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ウ.底層環境との関係
(ア)底質
 今回調査により得られた結果から、底質と底生生物との関係を整理したものが図4、5である。これによると、COD、T-Sが高い地点では、[1]種数及び多様度指数が低い、[2]汚濁指標種及び随伴する種の出現割合が高い、[3]生物貧困域または無生物域になっている、などの傾向が見られた。 底生生物は海域環境の指標として役立つことが一般に知られており、玉井(1998)は海域の有機汚染の進行と底生動物群集の変化について、既存の知見から表11のようにまとめている。
表11 有機汚染の進行と底生動物の変化
有機汚染の進行と底生動物の変化 [1]多毛類(環形動物)の増加と甲殻類(節足動物)、棘皮類の減少、消滅。
[2]種類数の減少と多様度の低下。
[3]年令の高い個体の減少、消滅。
[4]小型個体の増加。
[5]有機汚染指標種の増加。
[6]生物貧困域または無生物域の出現。
 
【引用資料】
玉井 恭一(1998): マクロベントスの分布と生産、第3章沿岸生態系を構成する生物の分布と動態、沿岸の環境圏、平野敏行監修、フジ・テクノシステム。
 
 今回の調査結果は玉井が示した知見と良く一致し、特に10月調査では底質分析値と種数及び多様度指数との間で明確な関係が見られた。なお、7月調査における松永湾の調査地点4のように特異な種(ここでは軟体動物のホトトギスガイ)が多量に出現した地点では、種数がほぼ同じでも多様度指数が低くなることがあり、注意が必要と思われた。
 
 次に、海田湾と松永湾とを比べると、海田湾は底質分析値が松永湾より高く、有機汚染が進行している。北森は底質条件と底生生物との関係を表12のように提唱している。
表12 底質条件と底生生物と関係
内容 臨界値
底生生物の群集構造や指標生物分布に大きな変化を生じさせる。 強熱減量:13%
COD:30mg/g
全硫化物量:0.5mg/g
 
【引用資料】
北森良之介(1975): 環境指標としての底生動物(2)―指標生物を中心に―、環境と生物指標2、共立出版株式会社。
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 注)汚染指標種はこれと随伴する種も含む
図4 底質のCODと底生生物との関係
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 注)汚染指標種はこれと随伴する種も含む
図5 底質の硫化物と底生生物との関係
 海田湾の底質は、北森が提唱した「COD30mg/g、全硫化物量0.5mg/g」以上の分析値を示し、7月調査では松永湾とほぼ同程度の生物群集が得られているが、10月調査では無生物の地点が出現するなど底生生物群集の著しい貧困化が生じていた。逆に、松永湾の底質は、海田湾と同様に泥地であるが、有機物量が少なく、海田湾に比べると有機汚染の度合いが低い状態にあると考えられた。そのため、生息する生物群集は海田湾の場合のような著しい貧困化が見られず、7月と10月の生物群集は概ね同じであった。
 








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