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有償への理解が乏しく、課題は山積みこれからが本当の意味での正念場
 それから1年。現在、活動会員は20名、月の平均活動時間数は65時間となった。その中身も、一人暮らしの高齢者の身の回りの世話や障害者の通勤介助など定期的な依頼も増え、有償化によって、依頼者が多少依頼しやすくなったこと、また活動がしやすくなったという、一定の成果は上がりつつあるようだ。だがそれによって、今、会は新たな課題にぶつかっていると福多さんはいう。
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リューマチで手足が不自由な人の仕事帰りの送迎
 「利用料金をいただくことで、依頼者との人間関係は無償のボランティアとしてふれあってきた頃よりも、何だか遠くになってしまったように感じるときがある。たとえば先日、依頼者の方と一緒に40キロ離れた親戚の家まで行って、書類にハンコをもらい、帰りに買い物をしてくるという活動をしたんですが、これを会の基本料金で計算すると5550円(交通費含む)になるんです。以前は同じことをしても、お金はもらわなかった。けれども温かな心が通い合い、とても優しい笑顔をいただいた。それが私たちにとっては何よりの喜びで、心はとても充実していた。思わず、スキップをして家に帰りたくなるようなね。でも今回は、お金と領収書のやり取りははっきりと形として残りましたが、充実感は逆に消えてしまったような…。果たして、これが私たちの望んでいたことなのか。何かが違うようにも思うんです」
 特にこの地ではこうした有償のサービスがなかっただけに、周囲の完全な理解を得るのはまだまだ難しいようだ。しかし、これからの時代、「行政のサービスだけではなく、地域住民が共に助け合う仕組みをつくらなければ、心豊かに暮らせる社会は築けない」というのは社会の共通認識になりつつある。たとえ有償サービスであっても、労働の対価ではない実費謝礼程度での活動は、当然根底に温かい助け合いの気持ちがあってこそだ。そんなメッセージがしっかり伝わっていけば、次第に気軽に受け入れてもらえるようにもなるはずだ。
 
石川県七尾市に本拠地を置く「オリーブの会」は、高齢者・障害者・子ども等さまざまな人たちが、地域社会で安心して心豊かに暮らしていくことができる社会を目指し、市民という立場で地域社会による支え合い活動を行っているNPO法人。主な活動内容は家事援助、外出介助、役所等の手続き代行、送迎等の障害者・高齢者の自立支援、子守や保育園へのお迎え代行等の子育て支援など。会員になるには入会金1000円が必要。年会費は正会員1万円、活動会員2000円。サービスの利用料は1時間700円(交通費、保険別途)で、活動会員は活動費として1時間500円を受け取ることができる(200円は事務費)。相談は無科。(→連絡先は最終頁)
 
 「確かに、ここからが私たちの挑戦かもしれません。まだ会の認知度が低いのでPR活動にも力を入れ、利用者が無償と有償ボランティアを両方を理解して、どちらを利用するかを選択できるような状況を創り出していこうと考えています。そのためには、社協や民生委員等とのネットワーク強化も必要でしょう。とにかく、私たちだからこそできることにこだわりつつ、依頼者と活動会員の人間臭い部分をさわやかに演出していくためには、何をどう変えていけばいいのか。まだ手探りの状態ですが、更なる学びを続ける中で、その答えを見つけていきたいと思っています」
 活発な地域活動を展開している多くの既発団体も、自分たちの会のあり方や運営の仕方を、迷いながら悩みながら探り続け、一歩一歩ふれあいのネットワークの輪を広げてきた。こうした活動に「正しい歩み方」と決まったものなどないが、困ったときにはそうした多くの″先輩″団体から情報やアドバイスなどを得られるよう、ネットワークづくりも役に立つ。自分たちの地域の実情や特性に合った活動を皆で考えながら、北陸の地にも新しい助け合いの芽が大きく育つことを期待したい。
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視覚障害のある方の携帯電話申し込みの手伝い








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