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1.研究の目的
 世界の海上物流は大きく変わりつつあり、東アジア地域を中心とした飛躍的な伸びから、同地域の浅水港湾に入港可能な、経済性に優れた新船型を求める動向が海運界などにある。この動向に対応するには、従来から建造されている船型の領域を超えた、浅喫水で画期的に載貨重量を大きくした新船型の開発が望まれている。
 本研究部会では、この要望に応えるため、新船型の要件を見出すべく世界の主要港を調査し、岸壁長及び水深別に港湾数の統計データを作成した。その膨大な調査結果のデータから東アジア地域の港湾を主たる対象としたとき、船型要件として船長を250m程度、計画喫水を11m程度に制限することで、同地域の約50%の港湾に運航が可能となることが分かった。この条件で現在運航されている船型は、例えばハンディマックス・バルクキャリアー等があるが、その載貨重量は4〜5万トン程度となっている。ここで貨物輸送量の大幅な増加を図るため、9〜10万トンと従来船型の倍近い載貨重量を有する船型とするには、船長を250m程度、船幅を50m程度、肥痩度を0.82程度とする必要がある。これを寸法比で見ると、L/B=5、B/d=5、L/B(1−Cb)=0.9となり、従来になく船首尾の肥大度の大きい超幅広船となる。従来の船型との違いを認識するため、既存の船型と比較したものを図2.1-1に示す。横軸に浅喫水度を示すB/dをとり、縦軸に船首尾の肥大度を示すL/B(1−Cb)をとると、大略○印で示した領域の船型となり、従来の船型範囲から大幅に隔離しているのが読み取れる。(図中には、本研究取組の先導役となったSR231の研究船の浅喫水肥大度も参考に示している。)
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浅喫水肥大度の比較
 このような船型の範疇では、一般的には推進性能及び操縦性能に問題が無いとされる2軸船型が指向されてきた。しかし、2軸船型は1軸船型に比べると、主機、プロペラ、舵及び操舵機などの艤装品が多く船価は割高になり、これにより運航経済性能が1軸船に劣ると想定される。一方、1軸船は浅喫水肥大度の程度が従来になく大きくなる故、流れの不安定現象、剥離が生じやすく異常な推進性能の劣化を惹起する懸念がある。また、B/dが大きいことに加え、推進性能の改良を図る余り船尾の旋回抵抗が小さくなり、針路安定性の劣化から操船上の問題が生じる恐れがある。1軸船のこれらの諸課題を解決し、その上でこのような領域の船型として1軸、2軸のどちらの船型が運航性能上優位であるか、総合的に比較検討する必要がある。更に、両船型に共通する課題として、実海域の運航性能の評価及び東アジア地域のみならず、水深の浅い海域や内水河川等への航行の安全性の評価も重要な課題となる。
 本研究においては、従来船型の倍近い9〜10万トンの載貨重量を有する新船型の開発を目指し、上述の諸課題を解決する研究に取り組み、1軸、2軸のいずれの船型が運航性能上優れているのかの検討も踏まえ、これらの研究過程から得られる設計指針を確立し、新船型創出の基盤固めを行うことを目的とする。








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