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地域でのネットワークを生かそう
 
リサイクルで資金と人の輪づくり
 地域の特色を活かしながら、ネットワークを基盤に活動資金集めに成功している例をさらに紹介してみよう。
 ひと昔前、古紙回収が盛んだった頃、曜日を決めて業者の人に来てもらって一定の値で引き取ってもらっていた草の根のグループは多かったはず。でも最近はこちらから頼んで引き取ってもらうという状況が多く、資金を得るのは難しくなってきている。子ども会や団地の自治会など業者に来てもらっているところを数か所調べてみたが、規模や頻度の差こそあれ、だいたい月1回当たり1万円に満たない、というのが相場のよう。そんな中で1回数万円という金額の資源回収を成功させているのが前述の「たすけあい遠州」だ。
 
 静岡県はもともと製紙業の盛んなところ。環境のことを考えリサイクルを進めようとしていたころ、富士宮市の業者との出会いがあった。それが4年前。広告紙やカタログなどのツルツルの紙、また牛乳パックなど、新聞紙とは別の上質古紙を回収しエコマークトイレットペーパーやティッシュペーパーと交換している。メンバーたちで資源回収について勉強し、工場見学に出向き、学習会も2回開いた。そして関連先と交渉するなど徐々に多くの市民の協力と賛同を得、市も回収場所に駐車場を使わせてくれ、市役所の上質古紙もこの活動に乗せてくれるようになった。会員の乳業会社や印刷屋さんも不要になった上質紙を積極的に運んでくれている。さらに置き場所として空き工場を提供してくれる人が出てきたりで、このリサイクルが軌道に乗ったという。
 得た収益は交換品のエコマークのトイレットペーパーやティッシュを大量に買い、残りの収益は公開講演会の開催費用などに充てるという工夫をしている。
「一番うれしいのは、配食サービス先のご老人など「何もできない」という人に、“そんなことないですよ、リサイクルに協力して”と、配食した時に広告紙等を預かり、次の時に交換品のペーパーを渡せること」と、代表の稲葉ゆり子さんは語る。たとえ介護の世話を受けている人であっても誰もが参加できる“助け合い”がこんな工夫で実践されている。
 
自分たちのノウハウ、情報の提供
 とにかく活動に当たっては、さあ、やろう、という意気込みが何より必要のようだ。時々活動を紹介している「福祉サポートセンターさわやか愛知」(愛知県大府市)でも、日頃から築いてきたネットワークと、自分たちで資金をつくろうという強い意思が活動費捻出につながっている。
 
「キッチンさわやか」での昼食作り、それに不用品バザーに加えて、同団体では自前のヘルパー養成講座を行っているのが特徴。仲間うちのヘルパー2級の人はもちろん、社会福祉士や介護福祉士など各資格を持つ人が講師となって養成講座を開催する。1回60人、通信教育も実施しており、受講者は25人。中でも目を引くのは近くの大学から委託を受け、夏休み中に開催する養成講座で、参加者は70人にのぼる。さらに県からの依頼で講師派遣も始めており7か月で11回になるという。
 そしてこれらの活動は資金集め以上の効果ももたらしている。まず、講義に多くの人が参加することから地域の中での人的交流がさらに広がり、学生の受講生がそのままボランティアに加わったり、男性の参加者がちらしを自分で作って各戸配布までやってくれたりするというケースも出てきた。また昨年は、香典の寄付やリフト付きの自動車の寄付まであったという。せっかく改造したものなので必要としている人に使ってもらいたいという家族の申し出だった。
「専門事業部(介護保険)の活動もしていますが扶助事業部の助け合いが1か月で3800時間という実績のお陰です」とは理事長の川上里美さん。皆、同団体のサービス利用者で、その感謝の気持ちが回り回って川上さんたちの活動を支えている。
出版、イベント等の企画を工夫しよう
 この他にも資金づくりとしてよく知られているものに、出版物の発行やチャリティーコンサートなどのイベント開催がある。
「さわやか愛知」のように自前の講座開設までは無理でも、地域で活動している団体にはその地域地域の貴重な情報やノウハウが詰まっているはず。会報などは手作りのものを支援者に送付することが多いだろうが、たとえば、続けてきた勉強会の成果や主催したシンポジウムの報告書などで一般の人々に読んでもらいたい内容があれば冊子としてまとめて販売する手もある。
 
