人。年齢層は上が60代から下は小学生まで。
 参加者の中には、高齢や障害などの事情でyufuのマイナスが増えてしまうと、それ以上マイナスになるのは気が引けてしまい、本人がyufuの使用を控える人もあります。それでは地域通貨が必要な場で有効に使われなくなるため、「yufuはマイナスになることを気にしないで遠慮なく使ってください。誰でもyufuのマイナスばかりになることがあり得ます。今お世話をしてもらうしかない状態にある人のマイナスを認めることは、自分がそういう立場になったときにも、気兼ねなく人にお世話してもらえるという安心感になります」というような説明をしてきたのですが、それでも「マイナス」という言葉の語感から、どうしてもマイナスになるのを嫌う人もいます。そこでこの状況を改善したいと作ったのが「福祉部会」です。部会で認めた会員に対レてyufuの支援カンパを募ります。その人のyufuを常にプラスの状態にしてyufuが減ることを気にせずに使ってもらおうというものです。
 昨年、会員でレストランを経営しているYさんという方が大きな病気をしました。そこで、yufuの仲間たちで相談して「がんばれYさん!支援コンサート」というのを開きました。入院生活には多くの現金も必要となりますので、コンサートの会費は現金で集め、その後yufuのカンパも皆にお願いしました。Yさんの入院中にレストランのお手伝いをした仲間にはyufuでお礼が支払われました。
 またもう一つ、「畑部会」という部会もあります。共同で畑を借りて作物を育て、なるべくyufuでやりとりできる農作物を増やして、グループ内の自給率を少しでも高めようというものです。600坪ほどの畑を借りてこの春にスタートしましたが、夏にはナスやトマトをはじめ10種類以上の作物が穫れて、会員間で分け合うことができました。
 yufuを始めて1年半、まだまだ「便利」を超えて暮らしの基礎を支え合うという域にまではとても達していないのですが、人とつながっていることで、生きている自分というものを少し実感できるようになりました。
(地域内交易システムyufu 事務局 浦田 龍次)








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