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われら地域市民
災害救助犬を知っていますか
〜犬を中心に心と心のふれあいボランティア〜
渡辺 登志男さん
湘南愛犬・警察犬訓練所 所長
 1999年11月、千葉県流山市の老人ホーム「あざみ苑」をJリーグ柏レイソルの選手たちが訪問し、お年寄りとの交歓を行った。この時、救助犬の活動の様子も披露され、お年寄りの方々は普段余り見ることのない光景に驚きつつも犬とのふれあいを楽しんだ。高齢者の方々とサッカー選手そして救助犬とのふれあいが同時に実現した斬新な試みであった。
 また今年2月には、東京部杉並区立和泉小学校でも救助犬訓練の実演が行われ、子どもたちは嗅覚で行方不明者を捜し出す救助犬の活躍に感心していた。これらの活動を行ったのが渡辺登志男さん。さわやか福祉財団も協力した。
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小学校で救助犬訓練を実演
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家族とのふれあいももちろん忘れない
 「私たちの役目は、お年寄りから話を聞かせていただくこと。犬は心の癒しを助ける大事な小道具の一つです。お年寄りがこれにより心の扉を少しずつ開いてくれれば」と話している。
 渡辺登志男さんは、生まれた時から犬に囲まれて育った愛犬家。父親が45年前に横浜市金沢区に開いた警察犬訓練所の二代目所長で公認訓練士である。小学校5年生の時、日本警察犬協会主催の「関東アマ・プロ競技会」で父子そろって優勝、大学在学中にはプ□の訓練士として「日本訓練チャンピオン決定競技会」に出場し、難関のチャンピオングループに入賞している。「犬それぞれの個性を考え愛情を持って訓練をすれば、犬も大きく成長します、人間の親と子の関係と同じです」と話す渡辺さん。傍らの明るく、たくましい渡辺ファミリー(妻と子2人)を拝見して納得。
 渡辺さんは99年4月、NPO法人救助犬訓練士協会の設立に参加し理事に就任、ボランティア活動に持ち前の行動力を発揮する。
 「まずは、一般の方々に救助犬や協会の活動を知っていただきたい。そのためには、たとえ小さなことでも実績を積み重ねていかなければと思います」という考えから台湾大震災救助活動、有珠山噴火による被災動物の救助活動、横浜市幼稚園協会・横浜市獣医師会・各地のロータリークラブなどでの講演会・セミナー、小学校での救助犬訓練実演、老人ホーム訪問、街頭募金活動など、幅広い人脈と他人の意見も積極的に取り入れる柔軟な考え方で活動の幅はますます広がっていった。
 本年5月、渡辺さんは2人でドイツのバイエルン州立警察犬訓練士養成学校へ研修に行った。災害救助犬、麻薬捜査犬、爆弾探知犬の訓練の状況を勉強するためだが、一番の目的は来年の日韓共催ワールドカップサッカー大会において、様々な国からフーリガンと呼ばれる暴徒が来日することが考えられ、その対策を大きな国際大会の経験豊富なドイツから学ぶこと。渡辺さんは今、安全な大会開催のためにこの研修体験が少しでも役に立つよう猛勉強中だ。
(取材・文/三上 彬)








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