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今、心の教育を考える
地域に広がれ、心の灯
学校の枠を超えて広がる青少年ボランティア
取材・文 有馬 正史
 
 学校では、教育改革の一環として2002年度から「総合的な学習の時間」を含めてボランティア活動の導入が進み、子どもたちの心に活動のきっかけになる灯をつけてくれることになる。しかし、多様な教育活動に取り組む学校の力だけでその灯を点し続けることは難しく、自治体や地域に住む大人たぢなどの多彩な支援が求められている。今回は青少年のボランティア活動を支援している地域を取材し、全国の様子についても調べてみた。
「地域青少年ボランティアのつどい IN 東北」
 
 昨年10月29日、東北6県の高校生に呼びかけての「地域青少年ボランティアのつどい IN 東北」が山形県で開催された。このイベントの企画・運営は、山形県青年の家の指導のもと、山形県高校生ボランティアサークルのOB・OG、指導者が中心に実施し、プログラムは、コンサート、13のサークルの活動発表、講演と盛りだくさんな内容となった。山形県下の高校生を中心に358名が参加し、会場は、若者のほとばしるエネルギーによる熱気に溢れていた。
 このイベントの仕掛け人である山形県教育庁社会教育課堀米幹夫課長は、「このような活動が山形県だけでなく、東北各地に広がり、また相互の交流によって高校生たちの活動内容がさらに充実、発展することを期待して実施しました」と、開催の思いを語る。
全国の青少年の活動の様子は?
 
 そもそも山形は、県の支援も得て青少年の活動が活発な土地柄だが、自治体によっては必ずしもこうした活動自体を把握していない。山形の例を参考に、今回、全国の教育委員会にさわやか福祉財団独白の一斉アンケートを試みた。アンケート名は「地域における青少年のボランティア活動支援体制について」。調査先は、地域の中で教育改革を進める側であり、指導的立場にある全国の都道府県教育委員会生涯学習(社会教育)課とし、今年1月に郵送により実施。2月までに46都道府県から回答を得た(1県は回答できずとの回答)。
地域における青少年のボランティア活動支援体制
アンケートから
(2001年1月実施 46都道府県から回答)
(グラフの数字は都道府県の数)
 
 アンケート結果をまとめてみると、まずグループ・団体等の実態は、46都道府県のうち12が「把握している」と回答している。「把握していない」といういくつかの自治体にその理由を改めて尋ねたところ、「特定の団体や登録団体は把握している」「自主的な活動の把握は困難」「青少年だけの団体把握はしていない」、あるいは「知事部局や社会福祉協議会が把握しているはず」という答えだったが、実際にそれらの部署に確認してみると把握はされていなかった。「把握している」と答えた県でも、特定の団体に限定したところもあり、都道府県レベルでの認知はそれほど進んでいない。
 また、今回の調査で46都道府県のうち20県以上が取り組んでいると回答した項目は、「指導者の育成」「児童・生徒リーダーの養成」「講習会の開催」「支援イベントの実施」など。中でも最も進んでいるのは、「指導者の育成」で28県。一方、今回山形で行われたような「他県との青少年の交流」を都道府県レベルで「実施している」と回答してきたのは残念ながら4県のみで、「今後行いたい」を含めても7県しかなかった。
 他県との交流について、「井の中の蛙にならないように視野を広げられる」という効果を挙げる一方で、「自分の地域だけでもできることをなぜ県外まで出て交流する必要があるのか、という議論がある」という問題提起もあった。また、「県外との交流は、地域を離れることで学習意欲が高まる、生活・文化の違いを学べる、活動が盛んなところとの交流により研修内容に興味を持つという、地域内での交流とはまた違うメリットがある。しかし、安全面と限られた予算を考えると大変厳しいのが実情」と語ってくれた担当者もいた。
 今回の結果を見る限り指導者養成など活動推進への理解はある程度進んでいるものの、実態の把握や、さらに具体的な支援となるとまだまだ不十分だということがわかる。子どもたちの心が地域での活動に向いても、具体的な相談や活動の情報も得られず、活動資金の問題などさまざまに壁にぶつかればせっかくの心の灯は消えてしまう。山形のボランティアのつどいに参加した生徒たちに、活動を通じての思いや大人の支援に対する率直な気持ちを聞いてみた。
 会場内は高校生たちの熱気でいっぱい。
活動を紹介するポスターも展示されていた
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