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巻頭言
「時間通貨」をすすめよう!
縦型・横型のドッキング
さわやか福祉財団理事長 堀田 力 No.40
同時代の助け合いと異なる時代の助け合い
 「お隣さんがよくうちの子どもの面倒をみてくれるので、こちらはお隣さんの留守中は配達物を預かったりしている」というのは、同じ時代の横の助け合いである。
 これに対し、「元気な今、援助活動をしてふれあい切符を貯め、将来援助が必要になったとき、これを使って仲間に助けてもらう」というのは、異なる時代にまたがる縦の助け合いである。日本の公的年金制度も、現役の拠出金で高齢者を支え、その現役が高齢者になったときは将来の現役世代の拠出金で支えてもらうわけだから、縦の助け合いの仕組みだといえよう。
横型地城通貨と縦型地域通貨
 地域通貨は、地域経済の活性化を目的とするものと、地域における相互扶助を目的とするものがあるが、ここでは、日本で圧倒的に多い相互扶助目的の地域通貨を取り上げる。
 そのほとんどは、横の助け合いを普及しようとするものであるが、中には、ふれあい切符(時間預託)のように、基本的に、縦の助け合いを普及しようとするものもある。
 どちらも、地域におけるサービスの交換を媒介する手段である点で、地域通貨としての基本的共通点を持っているが、助け合う時期が横か縦かで、異なる点も生じる。
両者の主な相違点
 横型の地域通貨は、同時代に助け合いがより盛んに行われることを目的とするから、多様なサービスが登録され、どんどんサービスが行われることが奨励される。そのために、能力を異にする多様な人々が勧誘されるとともに、地域通貨が大いに使われるような仕組みが取られる。その仕組みには、あまり地域通貨を使わない人には、会から忠告が行われるというゆるやかなやり方から、地域通貨受領後一定期間それが使われない時は、無効になってしまうというはっきりしたやり方まである。
 そして、これに参加する人は、何らかのサービスを提供できる人ということになる。
 これに対し、縦型の地域通貨は、現在サービスを行うことにより、将来必要なときはそのサービスが受けられるという安心を得られることを目的とするから、それに適する性質を持つサービスは、おのずから、身体が不自由になったときに必要とされるサービスが中心になってくる。
 その提供者は、現在は必ずしも他のサービスを受けることを必要としない人であり、その人がサービスを受けるときは、自らはサービスを提供できない状態になったときである。
 そして、そのサービスを受けることは奨励されず、むしろ、サービスを提供したものの自らは受ける必要が生じることなく天寿を全うするほうがよいと評価される。
 我が財団はこの縦型の「ふれあい切符」を従来から推進してきており、また、これと同趣旨である横型の地域通貨のうち、時間を単位とする地域通貨を「時間通貨」と名付けて広めていこうと考えている。
両者のドッキング
 この2つの縦型の「ふれあい切符」(時間通貨)と横型の時間通貨とをドッキングさせられないだろうか。現にふれあい切符を使っている団体の中には、会員の要望に応じ、これをイベントなどにどんどん使うようにしているところが出てきている。
 両者をドッキングさせるのに必要な要件は、横型の時間通貨の会員が、縦型の会則と協働して同じ組織で活動することを認めることである。たとえば、横型は青切符、縦型は赤切符とすると、青切符はある時期に清算されてしまうが赤切符は清算されず、何年、あるいは何十年後に使われる(赤切符の持ち主がその時点で会員のためサービスをすることは困難であるが、それにもかかわらず会員は、赤切符の持ち主のため援助活動をする)ことを、青切符の会員が承知していることが必要だということである。
 縦型の切符がふれあい切符で、有償ボランティアと組み合わさったものである場合は、その援助サービス(たとえば、家事援助)を受ける人は、団体に対し、謝礼金を支払い、団体は、そのいくばくかを、将来の時点で会員の中に家事援助サービスをする人がいない場合に市場からこのサービスを購人するための資金として、蓄えておく運用になるであろう。しかし、そのことは、両者のドッキングの妨げにはならない。
 また、介助や家事援助などのサービスを、青切符で提供したり提供を受けることは構わないし、赤切符の持ち主がこれを青切符に変えてもらうことも構わない(その時は、対応する貯蓄金を団体のため使ってよいことになる)。
 両者のドッキングは、会員の選択の幅をより広くし、地域活動をさらに広める効果を持つと思われる。








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