6.子どもの国籍に関する調査
ISSJでは10年ほど前から日本で出生した子どもの国籍に関わる援助依頼が来るようになり、その数は年々増加し、問い合わせだけの件数も含めると年間200件にものぼる。昨年度、三菱財団の助成を受けて日本国内在住の無国籍・外国籍・未就籍児童の実態を把握するため、児童相談所と民間の外国人支援団体の協力を得て、全国規模の調査を実施したが、本年度は、さらにアンケート結果の集計、分析、まとめを行い、その結果を踏まえ、無国籍・外国籍・未就籍の子ども達ににどのような援助ができるか検討を重ねた。
回答は、児童相談所を通じて行ったものが268件、民間の外国支援団体を通じて行ったものは83件であった。これらのアンケートを分析、検討した結果いくつかの問題点が明らかになった。
(1) 国籍の認定がきちんとされていなく、本来ならば日本国籍や、外国人親の国籍を取得できているはずの子どもが「無国籍」と登録されていたりあるいは全く登録されていない状態である。
(2) 一方の親が日本人であるにもかかわらず、日本国籍を取得していない子どもが数多くおり、胎児認知の制度はほとんど機能していない。
(3) 外国人の親の国籍を取得しているにもかかわらず、本国政府に出生届がされていないため国籍が実効的となっていない子どもが多数いる。
民間外国人支援団体を通じて行った調査からは、さらに子どもの教育問題、健康の問題が明らかになった。児童相談所を通じて施設に入所している子ども達は学校、幼稚園、保育園に在籍しているが、しかし、民間支援団体が関わっている義務教育年齢の子どものうち義務教育を実際受けている子どもは1/3、学令前の子どもで幼稚園保育園を利用しているのは、1/4であった。これは、超過滞在を恐れて出生届をしていないため教育委員会からの通知が届かないからである。また健康保険に入れないので医療が十分に受けられていない現状がある。親が超過滞在のため日本で、生まれながらに超過滞在となっている子ども達の救済のため、公的機関と民間団体の連携による援助が求められていることがこの調査で明確になった。
今後、今回の調査で見えてきた問題の解決を図るべく、広く社会に現実を訴え、必要な法改正や児童保護政策についてさらに検討を重ねていきたい。