喜・涙・笑 ふれあい活動奮戦記
NPO法人ケア・ハンズ(埼玉県)
ボランティアは自己実現の場。
だからこそ介護保険の枠外でできる援助を模索していきたい
「今年の8月19日、発足当初から1日5時間・週に5日、会のサービスを利用されていた方が亡くなられました。寝たきりの状態でベッドの上だけの生活でしたが“年中ヘルパーが替わり、決まったことしかしてもらえないのはイヤ“と、介護保険は一切利用しないで私たちに身を預けてくださった。時には医療行為との狭間でジレンマにも陥りましたが、訪問医療との連携とご家族との信頼関係に支えられて、最後まで在宅で過ごすためのお手伝いができたのは感慨深い限りです。このように利用者とのかかわりが深くなると、終末期ケアまで携わることもありますが、会を利用される方は一人ひとり生活歴も違えば、家族の事情も違う。ですから多様な価値観が学べるのが、こうした助け合い活動に参加する一つの大きな魅力ではないでしょうか」
こう語るのは、結成7年目を迎えたNPO法人ケア・ハンズの代表を務める中村清子さん。労の多い役割だが、「家族や理解者の応援」が活動継続の原動力になっているという。
協力会員の親睦を兼ねて群馬県まで施設見学とバスハイク
地域の中で自分たちのできることをしたいと会を結成
そもそも中村さんが福祉の世界に足を踏み入れたのは、いずれ親の介護が必要になったときのための学習として、(社)長寿社会文化協会(以下WAC)でホームヘルパー2級講座を受講したのがきっかけ。
「講座修了後、誘われてWACのホームヘルパー養成講座のお手伝いをすることになったのですが、それまでまったくの専業主婦だったこともあって、いつも在宅ケアの講義を聞き、事務所の中では高齢社会に向けての問題提起が論じられ、さらにはNPO設立の呼びかけ等々の中に身を置く環境はとても刺激的でした」
こうして福祉に興味を深めていった中村さんは、その後、養成講座で知り合った友人の東美千代さん、倉持文路さんとさわやか福祉財団主催のリーダー研修会にも参加。これを契機に3人で勉強会を行い、「自分たちの住む地域でも、何かできることをやってみよう」と、「ケア・ハンズ」を立ち上げた。1995年5月のことである。
「介護者への支援はもちろんのこと、身体は元気なのに引きこもりがちな高齢者へのQOL(生活の質)へのサポートをしたいと思いましてね。また、自分たちの経験や特技を生かして利用者への援助をさせていただくことは、いい自己実現の場にもなるんじゃないかと考えたんです」
発足当初は1か月の活動も12時間だったが、「できることをできる範囲で参加することをモットーに、まず自分の家庭や家族を大切にしてケア・ハンズの活動に参加してほしい」と呼びかけたところ、市役所や在宅介護支援センターなどにパンフレットを置かせてもらったことや地元紙に取り上げられたこともあって、会員は飛躍的に増加。発足2年目の96年度には年間活動時間およそ1万5920時間を記録し、その後も1万5000時間前後と順調に推移してきた。
「小さいからこそできるきめ細やかな活動をしていきたいと、話し合いを大切にして、利用者とヘルパーの相性を優先してセッティングすることなどを心がけてきました。その結果、猜疑心の強かった方が全面的に信頼してくれるようになったり、髪を振り乱していた痴呆の介護者が落ち着いていくなど、様々なうれしいケースを目の当たりにすることもできました。心配りに手を抜かなければ、誠意は通じるんだとつくづく思いましたね」
また、介護学習会や高齢者疑似体験といった啓発活動も定期的に実施。利用者が少しでも社会的生活を楽しめるようにと、「外に出ようよ!」と名づけた周辺散策&昼食会など、非営利のNPOならではの活動にも力を入れてきたという。
埼玉県さいたま市に本拠地を置く「ケア・ハンズ」は、心豊かに地域社会で生活できるよう、相互扶助精神の下で、民間非営利でなければできない福祉活動に関する事業を行っているNPO法人。主な事業内容は[1]ホームヘルパーの派遣、[2]子育て家庭への支援、[3]介護講習会の企画実施、[4]講師派遣[5]高齢者疑似体験の企画実施など。総会での議決権を持つ正会員になるには年会費5000円が、利用会員または賛助会員になるには同3000円が必要。サービスの利用料は1時間1000円(夜間・早朝は1200円)で、交通費は実費。サービスを提供した会員は、謝礼金として1時間800円(夜間・早朝1000円)を受け取ることができる。(
→連絡先は最終頁)
堀に飾られている看板
車両財団の助成金で購入した自転車