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4.調査・研究結果
(1)底質
 底質調査結果は資料編1のとおりであり、これを一括整理したものが表5、6である。
 
ア.海田湾
 7月調査では、調査時の水深が7.2〜10.2mであり、透明度は1m以下と低かった。底泥は無臭の地点もあるが多くは腐敗臭を発し、黒色又は灰黒色を呈していた。海底面から1m上層の溶存酸素量は1.2%と少なく貧酸素の状態であった。これらの状況を反映して底泥は還元状態にあり、COD、T−Sとも水産用水基準を上回り、特にT−Sの最高値は当該基準の4.45倍であった。
 また有機態炭素量は最大3.0%を示し、有機態窒素量はその約1/10であった。シルト分以下の含有率が最も低かった地点においては、有機態炭素、有機態窒素とも最も低く、粒度組成と有機汚濁との関連性がうかがえた。
 10月調査では、7月と比較して還元状態が一層進行し、すべての地点で−400mV以上であった。硫化物はシルト分以下の含有率が最も低かった地点を除いて全て1mg/g以上の高値を示し、最高値は水産用水基準の7.95倍であった。
 
イ.松永湾
 7月調査では、調査時の水深が3.8〜9.9mであり、透明度は1m以上と海田湾に比べて高かった。底泥はすべて無臭で灰色を呈していた。海底面から1m上層の溶存酸素量は6.3%以上と高く貧酸素の状態は発生していなかった。これらの状況を反映して底泥の還元状態の程度は海田湾に比べて低く、COD、T-Sともほぼ水産用水基準のレベルであった。
 また有機態炭素量は最大1.4%を示し、有機態窒素量はその1/10以上であり、海田湾とは比率が異なっていた。シルト分以下の含有率が最も低かった地点においては、有機態炭素、有機態窒素とも最も低く、海田湾同様粒度組成と有機汚濁との関連性がうかがえた。
 10月調査では、7月と比較して還元状態が進行したが、海田湾の約1/2のレベルであった。硫化物は1地点を除いて水産用水基準を下回り低かった。
表5 底質等分析結果の概要
区 分 海 田 湾 松 永 湾
採取年月日 平成13年7月11日 平成13年7月12日
水深(m) 7.2〜10.2 3.8〜9.9
透明度(m) 0.5〜0.7 1.1〜2.4
底泥臭気 無臭又は磯臭、腐敗臭 無臭
灰黒色又は黒色 灰色
水温(℃) 19.6〜20.6(低上1m) 23.9〜25.1(底上1m)
泥温(℃) 18.0〜20.0 23.0
溶存酸素量(%) 1.2(低上1m) 6.3〜7.4(底上1m)
酸化還元電位(mV) -220〜-375 -65〜-181
強熱減量(%) 9.9〜18.0 10.6〜15.1
COD(mg/g) 25〜51 21〜25
T-S(mg/g) 0.67〜0.89 0.16〜0.23
AVS-S(mg/g) 0.49〜0.80 0.01〜0.08
T-N(mg/kg) 2,090〜3,490 1,580〜2,350
T-P(mg/kg) 360〜680 430〜520
TOC(%) 1.1〜3.0 1.3〜1.4
O-N(%) 0.207〜0.346 0.158〜0.235
含水率(%) 64.7〜72.0 57.6〜69.3
シルト分以下(%) 60.5〜96.3 89.7〜99.4
表6 底質等分析結果の概要
区 分 海 田 湾 松 永 湾
採取年月日 平成13年10月18日 平成13年10月19日
水深(m) 5.7〜10.5 4.7〜11.5
透明度(m) 2.2〜3.1 1.5〜2.5mの範囲
底泥臭気 腐敗臭又は無臭 無臭
黒色又は灰黒色 灰黒色
水温(℃) 22.2〜23.3(底上1m) 21.6〜22.3(底上1m)
泥温(℃) 22.0 21.0〜22.0
溶存酸素量(%) 2.6〜3.6(底上1m) 5.5〜6.5(底上1m)
酸化還元電位(mV) -431〜-451 -235〜-270
強熱減量(%) 9.6〜17.6 9.4〜12.9
COD(mg/g) 27〜57 20〜26
T-S(mg/g) 0.44〜1.59 0.07〜0.21
AVS-S(mg/g) 0.21〜0.90 0.01未満〜0.08
T-N(mg/kg) 1,680〜3,400 1,390〜1,980
T-P(mg/kg) 360〜640 400〜550
TOC(%) 1.2〜2.4 1.0〜1.4
O-N(%) 0.168〜0.338 0.139〜0.198
含水率(%) 60.6〜70.3 53.3〜66.9
シルト分以下(%) 61.7〜96.9 87.0〜99.6
(2)底生生物
 調査結果は資料編3のとおりであり、これを一括整理したものが表7〜10である。
 
