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今、心の教育を考える
「総合的な学習の時間」が学校と地域の施設を結びつけた
鹿児島市立鴨池中学校
 
 鴨池中学校の正門横の敷地に、鹿児島市心身障害者総合福祉センターゆうあい館(身体障害者福祉センターB型)ができて事業を開始したのは1988年1月のことだった。その後12年間、学校とゆうあい館との交流はなかったが、13年目の2000年度、鴨池中学校は、チャレンジタイムとして、「総合的な学習の時間」に取り組むことになった。
 第1学年が2学期から取り組み、10コースを生徒たちが選択する。その一つの福祉体験学習コースについてゆうあい館に協力をお願いすることになった。
 その時の様子を、担当の神崎將照先生にうかがった。「これまでは、身近にありながら、どういうところかまったく知りませんでした。ゆうあい館に協力をお願いしたところ、すぐに承諾してくれました。このコースには17人が応募してくれたのですが、障害を持った人たちに生徒たちがなじめるだろうか、一緒に活動できるだろうかという不安が先に立ちました」と言う。
 一方、ゆうあい館の畠中修二主査は、「センターの前は、鴨池中の生徒たちの通学路ですが、学校との関係は特にありませんでした。学校が声をかけてくれるのを待っていました。学校から協力依頼があったとき、生徒たちは身近に障害者たちを知らないので、一抹の不安はありましたが、障害者たちも人生の経験者なので、受け入れをお願いしました」と話してくれた。
 活動は、ゆうあい館の第1作業所、第2作業所、清掃グループに対応して、約6人ずつ3班に分かれて、交代で3か所を体験することになった。
 第1、第2作業所では割り箸を袋に入れる仕事を、清掃は館内の清掃を手伝うことになった。割り箸の袋入れは、障害者の生活費の一部になるということで生徒たちも真剣になったようだ。生徒たちの体験レポートを紹介する。「はし一つにも、こんなに人の思いがあると思うと、すごく、はし1本でも、大事だと思いました」「ふつうに出てくるはしが、こんなふうに、はしをふくろに入れる人がいるとわかって、はしのありがたみがわかった」。また、作業しながらの会話にも心を打たれたようだ。
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ゆうあい館の畠中主査(写真下右端)から体験学習事前研修を受ける

 「作業をしているとき、近くのおばあちゃんがたくさんはなしかけてくれて、そのおかげで私もいろいろはなしができた。楽しかったし、うれしかったし、感謝もしたいなぁと思った」、そして、次回は自分から話しかけたいと書いている。
 神崎先生は、障害者の方から「先生も一緒にやりなさいよ」と声をかけられ、作業を手伝ったそうだ。そうしているうちに、生徒たちの表情がやさしくなったことに気付いたという。単純なことでも一生懸命するようになったり、障害者の作業をする姿に感動している生徒の姿があったとも言う。
 このチャレンジタイムを終えて、館内のバザーや文化祭、遠足など、もっと様々な活動に長期にかかわりが持てたら良かったと生徒たちの成長に確かな手応えを感じたようだ。
 身近にありながら、遠かった地域の施設、そして、地域の人との交流。「総合的な学習の時間」は、学校が地域に参加するきっかけを提供してくれている。
 
取材・文 有馬 正史








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