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今、心の教育を考える
生涯学習サークルで結ばれた学校と社会の融合教育
栃木県鹿沼市立北中学校
 「こういうことを続けていて、何がおもしろいんですか?」
 KLV(鹿沼ライブラリーボランティア。鹿沼市の全小中学校にあり、読み聞かせや紙芝居、本の補修、新刊本の受け入れなどを行っている生涯学習サークル)で、北小学校を担当する北原恭子さんに男子生徒が聞いた。最初、生涯学習サークルが中学生を受け入れるという話があったときに、自分たちの活動は細かい地味な作業が多く、中学生にはつまらないのではないかという不安を持ったという。案の定、冒頭のような質問から交流は始まった。しかし、実際にやってみて自分たちにもできると理解した後は、手早く作業をこなしてくれた。小学生への紙芝居も、とても楽しそうだったという。「中学生も十分にできると感心しました」と北原さんは笑って話してくれた。
 きっかけは3年前。同校の三添憲公校長によれば、当時、総合的な学習の時間を1、2年生に5時間程度試行的に実施してみようと校内で協議し、市教育委員会の生涯学習課に協力を依頼したことによるという。
 「総合的な学習の時間は、人とのコミュニケーション能力、交わり方を育成し、人としての生き方、あり方を学習していくことが大きな狙いでもあります。それなら、生涯学習そのものを学んでもらおうと」(三添校長)。この提案は生涯学習サークル側の活性化にもつながると全面的に協力が得られ、双方に成果をもたらした。現在はどの学年も1回は生涯学習を行っている。
 小笠原弘之先生は、昨年、2年生の担任として35時間の生涯学習に取り組んだ。K LVの他、茶道教室や生活改善クラブなど地域の13サークルの方々に学校に来てもらい、計画段階から生徒たちと活動内容を話し合ったという。活動の様子について、小笠原先生は、「今年2月の鹿沼市の消費生活展での発表を目標に数回の体験を重ねました。発表当日、子どもたちは、自分たちの体験をみんなに知ってほしいと目を生き生きと輝かせていました。不登校気味の生徒も体験学習には出て、発表までしたんです。“楽しかった、これからも続けたい”という意見が多く、やらされているとは感じなかったようです。成長する子どもたちの姿が目に見えました」と語る。
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親子連れを前に絵本の読み聞かせをする男子生徒
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鹿沼市の消費生活展で発表

 市町村教育委員会の中に学校教育課と生涯学習課はあるが、意外なようだが学校が直接、生涯学習課と協力して活動する事例は多くはないという。ここ最近、学校教育と社会教育の融合という「学社融合論」が普及してきたことで、各地で取り組みが行われてきている。昨年、社会教育主事として北中の「生涯学習」に協力した越田幸洋先生(現、鹿沼市立石川小学校教頭)はその効果について、「学習相談という形で、学校の求める地域の具体的な情報の提供、プログラムの作成ができるようになりました。学社融合は、先生方の仕事のスリム化にもつながり、そこから生まれる時間や心のゆとりが、子どもをさらにしっかりと見つめる目につながるんです」
 心の教育には多くの人とのかかわりが大切であろう。地域の受け皿は、多過ぎるということはない。学校は、積極的に地域に向かって働きかけてほしいものである。
 取材・文 有馬 正史








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