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われら地域市民
難病と闘う子どもを支える家族のために
ペアレンツハウスで総合支援
アメリカンファミリー生命保険会社
日本初の総合支援センターを目指す
 JR亀戸駅(東京都江東区)で電車を降りた。アメリカンファミリー生命保険会社が日本社創業25周年事業として本年2月にオープンした「AFLACペアレンツハウス」=写真=を見学するためだ。案内していただいたのは、同社広報部社会公共活動推進グループ課長の薬師神(やくしじん)葉子さん(下写真)。
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 「駅から歩いて4分、全国各地から初めて訪れるご家族にとって大変わかりやすいところにあります。また都内にある多くの専門病院が30分以内の場所にあるので、病院との往復にも非常に便利ですよ」との説明を聞きながら、明るい色のタイルと白いフレームの窓が美しい8階建てのビルに着いた。
 小児がんをはじめとする重い病気と闘っている子どもたちは、全国におよそ10万9000人いるという。医療の進歩で多くの子どもたちは治るようになったが、その半面、平均入院日数は266日と長期にわたる厳しい治療に耐えているのが現状だ。一方、小児がんなどの高度先端医療を行う専門病院は首都圏と都市部に集中しているため、地方で患者を抱える家族は自宅と都心の二重生活をしなければならず、宿泊費や交通費など多くの経済的負担と肉体的負担を強いられている。こうした負担を少しでも軽くするために、病院の近くに我が家のような場所をつくってあげようと「NPOファミリーハウス」をはじめ、いくつかの宿泊施設ができているが、その数はまだまだ足りず、より多くの施設の建設が望まれている。「AFLACペアレンツハウス」はこうした要望に応え、また「財団法人がんの子供を守る会」が理想とする精神的ケアも行うことを目指した日本で初めての総合支援センターとして、国の補助金を受けて完成した。
親の元気な姿が大きな心の拠り所
 館内にはNPOファミリーハウスから3人の女性がハウスマネージャーとして交代で働いている。その中の一人、岩谷素子さん(下写真)に事務所で話を伺った。度々の電話応対で忙しい中でもにこやかに答えてくれるのはさすがだ。
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 「2月のオープン以来、平均すると1日10家族ほどが泊まっておられます。その方々の東京での生活が、ご自宅のように安心してお過ごしいただけるようお迎えすることがまず第一。部屋の使い方など事務的なことをやりながら、ご家族がほっとできる場所にしたいと思っています」。アットホームな雰囲気づくりを心がけているという。「入院中のお子さんが外泊許可の出た日、お父さんやご兄弟たちがここへ来られ家族全員で泊まっていかれたことがありました。日頃できない家族の交流がここで行われ、うれしそうな皆さんの様子に私も感動しました」。仕事から得る喜びを語る岩谷さんの素晴らしい笑顔が輝いていた。
 「重い病気の子どもを持つご家族だからといって、特別な気持ちを持たないようにしています。普通に接してあげたい、変な同情や悲壮感を押し付けないようにしています。親が元気でいることが、子どもにも良い影響を与えられることですからね」豊かな知識と経験を感じた。
 「がん保険で発展させていただいた会社です。社会にご恩返しをする時もそれに関連した事でお役に立つのが一番良いと考えました。今後は施設の運営を通じていろいろなノウハウを蓄えながら、社会へ貢献していこうと思います」と薬師神さん。アメリカの有名なハンバーガー会社は、全世界に200もの施設を建設したという。同社も今回の建設をきっかけに、ペアレンツハウスのようなシステムが日本全国に広がっていくことを期待している。企業が地域に貢献できる形はさまざまにある。AFLACが播いた新しい種がその願いどおり、一日も早く全国に広がっていってほしい。
(取材・文/三上 彬)
「AFLACペアレンツハウス」の概要
(財団法人がんの子供を守る会が、厚生労働省の「医療施設等施設設備費国庫補助金」とアメリカンファミリー生命保険会社の寄付金により建設)
[1]場所 東京都江東区亀戸6丁目24番4(JR亀戸駅から徒歩4分)
[2]利用料金 宿泊料金1名につき1泊1000円(別途クリーニング代は実費徴収)
[3]申し込み 宿泊申し込み 03(3638)6512
[4]受付時間 10:00〜16:00(月曜〜金曜)
 
●建物概要 敷地面積 273.81m2(82.82坪)
  延床面積 1029.44m2(311.41坪)地上8階建て
 
1階
[ウエルカムエントランス]/小児がんの治療や闘病に関する書籍、海外の参考文献などを備えた図書・情報コーナーなど。専門のソーシャルワーカーが常時事務室におり、いつでも相談に応じる。
 
2階
[支援センターの役割を持つフロア]/交流や学習など多目的に利用できるセミナールーム、医療・生活相談などに対応できるプライバシーの保たれた相談室など。
 
3階
[家庭的なしつらえを持つ、集いの空間]/いつでも自由に利用できる共同キッチン、ダイニングなど。プレイコーナーを見ながら調理ができる。
ダイニング・プレイルーム
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家のようなくつろぎと医者や看護婦なども集う交流の場として、また各種相談・支援や情報収集・発信の場、さらには専門家などによる研究場所の提供など、多角的な機能を備えた総合的な支援施設として建設された
 
4階〜7階
[宿泊フロア]/洋室17室・和室3室(車いす用個室1室を含む)の全20室。バス、冷蔵庫、テレビ完備、和室にはミニキッチンも。各部屋は四季の花をイメージして、カラーコーディネート。
宿泊室
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(4・5F平面図)
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8階
[ユーティリティフロア]/洗濯コーナーなど。共同の洗濯機や衣類乾燥機あり。
(同パンフレットから)








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