総合的な学習の時間に向けた実践授業に学ぶ
第7回スクールボランティアサミット開催
取材・文/川尻 富士枝
8月22日水曜日、さわやか福祉財団で例年恒例となった第7回スクールボランティアサミツトを開催した。来年度から完全実施される「総合的な学習の時間」をはじめ、学校行事や授業への地域参加が注目されている。折しも大型の台風11号が首都圏に向かって接近中。どしゃ降りの中、受付開始時刻には、会場となったメルパルク東京に189名の方々がずぶ濡れになりながらも次々と集まり、学校開放と地域参加への熱い思いがほとばしるスタートとなった。
今回のテーマは「新しい世紀を拓く社会貢献教育」。これからの学校は、内にも外にも開かれたものになっていくはず。地域との連携のもと、子どもと地域住民のふれあいの場としても一役買うことが期待される。
分科会「社会貢献教育の実践に向けて」
午前中、テーマごとに4会場に分かれて実践発表
実践模擬授業の効果
「さあ、皆さん、これは何ですか?」車イスを指して問いかける教師の歯切れよい言葉から始まった模擬授業。第1分科会で、参加者を子どもに見立てたシミュレーション授業である。初めてのことに戸惑いながらも介助する人が車イスの人に「大丈夫ですか?」と自然に声をかけるシーンも見られた。子ども役を演じることで、この授業の効果が実感できるというもの。実際子どもはこのような体験でどこまで高齢者や障害者の心に寄り添うことができるのか、相手を思いやる心は生まれてくるのか。その答えを確信できたひとときであった。
アイマスク体験をする実践模擬授業。手を引くのは発表者の東京都青梅市立第2小学校乙津優子教諭(第1分科会)
「総合的な学習の時間」は次年度からの完全実施で、学校のより主体的な取り組みが求められる。参加者からは「わかりやすく、すぐにでも授業に役立てられる」という声が上がり、今後学校で実践する先生方の姿が想像された。
子どもの主体性を育む課題選択と評価方法
地域を生かした様々なふれあいの形が提案される中、「体の不自由な人にやさしくするには」の実践は子どもが3つのコースを自分で選択し、自分の疑問点や調べたいことを出し合うことから始めるという。お膳立てされた活動より、子どもに選択の余地を残すほうが、主体的な学習のスタイルに一歩近づくといえるのではないだろうか。
また、子どもの活動を評価する際、問題になるのは、一人ひとりの子どもの行動全部が見取れるわけではないということだ。
そこで新しい評価の方法として注目されているのが「ポートフォリオ」。ポートフォリオとは本来、「紙ばさみ・書類入れ」という英語で、そこから転じて「様々なものの組み合わせ、集合体」という意味で多くの分野で使われている。学校教育に関しては「集積された学習ファイルやフォルダ」のこと。具体的には子どもの書いたカードやメモ、スケッチなどを保管しておいたものから活動の跡をたどっていく。子どもは子どもで活動を記録し、自己評価を行う。第2分科会では、専門の講師から、その目的や手法などについての話があった。この評価の方法は今後ますます有効活用されると思われる。
身体の不自由な人とそれを助ける人になっての車イス体験(第1分科会)。
発表者、講師の方々。愛知教育大学の寺西和子教授(写真左)がポートフォリオ評価について講演(第2分科会)