「旧ユーゴの子どもたちを支援する会」(神奈川県川崎市)では、普段の集会とは別に、広く呼びかけて催したシンポジウムの報告書をJVC日本国際ボランティアセンターと作成した。原価が500円かかったので200円を寄付にしてもらうことにし、定価700円として、送料は購入者負担で800部作成。以前活動を記事にしてくれた新聞社の支局に交渉して地方版に掲載してもらった。このとき差額の200円は活動資金になるということを明確にしたせいか、郵便振替で多めに振り込んでくれる人もいたという。
 
年齢や障害の有無にかかわらず支援の必要な人に支援をするグループ「パーソナル・アシスタンスとも」(千葉県浦安市)」では“NPO法人化記念”としてロックバンドのライブを主催した。大人と子どもの、また障害のある人と介助者とのペアチケットを用意し、また一般の人が買いやすいように市内のあちこちで前売り券を販売、総力を挙げたのが功を奏した。ライブの宣伝をしながら同時にボランティアも募集した。ちなみに大人前売り1800円(当日2000円)、小中学生前売り900円(同1000円)、ペアチケット前売り2500円(同2800円)。
 
 ただし、こうした出版やイベントで注意しなければいけないのは見通しを誤ると大きな赤字を生み出す結果にもなることだ。
「旧ユーゴの子どもたちを支援する会」が作成した報告書800部・700円という数字も、担当者が何部売れるかなどを制作費用と併せて考え抜いたもの。印刷物は作り方や部数によって単価が大きく変わる。事前にしっかりと複数先から見積もりを取るのは当然のことで、こんなはずではなかったと赤字と大量在庫に悩むことのないようにしたい。
 チャリティーイベントも同じ。定員のある催しなら完売することが大前提だ。まずは会員のネットワークなどをフル活用してチャリティーに出演してくれそうな人探し(つて探し)、目玉になる企画を考える。そうして趣旨に賛同してもらえる人・組織等から寄付金を集める。並行してイベントチケットの完売を目指す。前述の「パーソナル・アシスタンスとも」の西田良枝さんは、まず何よりの成功の鍵は「何としても赤字をかぶらない覚悟」だと意気込みの大切さを指摘する。
 フリーマーケットなどでも大規模なものに参加するときは、規模や出店数、入場者などがふさわしいかどうかをしっかりと検討しよう。1店(区画)いくらと参加費(場所代)が取られ、持参した品物も来場者に合わずかえって赤字になったなどという笑えない話もあるから気を付けたい。
とにかく工夫とアイデア次第基礎は日頃のネットワーク
 ちなみに我がさわやか福祉財団でもお金づくりは大きな問題だ。特に我々の事業はこれまで紹介したような現場での活動ではなく、それらを支援・推進する世の中の仕組みづくりという、今非常に強く求められているものだけれどもいわば“目に見えない事業”。会費といっても活動に参加した充実感があるわけでもないから爆発的に会員を増やすことも本来難しいのだが、そんな中で、毎年全国2500人、300社を超える人や企業・団体等がさわやかパートナーとして我々の理念に共鳴してくれ支えてくれているのは本当にありがたい限りである。
 そして、我が財団でそうした資金集めを担っているのが財務グループの面々。実は皆さんボランティアで頼もしい助っ人といえる。それまでの会社人生や現在の仕事を通じた経験、ネットワークなどもフルに活用しながら、お金集めを担当してくれている。
 たとえば地域で活動している団体も、こうしたサラリーマンOB・OGなどのボランティアを募って募金活動、賛助金集めを行ってもらうのも一つの方法だ。長年培ってきたノウハウや人脈をぜひ地域の中で生かしてもらおう。
 最後に会費とともに活動資金源の大きな基礎ともなる各種補助金・助成金について簡単に触れておこう。
 今回の「手軽な資金づくり」では詳しく取り上げないが、国や自治体からのものと、各種の助成財団からのものなどがある。当該事業への支援やあるいはリフトカーやパソコン寄贈など各種物品の支援も増えてきた。各地域のボランティアセンターに助成金を問い合わせると助成金ガイドが入手できる。「助成財団センター」のホームページ(http://www.jfc.or.jp/)などもチェックしながらこまめに情報を集めておきたい。特に地方自治体絡みのものは、情報を逃がさないためにも日頃から窓口の人と情報交換をし、いい人間関係を保つ努力も欲しいところ。
 
