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われら地域市民
手話ができるお巡りさんいます
―全国初・警察学校に手話専科開講―
佐賀県警察本部
 これまでは主に企業やその社員の活躍ぶりを連載してきたが、今月はちょっと趣を変えて、“地域市民“を目指す警察官たちをご紹介しよう。障害者や高齢者との交流を通じて自らの改革に取り組んでいる佐賀県警察本部の活動だ。「近年、全国的に警察の不祥事が起こり、国民の批判も受けました。職務倫理をより高めるには言葉や理屈だけでなく、体験を通じて県民に温かい気持ちで接する心を養うことが大切だと思っています」と語るのは県警本部の早川治警務部長。
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高齢者疑似体験をしたり、地域のろう学校との交流に励む
 今年1月23日、県の警察学校に在籍する若手警察官10名が地域のろう学校を訪問し手話を交えて交流した。佐賀県警では1994年から警察学校で手話を学ぶ機会をつくっている。
 その目的を早川さんは「どんな方にでも親切・適切に対応するのは我々の基本的な役目。ハンディキャップを持った障害者の相談が理解できず、適切な対応ができなかったでは済まされません。障害を持った方々と交流を行い、疑似体験や手話技能を習得することで相手の気持ちや心情をより正確に理解したいと思っています」と語る。すでに200名以上の職員が手話技能研修を受講し、“手話交番“も4か所開設。今年からはより高度な手話技能を持つ職員を育成するために全国初の手話技能専科研修も実施した。さらに、職員で結成した手話クラブが地元の手話サークルと交流するなど、日頃のふれあいも大切にしているという。
 「今日の警察学校との交流会では、ぼくは、胸がドキドキしました。警察の人とコミュニケーションして、いろいろ勉強になりました」とはろう学校の生徒から寄せられた感想。一方で「こんな話もあります」と紹介してくれたのは教養指導官の黒田弘さん。ある老夫婦が武雄温泉に来て泊まる所を探すため何時間も聞き歩いたが、市民との会話ができず困り果てた。「最後に警察署を訪れ、手話で挨拶する警察官に出会い、旅館が見つかって大変喜ばれた」のだとか。地域との絆は着実に深まっているようだ。
 取材に出向いたその日、警察学校の講堂では介護講座の一環としての高齢者疑似体験が行われていた。受講者は警察職員、警察学校初任科学生の若い男女20名。耳栓・眼鏡・荷重チョッキ・重りをつけたサポーターなど4キロの用具を身に着け、80歳ぐらいの高齢者になった状態で階段の昇降、読書、食事などに挑戦している。「物がはっきり見えない、耳が良く聞こえない、手が思う様に動かせない状態は大変です。ぼんやりとした別の世界にいる様な感じです。困っている時は、さりげなく自然に手助けをしてあげたいですね」と、体験を終えたばかりの警務課の松本みゆきさん。“地域と共に“の思いで、県民の信頼と期待に応えようと佐賀県警察の皆さんはますます燃えている。
(取材・文/三上 彬)








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