4.得られた成果
(1)スーパーシャロードラフト船(1軸及び2軸船)の船型計画と主要性能把握
a)船型計画
設計に利用できる世界の主要港の膨大な港湾データを整理して、これから東アジア地域の港湾を対象に船型の主要目他、載貨重量を増大する船型の要件を設定する資料を得た。1軸船及び2軸船の基本計画で、一般配置/機関室配置の検討、軽荷重量/貨物容積の推定、トリム計算等、スーパーシャロードラフト船の船型を検討する基本的な資料を得た。
b)推進性能
スーパーシャロードラフト船は、これまでの船型の範疇を大きく超えた大B/dと肥大度を併せ持つため、特に1軸船で流れの不安定現象、剥離などで異常な推進性能の劣化が懸念されたが、浅喫水肥大化しているにもかかわらず従来船型と大きく変らない性能を有するコア船型が設計でき、1軸及び2軸船の性能データが得られた。1軸船ではコア船型をベースに船尾フレームラインの改良が図られた船型、さらに、1軸及び2軸船の肥大度、B/d等の変更船型の性能データなど、船型要素を変化させた時の推進性能の変化が把握できるデータが得られ、船型変更がシリーズ的に評価できる設計資料が得られた。
また、浅水域での航行等厳しい船尾流場を想定して設計されたプロペラの単独性能、キャビテーション性能及び変動圧力の計測結果が得られ、スーパーシャロードラフト船に装備するプロペラを設計する上での有益なデータが得られた。
c)操縦性能
1軸及び2軸のコア船型他、1軸船の船尾フレームライン改良船型、舵面積増加、特殊舵付き船型、さらに1軸及び2軸船でB/dなどを変更させた船型の操縦流体力微係数が実験的に求められ、実船操縦運動のシミュレーション結果から、船型変更がシリーズ的に評価できる設計資料が得られた。
d)耐航性能
1軸及び2軸のコア船型他、B/dを変更した船型の向い波規則波中の運動性能及び抵抗増加の計測結果が得られ、船型変更に有益な設計資料が得られた。
(2)理論による性能推定手法の評価
a)ランキンソース法(造波抵抗)
ランキンソース法(横浜国大法)により、スーパーシャロードラフト船(大B/dでかつ肥大船型)においてもかなりの精度で造波抵抗が推定できることが分かった。また、スケグ型2軸船については、パネル分割を工夫することで2軸肥大船への適用に初めて成功し、実用的な精度で推定が可能となった。
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造波抵抗係数の実験値と推定値(ランキンソース法)の比較例
b)CFD(推進性能)
従来船型から遥かに浅喫水肥大度の大きい1軸スーパーシャロードラフト船に対しても、CFD計算は有用で、水槽試験結果と比較してかなり精度よく粘性抵抗、船尾流場、自航要素の推定計算が可能であることが分かった。スケグ付き2軸船のCFD計算は、非構造格子法の適用を考えるなどの努力をした結果、2軸肥大船への適用に初めて成功し、実用的なレベルでの流場の推定計算の可能性を示した。
NICE法によるForm Factorの計算と水槽試験結果の相関
NICE法による自航要素の計算と水槽試験結果の相関
c)操縦流体力
斜航流体力の推定に、NICEコードを用いたCFD計算を行った結果、PMM試験結果との比較で、1軸のB/dの違いによる影響が定性的には求められるが、定量的にはまだかなりの差があり、流場構造等更なる課題があることが分かった。
細長体理論により深水域及び浅水域における1軸船型(B/d変更、フレームライン変更)の操縦流体力を計算し、実験値と比較した結果、船型変更に対応して深水域及び浅水域とも、実用的なレベルで推定が可能なことが分かった。特に浅水域においても、このような大B/dでかつ肥大度の大きい船型にも適用の可能性が示された。
d)規則波中運動/波浪中抵抗増加
ストリップ法により、1軸の3船型、2軸の2船型の規則波中運動計算を行い、実験値と比較した結果、このような大B/dでかつ肥大度の大きい船型にもかかわらず、船型変更にも対応し、かなりの一致で運動性能が推定できることが分かった。
また、波浪中抵抗増加を丸尾の方法に藤井・高橋の方法を加味した方法で推定計算を行った結果では、船型によりバラツキが見られるが、依然として有用な推定手法であることが分かった。
細長体理論による浅水域操縦流体力推定値と実験値の比較(SR243A)