 今年2月に東京で、東京ボランティア・市民活動センターが主催した「めっせ・TOKYO2001」で、大盛況だった分科会の一つ「寄付金獲得大作戦!」を担当した梅本康弘さんも、「結局、お金については、活動内容がしっかりしているかどうか、それが基本中の基本。資金獲得のために確かに多少のテクニックはあるだろうし、知っておかなければならないこともあるが、基本は活動内容」と明言する。やはり日頃からの積み重ねが必要ということだ。
 
 今回ここで紹介した団体の人たちに話を聞くと、一様に皆さん明るく元気な声が印象的だった。「足りないことを嘆いていたって始まらないじゃない」―、まさにそのとおり。
 今回のテーマ「お金づくり」は決して“儲け話”のススメではない。紹介してきたように、ボランティア活動でのお金づくりはその地域での自分たちの活動に対する信頼感の指標ともなる。まさに組織づくり、人づくりにつながるものなのだ。
 ここで紹介した事例はほんの一部で、まだまだ皆さんの周りには数多くのアイデア・工夫があるだろう。時間やその他の事情でなかなか活動には参加できなくて、という人も、ぜひあなたのアイデアやネットワークを地域に提供してみてはどうだろう。「さぁ、言おう」でもユニークな事例をお待ちしてます!
その他
 
企業からの支援をどう得るか?
 財政難は今やどこも抱える問題で、企業もリストラに走るなど資金的余裕はほとんどない。従ってやみくもに手当たり次第会社に連絡をしてみても、残念ながらなかなか相手にしてもらえないはずだ。下手な鉄砲も…という諺はあるが、人的資源に限られているボランティア団体ではそう無駄玉ばかり打っているわけにはいかない。
 会社の規模は選ぶ際の一つのポイントだ。全国規模の大企業なら個別に支援を依頼するのは不可能でも、独自の社会貢献賞などを制定し、応募を呼びかけるところも増えている。活動内容や実績をもとにするものから各種の体験談、あるいは提言募集など、だめもとであっても団体としてあるいはメンバー同士でそうした募集にこまめにチャレンジしてみるのもいいだろう。
 また個別支援先を望むのなら、かえって規模の小さい地場企業、地域の中小企業のほうが、賛同さえ得られればトップの決断一つなので時間が早い。企業からの提供は、寄付やマッチングギフト、広告協賛などを含む金銭のほかにも、製品、施設、人材と様々ある。各種情報ガイドなどの書籍、新聞、テレビ、インターネットなども日頃からチェックしておこう。
 とにかく“人は人に与える”ということを忘れずに、まずは手持ちの人的資源をよく掘り起こしてみることだ。そしてもし何らかの支援が得られれば礼状はもとより、折に触れきちんとした活動報告をし、節度のある交流を続けて担当者と顔なじみになろう。
 
宣伝方法をひと工夫
 バザーやチャリティーなどのイベントをどう周知していくかも重要なポイントだ。メンバーによる声掛け、口コミ、人的ネットワークを活用することは当然。また福祉施設等の掲示板や市や町の広報、また折り込みフリーペーパーなどもできる限り活用する。タウン誌など多少の掲載料のかかる場合でも、営利目的でなければ割引サービスがある場合も多い。費用対効果を考えながら検討してみるのも手だ。
 もちろん一番効果的なのは新聞への掲載。最近では、各新聞社がボランティア情報の欄をはじめ、情報提供ホットラインを設けているので、ふさわしい部署に連絡を取り、日にちに余裕を持って原稿を送ってみよう(ホットラインなどのTEL/FAX番号は新聞紙面に掲載されていることが多い)。
 この時、新聞社の記者名を日頃から気を付けてひかえておくのも手だ(最近は署名記事が多くなっているので、関連する内容の記事を書いた記者の名をひかえておく)。「○○新聞社様」だけではたらい回しにされたり、関係ない部署でゴミと化してしまう可能性が高いからだ。








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