ア.海田湾
 7月調査では、種数が10〜30種/0.16m2(平均:22種/0.16m2)、個体数が約450〜4600個体/m2(平均:1860個体/m2)、現存量が約6〜200g/m2(平均:67g/m2)、10月調査では、種数が0〜11種/0.16m2(平均:3種/0.16m2)、個体数が約0〜1200個体/m2(平均:285個体/m2)、現存量が約0〜20g/m2(平均:4g/m2)であった。採取された生物群集は7月調査及び10月調査ともに環形動物の出現割合が高く、7月調査ではTharyx sp.、Chaetozone sp.、ミズヒキゴカイ(以上、ミズヒキゴカイ科)、次いで、アシナガキボシイソメ(キボシイソメ科)やThelepus sp.(フサゴカイ科)などが、10月調査ではParapr ionospio sp.A型、Sigambra tentaculataなどが主な出現種であった。なお、多様度指数(H´:Shannon Wienerの情報量の式)は7月調査が約2.5〜3.2(平均:3.0)、10月調査が約0.0〜1.2(平均:0.4)の範囲にあった。
 
イ.松永湾
 7月調査では、種数が約15〜30種/0.16m2(平均:25種/0.16m2)、個体数が約400〜14000個体/m2(平均:3560個体/m2)、現存量が約30〜1100g/m2(平均:264g/m2)、10月調査では、種数が約15〜25種/0.16m2(平均: 20種/0.16m2)、個体数が約300〜1100個体/m2(平均:745個体/m2)、現存量が約30〜1100g/m2(平均:264g/m2)であった。採取された生物群集は7月調査及び10月調査ともに海田湾に比べると環形動物の出現割合が低く、軟体動物の出現割合がやや高くなっていた。7月調査では軟体動物のホトトギスガイ、環形動物のアシナガキボシイソメ(キボシイソメ科)やダルマゴカイなど、10月調査では7月調査で挙げた種の他に、軟体動物のイヨスダレや環形動物のタケフシゴカイ科なども主な出現種になっていた。なお、多様度指数は7月調査が約0.7〜4.3(平均:3.0)、10月調査が約2.8〜3.6(平均:3.3)の範囲にあった。
表7 海田湾底生生物分析結果一覧表(7月)
項目/調査地点  1 2 3 4 5 全域
個体数
編組比率
(%)
環形動物 81.5 95.8 81.9 68.0 95.3 84.5
軟体動物 16.8 1.4 11.7 20.0 1.5 10.3
節足動物 0.3 1.4 5.2 10.7 0.8 3.7
その他 1.4 1.4 1.2 1.3 2.4 1.5
合   計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
総種類数(種/0.16m2) 29 10 24 22 26 22
総個体数(個体/m2) 2225 444 1069 938 4644 1864
総湿重量(g/m2) 204 6 27 16 83 67
  多 様 度 指 数 2.93 2.46 3.53 3.06 3.19 3.03
汚染指標種の出現割合(%) 54.8 60.6 43.9 78.7 41.5 55.9


シズクガイ       [2]
(18)
   
アシナガキボシイソメ [3]
(18)
  [3]
(12)
    [3]
(12)
Paraprionospio sp.A型         [3]
(13)
 
Prionospio Pulchra   [1]
(38)
  [1]
(35)
   
Prionospio sp.   [2]
(20)
  [3]
(10)
   
ミズヒキゴカイ [1]
(30)
[3]
(17)
      [4]
(10)
Chaetozone sp.         [1]
(26)
[2]
(13)
Tharyx sp. [2]
(22)
  [2]
(14)
  [2]
(21)
[1]
(18)
Thelepus sp.     [1]
(27)
    [5]
(8)
コノハエビ       [3]
(10)
   
表8 海田湾底生生物分析結果一覧表(10月)
項目/調査地点  1 2 3 4 5 全域
個体数
編組比率
(%)
環形動物 0.0 100.0 100.0 100.0 98.4 99.6
軟体動物 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
節足動物 0.0 0.0 0.0 0.0 1.1 0.3
その他 0.0 0.0 0.0 0.0 0.5 0.1
合   計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
総種類数(種/0.16m2) 0 1 1 4 11 3
総個体数(個体/m2) 0 6 6 225 1188 285
総湿重量(g/m2) 0 1以下 1以下 3 19 4
  多 様 度 指 数 0.00 0.00 0.00 0.91 1.23 0.43
汚染指標種の出現割合(%) - 100.0 100.0 83.3 80.0 90.8


Sigambra tentaculata         [2]
(10)
[2]
(9)
アシナガキボシイソメ           [3]
(4)
Paraprionospio sp.A型       [1]
(83)
[1]
(79)
[1]
(79)
Prionospio pulchra   [1]
(100)
[1]
(100)
     
 
注) 1.総湿重量については1g以上/個体のものが分布像を歪めるため除外した。
 
2.多様度指数は以下の式を用いた。
z1011_03.jpg
    (sは種類数、Nは総個体数、Niはi番目の種の個体数)
 
