福岡県豊前市の「あおぞら豊前デイサービスセンター」は、この機能訓練体制加算をつけてリハビリに力を入れている新設のデイサービスセンターだ。昨年12月、福岡県の医療法人系列の株式会社シダーが介護保険のデイサービスを行う施設として開設した。センター長の田中早苗さんは理学療法士で、スタッフは他に作業療法士1人、看護婦2人、看護職員6人(うち2人は生活相談員を兼務)。この体制で1日平均20人の利用者のリハビリに個別対応している。

　大通りに面した総ガラス張りのセンターに入ると、まず目を引くのが赤や黄に塗られた筋力トレーニング用マシンや平行棒などの装置。利用者はここでスタッフに付き添われて立ち上がりや歩行の練習をしたり、ホットパックという器具を使って温熱療法を受けたりするのだが、そのメニューは一人ひとり違う。

　リハビリメニューを決めるのは田中さんの仕事だ。利用者の心身状態に合わせて必要なメニューを組み立て、利用者ごとにカードを作成、スタッフはカードの項目に従ってリハビリを進めていく。そして毎月1回、リハビリの効果を一人ひとり評価し、評価に基づいて翌月からのメニューを手直しする。画一的ではない「自分のメニュー」をこなしているという充足感があるからか、リハビリに励む利用者の表情は明るく、広いホールはにぎやかな雰囲気に包まれている。「でも、リハビリはしたくないという方もいます。そういう方は映画を観たり、カラオケで歌ったり、お好みに合わせて楽しんでもらっています」と田中さん。

　

　

　

　あおぞら豊前デイサービスセンターのもう一つの売りは、大画面スクリーンを備えたカラオケ・シアタールームだ。「寅さんシリーズ」や名画のビデオの中から観たいものを選んで観ることができ、完全防音なので気がねなくカラオケで声を張り上げることもできる。

　マンツーマンでお世話をする訪問介護と異なり、定員20〜30人という規模の介護を行うデイサービスは、確かにプログラムを最大公約数でくくらねばならず、サービスの内容が画一的になりがちだ。しかし、サービスを受ける高齢者の側は一人ひとり身体状況も違えば、生活習慣も嗜好も性格も違う。

　デイサービスを含めた介護報酬引き上げについては、今後介護保険の議論の大きな焦点となってくるだろう。しかしいずれにしても拠りどころとなるのは税金であり、市民が納める保険料。そうそう増やしてばかりでいいというものではない。

　厚生労働省老健局振興課の田村一課長補佐は、こうした現状と課題について、「措置時代との比較ではなく、介護保険という新しい仕組みの中で改めてデイサービスが利用者の自立支援のために果たすべき役割を明確にし、どういう運営基準ならそれがやれるのかを検証しつつ事業者の創意工夫を期待したい」と語る。

　まずは、利用者が「来てよかった」と明日への生活に張り合いが実感できるようなサービスの提供、一人ひとりに対応したサービスの提供が重要だということを念頭に置くことが大切だ。デイサービスをどう育てていけばいいのか？こんなところにも市民の知恵とアイデア、地域の支えが求められている。

　送迎バスで施設に行き、食事、入浴、レクリエーションなどというのが一般的なデイサービスだが、そのイメージをちょっと変える商業施設の中のデイサービスが東北で相次いでオープンした。

　一つは仙台市の居宅サービス事業者・株式会社ゆう・あいケアが運営する「フォルテデイサービス」で、宮城県大河原町の大規模ショッピングセンター「フォルテ」に昨年12月にオープンした。場所柄、店でスタッフとともに買い物をしたり、時にはセンター内にある映画館で映画鑑賞をしたりすることも可能。

　もう一つは青森県下田町の「イオン下田ショッピングセンター」に今年5月にオープンした「でてこいセンターふぉれすと」で、NPO法人自立支援センターフィフティが運営する。「家に閉じこもっていないで、出て来い」との思いを名前に込め、利用者とスタッフが100店舗も入る広い施設内を自由に散策することができる。

　創意工夫に富んだ様々なデイサービスの普及には介護保険だけでは当然限界がある。地域のNPO活動との連携可能な弾力的な運用など、広く選択肢を広げていきたいものだ。