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(3)1軸船型の操縦性能向上対策指針
 大B/dの1軸船型においても、適切な船尾形状、舵面積及びプロペラ直径を組み合せることにより、IMOの操縦性暫定基準をクリアーするレベルを達成し得る指針が得られた。また、フラップ付き舵やシリング舵等の特殊舵を装備することにより、通常舵よりも舵面積を減らし、推進性能の大幅な低下をきたさず操縦性能向上を図るのに有用な設計資料が得られた。
(4)実海域運航性能
 評価海象(平均海象及び荒天海象)を設定し、荒天海象下での運航性能計算により、船首甲板冠水、船底露出、プロペラ先端露出の発生確率が得られた。また、規則波中の抵抗増加を理論計算と模型実験値から船首肥大度、B/d、フルード数を関数とした回帰式を求め、短期予測法を適用して不規則波中抵抗増加を求め、荒天海象下で主機トルク一定制御等での船速低下を計算した。これらから従来にない幅広浅喫水肥大船の実海域での特性と、さらに船型要素が変化した場合の影響を把握した。
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SR243A波浪中船速低下
(5)浅水域操縦性能
 1軸コア船型の満載状態で、水深と喫水の比を3種に変えた浅水域での操縦性能(旋回及び針路安定)の模型試験を施行し、深水域から浅水域になるにつれての性能の変化を把握した。旋回半径は浅水域になるにつれ大きくなるが、H/dが2付近で10°Zの1stオーバーシュートアングルが大きくなり、深水域でのIMOの暫定基準を多少超えるも、全般的にはあまり変化しない結果が得られ、浅水域での操縦性能の理解と運航上の指針が得られた。模型試験により得られた主船体に働く流体力微係数を用いたMMG数学モデルによる計算は、実験結果と十分な精度で一致することを確認した。
 また、浅水域での船体沈下を模型試験により計測し、水深と船速に応じた沈下量の関係が求められ運航上の指針が得られた。
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水深変化が針路安定性性能に及ぼす影響(SR243A)
(6)総合評価と設計指針
 従来にない大B/dと肥大度を併せ持つスーパーシャロードラフト船の開発に取り組み、船型性能の観点からは、運航上留意すべき点はあるも実船化出来ることが確認された。1軸船及び2軸船に関して、上述のとおり船型計画から推進性能、プロペラ設計、操縦性能、耐航性能、さらに実海域での運航性能、浅水域おける操縦性能等にわたって、いずれの船型を設計する場合にも有効に活用できる貴重な指針が得られた。1軸船と2軸船の評価は、特に建造効率など造船所で異なることも考えられ、一概に評価はできないが、2軸船で約20%のコスト高と仮定したとき、運航経済性指数(載貨重量x速力/主機馬力)は略同レベルにあることが分かった。実船化にあっては、個々の案件で具体的に検討できる資料が得られた成果は大きい。








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