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どうなった消費税の福祉目的?
政府は福祉政策に本気で取り組んで
 佐野 道夫さん 67歳 新潟県
 
 「福祉の問題は、高齢化の時代を反映して切実になっています。そして、介護保険制度が始まり福祉財政が注目されていますが、今、福祉目的税はどうなっているのでしょうか? 消費税の5%は税金として定着していますが、福祉目的の趣旨を免れています。今後、しっかりした福祉目的税を確立して福祉政策を安定させてほしい。国民が安心できる生活が営めるよう、政府は英知を結集してほしいものです」
 
 「目的税」とは、税収の使い道が明確に特定されている税金のこと。2000年度予算では消費税を「福祉目的」に使う方針が示されているが、「福祉目的税」とするには各党の思惑もあって、ここ数年、浮かんでは消え、といったところ。
 記憶に新しいところでは、細川政権が打ち出して(1994年)あっという間に消えた「国民福祉税」構想。そして1999年秋には、自民、自由、公明3党の連立政権発足時に「消費税を福祉目的税に改める」と合意した。しかし、時の小渕首相が倒れた後の昨年5月の衆院選では与党側共通公約から結局外れることになる(党としては公明、保守、自由党などが消費税の福祉目的税化を公約)。
 現在5%の消費税が1989年に3%で導入されてから10年余。2000年度予算で見ると、総額84兆9871億円の一般会計予算のうち消費税歳入9兆8560億円に対し、社会保障関係費の歳出は16兆7666億円と、賄うには遠く及ばない。
 そもそも福祉目的税の創設、消費税の福祉目的化などについては、長所短所両方があるといわれている。利点は比較的財源が安定すること、そして国民が福祉を身近に感じるといったところだろう。問題点は、 「福祉目的」を言い訳に安易に税率が引き上げられる要因となることだ。
 これから膨張する一方の社会保障費を福祉目的の消費税で賄おうとしていけば、税率はさらに大きく跳ね上がる。あるいは国民が税率アップにノーといえば、「それならここまでしかできませんよ」と社会保障の低下も招きかねない。
 そもそも政治家が「福祉目的」と口にする時はその中身を十分に確認することが必要で、政策の十分な論議もないまま、赤字だから、と言われても納税者は腑に落ちない。かつて消費税導入当時も、政府は「使途は福祉社会実現を念頭に置く」と語っている。その後も財源が枯渇してくると「福祉」や「社会保障」とうたい始める。この2月にも宮澤喜一財務相が社会保障費用の増大に伴う将来の財政負担について「消費税上げ」の必要性に言及したことをマスコミ各社が報じたがその後すぐトーンダウン。
 投稿者が指摘している通り、政治家は「英知」を集めて福祉政策に取り組んでもらいたいし、また、私たちも税金の使われ方にもっと厳しく関心を持っていく必要があるだろう。
 どのような方向を取るにしても、考えられる選択肢と起こりうる結果を明確に国民に示して判断を仰ぐこと、そして、何よりもこれからの高齢社会、福祉はもはや国や地方自治体だけでは限界があり、NPO・市民活動が大きな柱となることを認識して、その仕組みづくりを推進することを大いに望みたいものだ。








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