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今、心の教育を考える
ネイチャー・サイエンスキャンプで自然を愛し、人を愛する心を育てる
岐阜県大垣
 「今日はハイキングがありました。最初の登りの時、リーダーが「大丈夫?えらくない?」など聞かれて本当はけっこうえらかったんだけど、みんなえらいから弱音をはいちゃ、みんなに迷惑をかけちゃうと思って「うん、大丈夫!全然平気だよ」とかみんなのことも考えられたのでよかったです」(小学校5年女子の絵日記より一部抜粋)
 別々の小中学校から集まった子どもたちが、キャンプ半ばには里心と決別し、自然の中の活動に新鮮に驚き、熱中し、新しい仲間と寝食を共にしながら、友情を深めて、最後には別れを惜しみながら下山していく。これは、岐阜県大垣市の社団法人大垣青年会議所(以下大垣JC)が夏休みに約1週間行っているネイチャー・サイエンスキャンプ(以下キャンプ)の例年の光景である。参加者は、教育委員会、学校の協力を得て、毎年40名の小中学生(延べ240名)が参加している。
 プログラムは、自然体験ハイキング、環境学習(リサイクル、油の再利用)、未来学習(天体観測、宇宙について)、体験学習(ビオトープ、チャレンジ丸太渡り、草木染め)など。ほとんどのプログラムには大学教授はじめ、一流の学識経験者の講師陣が参加し、子どもたちを釘付けにしている。また、昨年は、子ども会議(家族を考える)で、家族の大切さを改めて見直し、知らされていなかった両親からの突然の手紙にとまどい、涙しながら、親の愛情を再確認するといった場面もあった。
 このキャンプを支えているのは講師陣だけではない。幅広い年齢層の様々な人々が入り交じって、ユニークなコミュニティーを形成し、豊かな子育てが行われているのである。JC(社会人)はもちろんのこと、キャンプの企画・運営から子どもたちの食事作りまで、児童数を大幅に上回る70名もの大学、短大、専門学校等の学生ボランティアが参加し、お兄さん、お姉さん役を担っている。さらに、講師陣は長老役であらゆる相談事に乗り、キャンプ地である春日村の青年団もカリキュラムヘのアドバイスや草木染めなどの指導にも参加して、子どもたちと交流しているのだ。
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決死の覚悟で丸太渡り
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にぎやかに草木染めに挑戦
 大垣JCは、昨年、NPO法人ネイチャー・サイエンスクラブを設立した。その思いを、クラブの理事・事務局長の山田康雄さんが話してくれた。「キャンプは、子どもたちに、自然を愛し、科学技術の有用性を学び、人を思いやる心の大切さを学んでもらおうと実施しているもので、全国の子どもたちにも伝えたいとNPOを設立しました。いろいろな人に支えていただき、この運動を全国に広めたいと思っています」
 キャンプを視察した大垣市教育委員会の子安一徳教育長にも話を聞いた。「子どもたちに欠けている自然体験学習を、様々なボランティアが支えて、行っていただけることに感謝しています。子どもたちには、自然の大切さや畏敬の念を持ってほしい。子どもたちに参加の呼びかけをしていきたいと思います」と話してくれた。
 今、キャンプ卒業生がスタッフとして参加し始めている。キャンプの種は、確実に広がり、子どもたちの心の中に育ってきている。
 
取材・文 有馬 正史








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