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介護保険事業への参入によって助け合い活動が安定
 市社協の後押しもあって、ふれ愛の活動は初年度から2000時間を超え、その後も平均して20%前後の上昇カーブを描くなど、比較的安定した運営を保ってきた。そんな同会にとっての最大の転機は、1997年に訪れた。
 「市に有償家事サービスを行う福祉公社が設立され、これまでの社協の仕事を引き継ぐことになったので、ふれ愛もこの公社に入るように、と要請されたのです」
 公社のサービスが始まれば、草の根団体のふれ愛など、つぶれてしまうとも言われた。だが、せっかくここまでコツコツと広めてきた市民の自主的な助け合いの芽を摘んでしまって、果たしていいのだろうか。迷いに迷った結果、佐々木さんはその結論を総会での投票に委ねた。
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ボランティア新日鉄公園祭りから
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前の2つの建物が「ふれ愛」の活動拠点
 「結果は57対7で、このまま独立して活動していこうというものでした。一つになれば競争相手がいなくなる。そういう寡占状態では、何事も高かろう悪かろうになるのが市場の原理。介護の質が落ちる可能性も否めず、それは市民にとって決してプラスにならない。そういう意見が大勢を占めました」
 こうして公社とは一線を画したものの、結果は、今ある通りである。つぶれるどころか、99年にはNPO法人格を取得し、2000年4月からは介護保険事業にも参入。現在は会員数320名。1か月の助け合い活動は600時間、介護保険の利用時間は1700時間にも上るという。
 「介護保険事業に参入したのは、一にも二にも財政面の健全化のため。正直言って、銭集めのために頭を下げて回るのはもう飽き飽きという思いもありましたし、資金がないが故にやりたいこともできないというジレンマをずっと抱えていましたから。でも実際に介護保険に参入を決めた時には、こんなに多くの利用者が得られるとは思わなかった。長い間、助け合い活動を続けてきたことが財産になりましたね。“ふれ愛なら安心“と、他の事業所からの紹介も多いんですよ」
 もちろんその期待に応えるため、研修などを通じて質の高い介護を提供できるよう心がけているとのこと。また、介護保険の枠内では対応し切れない部分を助け合い活動でカバーしてほしいというニーズも高く、「両方持っているという点が、非常に良い方向に働いている」と、佐々木さんは現在の状況を分析する。
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利用者とふれ愛買い物ツアーのひととき
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ボランティア福祉祭りから








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