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今、心の教育を考える
縁をきっかけに展開した学校協力
勝手連のボランティア活動
奈良県立北大和高等学校
 「口の中に1回運ぶたびに「ありがとう」と声をかけてくれました。自分にもできることがあるんだと、充実感でいっぱいになりました。名前は聞かなかったけど、多くのことを教えてもらったような気がします」「車イスを押しているという緊張感こそありましたが、気持ちは、友だちとしゃべっている時のように楽でした。考えてみたら簡単なことなんですが、「ボランティア」というものは、結局は人と人とのふれあいであって、私たちの友人関係と同じことなんだということがわかりました」
 これは、奈良県障害者運転者協会や車イスで生活している方々と一緒にバリアフリー活動を行った奈良県立北大和高校の生徒たちの感想文を抜粋して、紹介したものである。
 活動状況について担当の小崎誠二先生と活動のきっかけをつくった奈良県障害者運転者協会事務局長の平本準一さん、お二人に話を伺った。小崎先生は「生徒たちは、最初、緊張して何も話ができない状況でした。相手の方に対して、かわいそう、違う社会の人、どう接していいかわからないという状況でした。しかし、回を重ねるうちに「何も私たちと変わらない。むしろ私たちよりしっかりしていて、何でもできるんだ」という声に変わりました。また、卒業生が「就職活動や実習の時に、体験が役立って、抵抗感なく進んでサポートできるようになりました」と言ってくれたときに、体験というのは、3、4年経ってじわじわとわかってきて、人としての生き方が実感できるようになるんだなと思いました」とうれしそうに話してくれた。
 「実は、私が、定時制の高校に通った時の恩師が、小崎先生でした。それが縁で、小崎先生がこちらに来られた時に、「生徒が純粋なうちに障害者の問題について知ってほしいので、“身障ドライバーのあゆみ展“に協力してほしい」と相談を持ちかけました」と平本さん。
 小崎先生は「本校は進学校で、最初は事故やお金、担当の間題などで、内部での意思の統一ができなかったのですが、時間をかけて、まず学年レベルでホームルーム活動として始めました。平本さんの企画した1997年3月の「身障ドライバーのあゆみ展」に、生徒たちが参加して、チラシまきや受付、案内、パネル展示などに協力したり、生徒たちが想像する理想社会のイメージ画を作成、展示したりしました。今では、生徒会の活動として、ボランティア担当の教員が就き、社会福祉協議会や保育園、小学校のイベントの手伝いなどさまざまな活動に参加するようになって、全校生徒約1000名の1割程度が参加しています」と言う。その結果、「今は、活動に幅が出てきているのですが、指導者や一つ一つの活動への参加者の不足、保険や交通費、参加費などの予算が課題です」とのこと。
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様々な体験活動を通じて心が育まれていく
 一つの縁を大切にして、平本さんの思いを小崎先生は受け止めた。その結果、生徒たちの間にボランティア活動が広がった。さわやか福祉財団では、平本さんのような方を学校協力勝手連と呼び、応援している。学校協力勝手連は積極的に学校に足を運び、話し合いから始めてほしい。学校も勝手連の呼びかけに応えてテーブルにつき、児童・生徒に社会貢献教育の機会を広げてほしい。
取材・文 有馬 正史








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