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9月に「居場所研究会」を立ち上げて12月には初の報告を
 施設内では一介の生活相談員に過ぎない小寺さんが改革を成し遂げることができた一因は万葉苑が同族の支配する社会福祉法人ではないからだろう(労働組合が母体の社会福祉法人)。もっと言えば、それは小寺さんの人間的魅力に負うところが大きい。本人は多くを語らぬが、若いころは「命がけでヤンチャをやってきた」(ある人の話)そうだ。
 頼れる兄貴分といった求心力を備えており、「ひと声かければ男も女もさっと集まる不思議なリーダーシップ」(松尾さん)が若い職員たちを束ねている。制度によってガンジガラメにされている日本の福祉は「まじめで、やさしい、旧いタイプの福祉職では変えることはできません」と武田さんは断言する。
 小寺さんほどのメリハリがきいたパーソナリティーを持たずともお年寄りの「居場所」をキーワードに旧い老人ホーム内部の“解体“を目指す若者は他にもいる。尼崎市の「グループハウス」主任の松尾さん、9月号で紹介した福岡市の「第二宅老所よりあい」施設長・村瀬孝生さん(37歳)、仙台市の特養「せんだんの杜」の職員・新沼清孝さん(26歳)。学生では京都大学大学院で介護建築を研究する三浦研さん(31歳)。これに東北福祉大学教授の高橋誠一さんが加わって、9月4日、万葉苑で「居場所研究会」を立ち上げた。各地を歩いてお年寄りにとって居心地のいい「居場所」を探し全国に発信していこうという試みだ。12月1〜2日、岡山県笠岡市で開かれるユニットケア実践報告会で最初の成果を報告し、お年寄りのための「居場所」づくりというメッセージを発信する。
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居場所研究会の最年少会員はせんだんの杜の新沼清孝さん(左)。
右は山田昌弘副社長
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小寺さんの「居場所論」に着目。
居場所研究会の立ち上げを促した高橋誠一東北福祉大学教授
 きっかけはマイナス評価からであれ「介護保険」は、小寺さんのようなまったく新しいタイプの福祉人を登場させた。新しい制度を生かすも殺すも、それは人。時代が人をつくり、人が時代を動かしていく。
 制度に従うだけでなく、制度を良くし、変えていくことが市民の役割である。
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(ATC福祉機の展示場にて) 写真右から三浦研さん、小寺一隆さん、高橋誠一さん、松尾利恵さん、新沼清孝さん








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