日本財団 図書館


“仲間たちと最後までここで暮らします”
自立と共生への挑戦―ふれあい型グループホーム
無理のない自然な付き合いからふれあいが生まれる
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ゲスト NPO法人COCO湘南理事長 西條 節子さん
堀田  お二方のところともグループホームを開設されてそれぞれ数年経たれているわけですが、すばらしいモデルになっていて頼もしいと思っております。見学や取材やらも多いでしょう。
 
西條  全国からいらっしゃいますよ。もう来年までスケジュールがいっぱいで。
 
秋山  うちもなるべく皆さんに見ていただこうと思っています。実際に泊まられる方もおられますし。
 
堀田  私どもではふれあい型グループホームと言っていますが、共生型の住まいへの関心が本当に高くなってきましたね。
 
西條  グループリビングに住むことが自慢になってきているんですよ。
 
堀田  ほおお、そうですが?
 
西條  先日も、「入るには試験があるのよ」とか「八頭身じゃなきゃ入れないと言ってやったわ」とかみんなで大笑いで(笑)。
 
秋山  うちもテレビに出たりしますでしょう。もう時代の最先端にいるぞなんて(笑)。同窓会で皆さんに、進んでるねと言われたりして、自分ではわからなかったけど、グループホームっていうのはいいねと(笑)。
 
堀田  それはいいですねえ。ところで、入居者の皆さんの人間関係はいかがですか?見ず知らずの方が一緒に暮らしていく中でふれあいの度合いをどう深めていかれたのか、興味あるところなんですが。
 
秋山  平凡ですが、自然に、という言葉が一番ぴったりですかね。
 
西條  そうですね。お互いに自立された方たちですから。確かに皆さん最初の1年くらいは疲れたようですよ。まずテンポが違うんですよ。特に主婦でご主人に付き従ってきたような人は合わせる努力をされますから疲れたと思いますよ。
 
秋山  うちでも最初の頃は意識的にみんなでゲームをしたり、見学者が来られると庭でティーパーティーを開いたりしていたんです。でもやっぱり人によって生活のペースは違いますし、自然にやめるようになって、その辺からありのままに付き合えるようになりました。
 
西條  嫌なところは見ないで、いいところを見て付き合おうというか。うちは年齢も上と下で20歳以上離れていますから、かえってそれがいいのかもしれません。
 
堀田  今何人いらっしゃるんですか?
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ゲスト 田園生活館代表 秋山 博之さん
西條  私を入れて10人で、男性がお1人です。
 
堀田  男性がお1人だけ?どのような方なんですか?
 
西條  全盲の方なんですが、ずっとホテルで働いてきて、16年間一人暮らしをされていたので非常に自立されているんです。その方を見て、みんな自立というものを改めて学んだ気がします。
 
堀田  身近でいいお手本を示してくださる。
 
西條  本当に。古い人だとノーマライゼーションなんて言葉は知らなくても、廊下に物を置いちゃいけないとか、ドアは開けたら閉めないと彼が白杖で困ってしまうとか自然に思いやれるようになるんです。そんなことも含めて、2年目くらいからお互い違う個性が楽しいと思えてくるんですよ。
 
秋山  そうですね。個性が違うからこそ手をつなぐことができるというか。うちは男性が3人で女性5人なんですが、男手があるのはやはり何かの時に安心という思いが皆さんありますし、ただ、男性はどこか自分を抑えていますね。
 
堀田  やっぱり(笑)。
 
秋山  実は最初、それぞれの方のプロフィールなどを事前にご紹介しようと思ったんです。ところがある方からそれだけはやめてほしいと言われまして。
 
堀田  それはなぜですか?
 
秋山  先入観に捕らわれたくない、それは付き合う中で自然に知っていけばいいと。たとえば学校の先生だとか事前に知っていたら、最初から先生と呼ばなくちゃいけないのかとか、余分なことを考えてしまうと。
 
堀田  今の男性の意識だとそうなのかもしれませんね。肩書での付き合いはもういらないわけですし。
 
秋山  ええ。ほとんどの方が知らなくていいと。受け入れる側としてはちょっと心配だったんですが、でもまったくそんなことはありませんでした。
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堀田 力
1934年京都府生まれ。 さわやか福祉財団理事長、弁護士。
西條  うちは入居前に2、3度食事会や打ち合わせなどで皆さんお目にかかっていましたので、入居の時は来たわよって感じでした。2年目くらいからミーティングの中で少しずつ提案が出てきて、今、それぞれの誕生会をしています。みんなで笑い転げたりして、自然につながりが深まっていくという感じがいいですね。
 
堀田  個性が違うほうがいいというお話でしたけれど、食べ物の好みや趣味の一致などは大事ですか?
 
秋山  食事に関しては嗜好の違いというより、まず美味しいかどうかが根本の問題ですね(笑)。夕飯がまずいと全体に暗くなるんですよ。うちは最初の3年間、懐石料理の料理研究家という方が四季折々腕を振るってくれまして、次の方もそれで弾みがついたというか。食事がおいしいと火がついたように朝まで笑いが残るんですよ。
 
西條  そうですね。食事時にこれおいしいわとか味付けがちょっとねとか言えることがいいこと。それだけで楽しい雰囲気になれますから、その意味で食事は大事だなあと。
 
堀田  この前友達の最高裁判事と話していたら、同じような本を読んで、政治や経済も同じレベルで話ができる人と一緒じゃなきゃイヤだとか言っていたんですが(笑)、そんなことも大事ですか?
 
