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今、心の教育を考える
手書きの絵や文章を添えたお弁当が温かい心をつなぐ
高齢者とのふれあい体験活動から
茨城県常陸太田市立機初小学校
 
 校門をくぐるとプランター一面の花が出迎えてくれた。茨城県常陸太田市立機初(はたそめ)小学校の歴史は古く、観水学舎の名称で寺子屋として創設以来、地元の人々の手で支えられて127年という長い歴史を持つ。一方、近年では地域の開発が進み、新興住宅地が広がり、現在、全校491名の児童のうち、3分の2が他地域からの転入生だという。
 「一つではなく多くの体験を通して児童の思いやりの心が育ちます。機初小学校では総合的な学習の時間、道徳、特別活動などを通していろいろな体験学習をしています」と沼田文夫校長が言うように、一人一鉢運動、里川クリーン作戦、スクールボランティアによる手話体験学習、車イス体験、小動物の飼育など様々な活動を展開している。玄関一面の花々も地域のお年寄りに毎年贈っているものだそうだ。
 その体験学習の一つとして、5年生が常陸太田市社会福祉協議会機初支部の協力で、一人暮らし高齢者食事サービスのボランティア体験学習をしている。5年生全員が2〜3人で1グループとなり、お弁当作りを見学した後、配食ボランティアとお弁当を高齢者宅に届け、ボランティア、お年寄りと一緒に食事をする。
 「お弁当を一緒に食べた後、おじいさんから戦争の話を聞きました。「サッカーでも何でも、何かをする時、最後まで粘り強く、皆で協力して頑張れば、負けても悔いが残らないだろう」と、おじいさんが言ってくれました。ぼくはすごく自信がつきました。すがすがしい気持ちで帰ってきました。いい体験をしました」。体験した子どもの感想文には、お年寄りとの食事や会話を通して、世代を超えたふれあいの新鮮な感動が綴られている。
 子どもたちと一人暮らしのお年寄りとのマッチングや配車、当日の事業進行など、機初支部の方々がすべて行っている。「普段お年寄りとふれあう機会が少ない子どもたちの緊張をほぐすように心がけています。毎回本当に楽しみに待っていてくれるお年寄りと子どもたちの笑顔が支えです」と、滑川さん(常陸太田市社協機初支部副支部長)はにこやかに話す。この体験学習を終えて6年生になると、毎月お弁当の上掛け紙を作ることになっている。上掛け紙には学校の出来事などが絵と文章で綴られ、食事サービスのお弁当に添えて毎月お年寄りに届けられる。ボランティアやお年寄りたちは、この上掛け紙を見ながら、学校での出来事を話題にして話が弾むという。この上掛け紙を大切にしているお年寄りも多い。また、機初小学校では、高学年のボランティア委員会が行っている空き缶回収活動に、低学年の児童がすすんでお手伝いする姿も見られるようになり、主体的な活動への発展が期待される。
 体験学習を推進する学校と、それを応援する地域。これから地域と学校とがどのように連携していけばよいのか、機初地区は一つのモデルを提示してくれている。
 
手作りの上掛け紙をかけたお弁当
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お年寄りとお弁当を囲んで楽しいひととき
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ボランティア委員会による空き缶回収
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取材・文/悪原 義範








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