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われら地域市民
仕事もボランティアも面白い
―若きサラリーマンの地域福祉活動―
日産自動車株式会社九州工場/NPO法人たすけ愛 京築事務局長
阿部 登志彦さん
阿部登志彦さん(右)と竹田幸生さん
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移動宅老所の風景
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「若い男の人がいればね〜」という声をボランティアで活躍している奥様方からよく聞く。若い男性のボランティアヘの関心度はまだまだ低い。しかし、今回紹介する阿部登志彦さんは、37歳の日産自動車九州工場に勤務する若いサラリーマンである。
 阿部さんは、行橋市(福岡県)で、お年寄りや障害を持つ人など、介護を必要とする方の在宅福祉サービスやお年寄りを対象にした巡回宅老所などの地域福祉サポート活動をしているNPO法人たすけ愛京築(けいちく)の事務局長として大活躍の毎日。企業人としてまた地域福祉の担い手としても奥様方の期待を集める阿部さんにお会いした。
「もともとは妻(阿部かおりさん、たすけ愛京築理事)が1996年に女性3人で始めたのですが、法人化移行に当たりだんだん忙しくなり人手が足りなくなりました。一番身近な私が引き込まれたのです。特に断る理由もないんでね―」、“きっかけ”は単純と笑う。「困ってるよ助けて、と頼まれると、自分にできることならと引き受けてしまうような性格なんです。地域のためにもなるし、自分のためにもなるんでね」
 それにしても、サラリーマン生活との二足のわらじ、時間のやりくりは大変なことだろう。まして、会社の勤務形態は、「早番(6時半〜15時)」と「遅番(16時5分〜24時35分)」の2交代制だ。「早番の時は会社から帰った午後3時以降、遅番の時は朝起きてから出勤する午後4時までの時間を使っています。NPOの理事会など夜中近くまで続くこともあり時間はいくらあっても足りない」。今一番欲しいものは時間だという。
 こんな苦労を苦労とも思わない二足のわらじの魅力は何なのだろう?
「会社で働く以外何もしていない時期があったのですが、そうして年を重ねていくだけだと、定年退職した時スパッと力が抜けちゃうんじゃないかと思ったんです。この活動を続けていくと面白いし、自分のためにもなる。行政の動き、市長の考えも見えてくるんです。“二股”を掛けているからこそそれぞれの良さが見えてきます」
 サラリーマンがボランティア活動をやろうとすると、忙しい、知識・経験が無いなど“できない理由”を数えがちだが、阿部さんのように、仕事以外の時間に新しい価値を見いだしたり、人間としての視野が広がるといった“できる理由”を探すことが大切だ。
「ボランティア活動資金支援制度」や「社会参加情報提供システム」をはじめとして社員のボランティア活動支援にも熱心な日産自動車、九州工場総務部総務課の竹田幸生課長代理は「阿部さんのような社員がいるということは会社の誇りです。地域に貢献する人材がどんどん出てくることを望んでいます」と阿部さんにエールを送った。
(取材・文/三上 彬)








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