秋山  (笑)入居されている仲間にそこまでは求めないですね。それまでの人間関係がきちんと維持できていれば、外のお友達でちゃんと補っていらっしゃいますから。
 
堀田  確かにおっしゃるとおりです。よく言っておきましょう(笑)。
ふれあい型グループホーム
 痴呆ケア型のグループホームと違い、高齢者が自分の意思で元気なうちから共に暮らす少人数の共生型住まい。グループリビング、コーポラティブハウスなど呼称は様々だが、さわやか福祉財団ではふれあい型グループホームと総称して、新しい時代の一つの住まい方として推進している。
自立した暮らしが家族とも良好な関係をつくる
 
堀田  お二方と皆さんとのご関係はいかがですか?
 
西條  私は秋山さんと違って自分自身が高齢者の一人として入居していますし、基本はすべて平等対等です。皆さん自分で決めてこられるほどの方ですから、人にあれこれ言われるのが嫌い。私もそうです。多少もめ事が起こっているような時でも介入はしませんし、必要があれば聞きますという感じですね。
 
堀田  もともと物事を自分で判断できる、かなり自立意識の高い方たちなんですね。だからこそ周囲との共生もしっかりと考えられる。
 
西條  かえって私のほうが細くてひょろひょろしているので心配されちゃったり(笑)。ただ、私みたいな頼りない止まり木なんだけれど、誰かいる、というのはやっぱり大事なんだろうなと思います。
 
堀田  秋山さんは、開設者でありスタッフとしてご一緒に暮らされているわけですが。
 
秋山  最初はとにかく皆さんが私のことを立ててくださるんですよ。常に「秋山さんがいいように」とおっしゃられて。でもそれも時間の中でだんだん自然な付き合いになっていきました。
 
堀田  プライベートな部分とは分けていらっしゃる?
 
秋山  いやあ、もう全部さらけ出してますよ(笑)。最初はちょっと戸惑いもありましたけれど、うちではほとんどの方が遺言はもちろん献体やその後の処理、「最後はここまでお手数かけます」とまで書かれるほど自立されている。そこまで腹をくくられたらこっちも全部オープンです。でもこれが慣れると本当に楽でして、すごく新しい発見ですね。
 
西條  発見といいますとね、グループホームで自立して暮らすことで、自分の家族との関係も前より良くなるんですよ。
 
堀田  ほおお、そうなんですか?
 
西條  一緒に住んでいるとかえって反発したりしますでしょう。同居住まいの高齢者の方からいただくお電話などでも、それは嘆かわしい内容なんです。初めは自分たちの自立と共生ということが目的でしたけれど、家族も泊まりに来られますし、昔より会話が増えたりして、家族との共生も上手にできるようになって、いいなあと。
 
秋山  家族との絆が強くなれば、それがまたお年寄りの皆さんの元気の素になりますしね。私もご家族とのつながりは大事にしていますし、お子さんやお孫さんたちとメールを送り合って悩み相談をしたりとか。
 
堀田  ご家族の方の悩み相談をされているんですか?
 
秋山  個人的な経験に基づいたアドバイス程度ですけれど。でもそんなつながりが別にできればさらにこちらに足も向けてくれます。中には家族同士同じ日に泊まられて、そこにまた新しい人間関係ができたりですとか。
 
堀田  ご近所の方々ともうまくお付き合いされて?
 
秋山  ええ、そこが施設と違うところでしょうね。ご自分で自由に名刺を作られて、活発に外の方と交流されますし、それが自然に全体のお付き合いに広がっていくんですね。たとえば78歳の方なんですが、ご自分でコーラスのグループをつくられて地域の方と一緒に月2回ほどやっています。参加されるご婦人方のご主人に区長さんだったり市長さんだとかがいて、何だ知りませんでしたとご挨拶に来てくれたり。
 
堀田  本当に無理なく自然なふれあいが広がっているんですね。
 
秋山  もともと地域のつながりが強いのでそこに溶け込んでいくという感じですね。農家が多くて私たちも自給していますから、お互いに採れたものを持っていったり。特に声を掛けることもないんですよ。朝起きると塀のこちら側に大根が山に放り上げられてる(笑)。
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バリアフリー高齢者グループリビング
「COCO湘南台」(神奈川県藤沢市)
 1996年から研究会を毎月開催し、自らの手で高齢者同士での心豊かな新しい住まいづくりを目指して建設。ユニークなのは、運営主体がこの研究会をもとに立ち上がったNPO法人COCO湘南という市民団体であること。
 共用部分は36畳程度のリビング・食堂・台所、大小浴室、アトリエなど。居室はすべて個室で10室、約15畳。ゲストルームに家族や友人の宿泊も可能で、犬や猫なども飼うことができる。入居金は370万〜400万円程度、月額利用料は13万6000円(朝食を除く2食の食費と家賃、共益費等を含む)。敷地面積913m2、延べ床面積484.20m2の2階建て。開設は1999年4月。
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堀田  西條さんのところは逆に住宅地ですし、ご近所との関係はいかがですか?
 
西條  建てている時のことなんですが、見に行くと、これ何かしら?老人ホーム?とか話しているんですよ。
 
堀田  自分の家の近くに施設とかが建つと聞くとだいたいいい顔はされない。
 
西條  皆さん、結構気にされていたんですね。それならと町内会長さんに相談して、ビラを町内全部に配ってオープン前に見学日をつくったんです。そうしたら340人も来られて。
 
堀田  それはものすごい数ですね。
 
西條  日曜日ですから、家族の方が多かったですね。こうして最初に全部見せたのがよかったんでしょうね。自然なお付き合いができていますし、後は一番年上の明治生まれの方が社交家で、通る人通る人みんな友達になっちゃう。案外一番ご近所を知らないのが私かもしれません(笑)。








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