ずっとこの地域に住み続けたい!
神戸市東灘区の山の手にある鴨子ケ原地区。ここからは港町神戸の景色を見下ろすことができ、住んでみたいと一度は憧れるような街である。地域通貨「かもん」には、この地域に住む人たちが、高齢になっても住み慣れたこの地で暮らしたいという願いが込められている。
1999年 |
11月 |
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鴨子ケ原地区の住民アンケート、意識調査を実施 |
2000年 |
4月 |
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鳴子ケ原地区の住民交流会を開催 |
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7月 |
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地域通貨に関する世話人会を開催 |
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8月 |
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地域通貨の名称「かもん」と決定 |
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10月 |
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正式な運用を開始 |
「かもん」への取り組みのきっかけは、鴨子ケ原地区に新しく自治会館がオープンすることになったこと。運営を検討していく中で、自治会役員間の連絡調整を円滑に行う方法についてCS神戸に相談が持ちかけられた。
この街での生活は、買い物に出かけるにも坂を下って行かなければならず、特に高齢者にとっては不便な街であることも事実。全国の高齢化の波は、世帯数約1500のこの地区にも例外なく及んでいる。また、この地域にはこれまで自治会組織も少なく、隣近所のつながりも希薄だった。そこでまず、CS神戸が中心となって「かたむき隊」と称する調査隊を結成・地域の住民100名にアンケートを実施し、地域の課題、地域づくりのために自分ができることなどの調査を行った。その結果、この土地に住み続けたいと願う人は回答者の90%、地域での助け合いを必要と感じていると答えた人は50%という回答があり、その効果的な手法として地域通貨の導入が検討され、2000年10月にスタートした。
助けてもらうことに慣れよう
「かもん」という名称は、鴨子ケ原の「かも」と“come on my house“(カモン マイ ハウス=家においでよ) からもじって付けられたもの。会員は現在約20名。その仕組みは「らく」と同様である。
「かもん」の普及に情熱を燃やす世話人の方々(自治会館前にて)。
「震災当時は、もともと近所付き合いが少ないこの地域でも住民の助け合いがあったが、生活が落ち着いて来てまた以前の関係に戻ってしまった」と語るのは世話人の堀越啓子さんと川上稔子さん。神戸で自治会がない地域は、この地区だけに限らない。そんな地域だからこそ、地域通貨による新しい関係づくりが展開できそうであり、「そうなることを期待しています」と同じく世話人の岩井江さんの言葉にも納得。「助けてあげたいと思う人は多くても、助けてほしいという人が少ない。他人にプライバシーに立ち入られることにもまだ抵抗があって…」と、地域の人が「助けてもらうことに慣れる」ことの必要性を堀越さんや川上さんは強調する。住民同士が「助けられ上手」になれば、川上さんたちの思いもきっと叶うはずだ。
地球づくりの核ができた
現在「かもん」は、中心メンバーである世話人8名に、CS神戸理事長の中村順子さんがアドバイザーとして加わり、流通のための仕掛けづくりを行っている。まずはお互いが顔見知りになるため、お花見やパーティーなどを企画して参加を呼びかけている。最近では会報「かもんずニュース」も作成し、会員紹介を行ったりイベント開催のお知らせを掲載して配布している。さらに、周囲に「かもん」で助けてあげられそうな人を見つけたら、お試し「かもん」をプレゼントして利用してもらい、PRを図っているとか。
「隣近所の関係が少なかった地域で、地域通貨を始めるメンバーが揃ったということは本当にすごいこと」と語るのはCS神戸の中村さん。世話人を務める堀越さん、川上さん、岩井さんの3人も、「かもん」がきっかけで知り合いになり、今では本当に気心の知れた関係だとか。「かもん」がスタートして半年余り。地域通貨から始まった新しい輪が広がっていくことを期待したい。
概要 |
名称 |
「らく」 |
「かもん」 |
開始時期 |
2000年10月 |
2000年10月 |
利用地域 |
神戸市東灘区全域 |
神戸市東灘区鴨子ケ原地区 |
年会費 |
1000円 |
2400円(学生1200円) |
会員数 |
約20名 |
約20名 |
価値の目安 |
1らく=30分
*ただし各自自由に設定可能 |
1かもん=30分
*ただし各自自由に設定可能 |
受け取り枚数 |
年間20枚 |
年間24枚 |
交換の方法
(同様) |
会員は「してほしいこと」「できること」を登録したリストを受け取り、サービスなどを交換する際に地域通貨を支払う。サービスを提供した人は、受け取った地域通貨の裏面に日付・サービスの内容を記入し、自分がサービスを依頼する際に支払う(利用する)ことができる。サービスのやりとりは、原則として個人間相互で行い、「できる人」から「してほしい人」に直接連絡を取る。 |