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ありがとうを循環する地域通貨 6
おうみ
 地域通貨「おうみ」は滋賀県草津市に開設された草津コミュニティー支援センターの運営対策として1999年4月に始まりました。このセンターは、行政が設置し、市民が運営する「公設市民営」というスタイルで、市民が相互に交流しながらセンターの運営・管理を無理なく行う仕組みづくりを進めていくために導入されたのがおうみなのです。
 初めは、センターの運営会議に出席したり、清掃や受付業務などのお手伝いをすると、センター利用券としておうみがもらえ、このおうみは、施設の利用や事務局が実施する講座の受講券として使用することができるというものでした。
 2000年10月にはおうみを発行する主体をセンター事務局から「地域通貨おうみ委員会」として団体を独立させ、紙券タイプの地域通貨としてリニューアルされました。会員は約120人(2001年5月現在)で、草津市及び周辺地域に広がっています。
 おうみを利用したい人は、事務局で自分が「できること・提供できるモノ」「してほしいこと・譲ってほしいモノ」を登録します。そして、草津地域の市民活動団体への助成基金である「おうみファンド」に寄付をすることによって、100円の寄付について1おうみの割合で紙券が入手できます。会員のサービス情報が掲載されたリストを参考に、おうみの交換に参加することができます。この他にも、定期的に開かれるフリーマーケットで、自分で作ったモノや自分のできるサービスとおうみを交換することができます。また、事務局の運営にかかわったお礼としておうみを受け取ることもあります。
 おうみは名刺サイズの紙券(次頁写真)で、裏面には日付、氏名、サービスやモノの内容を記入し、提供してくれた相手に渡します。受け取ったおうみは、別の人へのお礼として使うことができ、サービスなどのやりとりが行われながらおうみが会員の手元を循環していくという仕組みです。
 おうみが循環していくために、受け取ったおうみはできるだけ貯め込まず、どんどん使っていくことが大切です。お互いが顔見知りになるきっかけをつくり、おうみを気軽に使えるようにするための工夫として、会員の交流スペース「おうみステーション・ひとの駅」を商店街の中に設置し、ここでまちづくりサロンやフリーマーケットを開いています。さらに、おうみによる地元タクシー会社や映画館での一部割引も始めました。
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 また、昨年12月からは、「おうみを使って地域づくりを進めたい」と申し入れのあった近隣地域の団体に対して一定量のおうみを貸し出し、地域の助け合いのために活用してもらえる制度を導入しています。今後もおうみが、草津地域内はもちろん、他の地域の事情にも柔軟に対応しながら、さらにユニークな取り組みとして広がっていくことが期待されます。
 (原稿協力/地域通貨おうみ委員会代表 内山 博史)
近隣助け合いのヒント
「助けて」と言えますか?
石井 利枝[3]
(さわやか福祉財団 地域助け合い普及事業リーダー)
近隣住民の暗黙のルールは「相互扶助」
 「助けて」と言えますか?のシリーズ第3回は、近隣住民の暗黙のルールが、実は「助けて」と言えるための基盤になっているというお話です。
 各地域での住民による助け合いをよく探ってみると、みんな結局、双方向の助け合いになっています。つまり、近隣住民の助け合いの基本は、「相互扶助」の関係にあるということです。たとえば、どんな双方向かというと、よくある一番身近な例でいえば…。
 旅行のおみやげや、もらいもののおすそわけ、自分の家で採れた草花や、手作りのおかずやお菓子など、物のやりとりは近隣の住民同士が最も多くやっていることの一つです。
 では、なぜ、近隣の住民同士は、いったり、きたり、助け・助けられの双方向になっているのでしょうか?やはり、身近な例の物のやりとりや、貸し借りで考えてみると、
 ●一方的に借りっぱなし、もらいっぱなしは精神的に負担。
 ●何か気になって仕方がない。
 ●借りができたような気がする。
 ●近隣の狭い社会なので、そのままだと何を言われるかわからないから、仕方なくお返しをする。
 ●いただいて、又は貸してもらって助かったし、うれしかったから、相手に喜んでもらえる形でお返しをしたい。
 ●とてもいいものだから、おいしいものだから、体にいいから、あの人に喜んでもらいたい。
など、近隣住民の場合、本人がそれを望む・望まない、そうせざるを得ないという場合や、やさしさや人それぞれの思いがあって、結局いったり・きたりの双方向になっているのです。誰かが一方的に何かをする(される)というのは、結局続かないし、迷惑がられるということになってしまうことがあるようです。ですから、近隣同士の助け合いを始める場合、相互扶助が暗黙のルールということになります。相互扶助の関係になっているからこそ、いざというとき、ちょっと困ったときに、「助けて」と言いやすくなっているのではないでしょうか。このように地域の住民同士の関係には、実は「助けて」と言えるための相互扶助が暗黙のルールとして基盤にあるということです。
 いったり、きたり、助け・助けられを保つということは、大変な部分もあるかもしれませんが、日頃から近隣で双方向の関係を保つことによって、助け合える広がりが出てきたり、いざというときになど、「ちょっと困っているの! 助けて」と声がかけやすくなるのです。
 さあ、いかがですか? いったり・きたりの助け・助けられを仕掛けてみませんか? まずは、ちょっと気になる人や、お近づきになりたい好感を持っている人などから始めてみてはいかがですか?
 ちなみに、さわやか福祉財団が推進している「地域通貨」は相互扶助そのものです。気軽に誰でも始められて、できるときにできることで、又はしてもらいたいときにしてもらいたいことで、助け・助けられが行われていくというものです。あなたも始めてみませんか? 助け上手さんも、助けられ上手さんになるチャンスです。








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