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学校協力勝手連をつくろう!
 
堀田  社会貢献教育とは文字通り社会に目を向ける教育ですから、地域社会との連携が鍵になります。学校と地域のつながり方について尾木さんはどんなお考えをお持ちですか?
 
尾木  これまでのイメージでは、老人ホームに出向くとかあるいは地域の方が学校に来て何かをしてくださって、それでお帰りになるというものでしたが、これからは学校を拠点にしたまちづくり、そんな考え方がいいのではないかと。実際そうした観点で動き始めた学校がぼつぼつ出てきています。
 
堀田  いいですねえ。私どもと連携している全国の団体さんの活動ぶりを聞いていても、学校とのつながりが深くなってきたところが増えてきました。
 
尾木  例の大阪の付属小学校の悲惨な事件がありましたけれど、あれで「開かれた学校づくりは危険じゃないか」という議論がずいぶん出ました。ぼくはナンセンスだと思ったくらいなんですが、実は地域の方たちが大勢入って来て生き生き活動もされ、子どもたちとも日常の中で交流している状況ができれば、犯人はむしろ入ってこられない。開かれれば開かれるほど安全であるのに議論がおかしな方向にいってしまったなあと。
 
寺脇  あの時は、私も心配しながらマスコミの報道や社会の反響などを、それこそワイドショーも見ながらチェックしていました。新聞では「教育界の権威」といわれるベテランの大教育学者が「こんなことだからいけない。すぐに校門に鍵をつけろ、教室にも鍵をつけろ」と。一方で尾木さんがコメントを出されていて「いや、そんなんじゃない」と。どちらが国民の支持を得るのかはらはらしながら見ていたんですが、でも1週間もたたずに、マスコミの論調も変わりましたね。「開かれた学校に衝撃走る」といった大見出しも、一週間後には「両方は両立できる」と。やはりそれが世の中みんなの声なんです。
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尾木  一例を挙げれば、たとえば寺脇さんもよくご存じでしょうが、秋津小学校(千葉県習志野市)などはその典型だろうと思います。校長先生にうかがったら昨年は延べ1万3000人が出入りしたと。ある時場所がなくて困っているというのを聞いた校長さんが空き教室(余裕教室)をお貸しになったのがきっかけでコミュニティールームなんかをつくってそこに41ものサークルができているんです。授業中にも大正琴の音色が聞こえてきたりで、休み時間には子どもが高齢者のところに楽しそうに集まってくるんですね。
 
堀田  1万3000人といえばものすごい数です。学校を地域に開くというのを超えてまさに学校が地域そのものになっている状況、とっても自然な交流の場なんですね。
 
尾木  高齢者だって生き生きしてうれしいわけです。陶芸クラブなんかはさらに発展して4年以上の授業クラブとして正規に行われています。学校とボランティアに来てもらっているほうと相互一体、どっちがやってもらっているのかなんて関係ない。あるいは新潟の小学校に「昼休みボランティア」というのがあって地域のおじいちゃんがゴザ1枚持って、昼休みにぶらっと遊びに来る。そこらへんにさっと敷いて、将棋を差し始めると子どもたちが寄ってくる。コーディネーターは公募で地域の人たちで、地域みんなが生き生きしているんです。
 
寺脇  そうなんですよ。よく先生方の中に手間が大変だという声もありますが、学校にそれだけ人が入ることになれば、市民のボランティアが出てきますし、行政的労力も予算も動きます。かえってそのほうが楽になるんですよ。
 
堀田  そうですね。たとえば地域の人たちをいろんな名人に任命して、英語名人とか、外国の生活名人とか、ピアノの名人、パソコンの名人、いっぱいつくって、子どもたちが「これ、習いたい」と思ったら、自分の好きな名人を見つけて習いに行く。その名人たちも自分の技量を教えられるから楽しいし、そんな交わりが学校でもできたらすごくおもしろい。
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寺脇  ただ一つ心配なのは、来年4月からは利用されていない教室を特別授業に使ったり1クラスを2つに分けて使ったりといったことが増えますから、余裕教室が大幅に減って、今のようなせっかくの交流が閉ざされてしまうという逆流が起こり得るんです。でもそれは違うんですね。今の「余裕教室」の考え方は恒久的に使わないところ。でもどの教室だって24時間週7日使われているところなんてないんです。これはもう「そのとき空いている教室」という考え方に切り替える良いチャンスですよ。余裕教室が少なくなったから交流もやめるなんて押し戻すことはできない時代の流れなんですね。
 
堀田  さわやか福祉財団でも「学校協力勝手連」をつくりましょうと働きかけているんです。学校側があまり積極的に地域に働きかけないところはむしろまだ多いですから、でもそういう地域の人たちも「こんな協力ができるよ」と、それぞれに勝手連をつくって「協力しますからと申し出る運動をしましょう」ということを呼びかけてやっています。(会場に)ぜひ皆さんも地域で勝手連として参加してみてください。
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