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われら地域市民
会社の“隠れボランティア”を発掘する
小坂 順一さん
鹿島建設株式会社 土木企画部部長
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 現役サラリーマンのボランティアヘの参加は現在のところまだまだの状況だ。しかし、この状況を何とかしようと努力しているサラリーマンも数多くいる。今回ご紹介する小坂順一さん=上写真=もその一人。鹿島建設グループ有志のボランティア団体・鹿島ボランティアネットワーク(KVネット)、車いすとともに歩く会、勤労者ボランティアセンターを拠点とする勤ボラ会などでリーダーとして活躍中。勤労者とボランティア活動の橋渡し役として忙しい毎日である。
 小坂さんは鹿島建設グループの有志約80名が参加するKVネットの会長、定年まであと数年の現役サラリーマンだ。「会社とはつかず離れず、金はもらわないけど多少の配慮はしてもらう、社員がこんなのやろうよ、といったものをじゃあやろうかといった感じでね、仕事は一生懸命やるけど他に生きがいがなくて寂しいなという社員のためのボランティアで…」と笑う。活動のやり方もユニーク、すべてを社内メールでのやりとりによって組み立ててしまう。打ち合わせや会議などは一切ない。
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 鹿島建設は、従来から「企業としての社会貢献活動」は行っていたが、「自分はボランティアをやっている」とおおっぴらに言える雰囲気ではなかった。北海道・奥尻島の津波で被災した青苗地区に同社の有志が協力会社の支援を得て立派な集会所を建設し寄贈したことが社員に知られた頃から、「個人としてのボランティアを会社の仲間と一緒にやってみよう」という運動が賛同を得られるようになった。阪神・淡路大震災など災害のたびに有志が募金や現地での救援活動を行ってきたが、社員の強い要望がきっかけで、建設業界初の「有給のボランティア休暇制度」を設けるなど、会社としても社員の自発的なボランティア活動を支援する体制が整ってきた。KVネットはこうした背景のもと1995年頃に自然発生的に誕生した。
 社員をボランティアの世界へ誘い込む仕掛人を自認する小坂さん。その秘訣は「自分も楽しく、家族も楽しくやってください。他人のために自分の生活を犠牲にしてまでと思わないで。ずっとこの活動を続けようと思うと始められないから、やってみてつまらなかったらまた別のものを提供しますよ、酒飲み友達が増えますよ、といった誘い方です。そのうち自分の好きな分野が見つかって長続きすることがあります。また、社員は自分の会社で企画したイベントにはあまり集まらない。だから、よその会社のイベントへ参加してこい、と。他社へは浮き浮きして行きますよ。ボランティアを通じた他社との交流は非常に面白いし有益です」
 “ボランティアに毛の生えた程度のものが商売として成り立って、自分の給料くらいはもらえるようなものを作ることが将来の夢“という。ボランティアとビジネスの世界を自然体で楽しむ小坂さんらしい。
(取材・文/三上 彬)








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