3.汚染指標種の出現割合は、汚濁指標種及びこれに随伴する種の個体数が総個体数に占める割合を示す。
 汚染指標種:シズクガイ、チヨノハナガイ、ヨツバネスピオA型、B型、
 汚染指標種に随伴する種:ゴイサギガイ、Psaedopolydora sp.、ミズヒキゴカイ、Tharyx sp.、Mediomastus sp.、Notomastus sp.、コノハエビ
 【引用資料】
[1]漁場保全対策推進事業調査指針(1998)、水産庁研究部漁場保全課、平成9年3月
[2]北森良之介(1975):環境指標としての底生動物(2)、環境と生物指標2―水界編―、日本生態学会環境問題専門委員会編
[3]北森良之介(1973):汚染に伴う生物相の変化―底生動物を中心として、海洋学講座9、海洋生態学、山本護太郎編、東京大学出版会
[4]北森良之介(1966):海域における水質汚濁の生物学的判定、水処理技術Vol.7,No.4
 
4.優占種の数字は順位を示す。( )内の数字は出現個体数比率(%)を示す。
表9 松永湾底生生物分析結果一覧表(7月)
項目/調査地点  1 2 3 4 5 全域
個体数
編組比率
(%)
環形動物 30.8 55.4 65 7.3 62.9 44.3
軟体動物 48.6 20 20.3 91.9 19.4 40.0
節足動物 10.3 21.3 4.1 0.6 3.2 7.9
その他 10.3 3.3 10.6 0.2 14.5 7.8
合   計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
総種類数(種/0.16m2) 25 28 29 29 15 25
総個体数(個体/m2) 1400 938 769 14288 388 3557
総湿重量(g/m2) 85 30 38 1411 28 264
  多 様 度 指 数 3.15 3.79 4.28 0.68 3.15 3.01
汚染指標種の出現割合(%) 6.3 14 30.1 1.3 19.4 14.2


ホトトギスガイ [1]
(46)
    [1]
(91)
  [1]
(77)
シズクガイ     [2]
(12)
  [3]
(8)
 
アシナガキボシイソメ   [2]
(18)
  [2]
(5)
  [2]
(6)
Pseudopolydora sp.     [3]
(9)
    [5]
(1)
ダルマゴカイ [2]
(8)
      [1]
(35)
[3]
(2)
タケフシゴカイ科   [3]
(14)
       
Thelepus sp.     [1]
(15)
    [5]
(1)
ワレカラ類   [1]
(19)
      [4]
(2)
イカリナマコ科 [3]
(8)
      [2]
(15)
 
表10 松永湾底生生物分析結果一覧表(10月)
項目/調査地点  1 2 3 4 5 全域
個体数
編組比率
(%)
環形動物 36.2 50 71.9 48.0 49.1 51.0
軟体動物 0.0 25 18.5 49.7 35.4 25.7
節足動物 21.3 7.4 4.1 0.6 4.3 7.6
その他 42.5 17.6 5.5 1.7 11.2 15.7
合   計 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 100.0
総種類数(種/0.16m2) 14 22 20 26 20 20
総個体数(個体/m2) 294 675 913 1119 725 745
総湿重量(g/m2) 21 37 90 215 61 85
  多 様 度 指 数 2.93 3.64 3.38 2.82 3.62 3.28
汚染指標種の出現割合(%) 6.4 3.7 17.1 2.2 2.6 6.4


トウガタガイ科         [1]
(16)
 
ホトトギスガイ       [1]
(47)
   
イヨスダレ   [1]
(25)
[2]
(18)
  [2]
(14)
[3]
(12)
Sthenolepis sp. [2]
(15)
         
アシナガキボシイソメ   [2]
(19)
  [2]
(22)
   [2]
(13)
ダルマゴカイ         [2]
(14)
 
Mediomastus sp.     [3]
(14)
     
タケフシゴカイ科     [1]
(25)
    [4]
(7)
トゲヨコエビ科 [3]
(11)
         
イカリナマコ科 [1]
(40)
[3]
(10)
      [5]
(7)
 
注) 1.総湿重量については1g以上/個体のものが分布像を歪めるため除外した。
 
2.多様度指数は以下の式を用いた。
z1011_03.jpg
    (sは種類数、Nは総個体数、Niはi番目の種の個体数)
 
3.汚染指標種の出現割合は、汚濁指標種及びこれに随伴する種の個体数が総個体数に占める割合を示す。
 汚染指標種:シズクガイ、チヨノハナガイ、ヨツバネスピオA型、B型、
 汚染指標種に随伴する種:ゴイサギガイ、Psaedopolydora sp.、ミズヒキゴカイ、Tharyx sp.、Mediomastus sp.、Notomastus sp.、コノハエビ
 【引用資料】
[1]漁場保全対策推進事業調査指針(1998)、水産庁研究部魚場保全課、平成9年3月
[2]北森良之介(1975:環境指標としての底生動物(2)、環境と生物指標2―水界編―、日本生態学会環境問題専門委員会編
[3]北森良之介(1973):汚染に伴う生物相の変化―底生動物を中心として、海洋学講座9、海洋生態学、山本護太郎編、東京大学出版会
[4]北森良之介(1966):海域における水質汚濁の生物学的判定、水処理技術Vol.7,No.4
 
4.優占種の数字は順位を示す。()内の数字は出現個体数比率(%)を示す。








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