6.情報保障の形態
ここでは調査項目のうち、司会の発言、校長式辞、聴覚障害者来賓の祝辞、卒業生答について、どのような情報保障の手だてがなされているか報告する。
以下の表では、子どもたちにも見える位置(話者のそば、子どものそば)での通訳(キューサイン使用も含める)を手話通訳[1]とし、保護者や来賓のそばでの通訳を手話通訳[2]とした。手話通訳[1]は子どもたちのための、手話通訳[2]は保護者・来賓のための通訳を主な目的とすると考えられる。手話とキューは別のものであるが、ここでは子どもたちへの情報伝達手段がなされているかという観点から、キューも通訳に含めて考えた。
また、手話通訳[1]について、重複回答されている場合、例えば、話者のそばで手話と指文字の通訳がありさらに子どものそばでキューの通訳があるような場合、1式として集計した。
(1)司会の発言
司会は、部主事、教務主任クラスのろう学校の経験年数の長い教員があたることが多いと思われる。司会の発言を子どもたちにきちんと伝える手だては、子どもの年令によって変わってくるであろう。
発音サイン(キュー)や「めくりプログラム」などの使用が回答に記載されている場合は「その他」に分類したが、「手話を用いる」にキューを含めていると思われる回答もあったが、回答用紙に記載されているままに集計した。
幼稚部のみの式(1)において、司会が手話を(一部にせよ)用いる式数が30式中17式で、百分率で示すと56.7%となる。予想外に多かったと言えるだろう。
  |
記入のあった式数 |
話者手話使用 |
手話通訳[1] |
手話通訳[2] |
字幕提示 |
印刷物配布 |
口話のみ |
その他 |
殆ど |
一部 |
[1] |
30 |
12 |
5 |
6 |
6 |
5 |
3 |
4 |
7 |
[2] |
62 |
18 |
11 |
22 |
14 |
25 |
8 |
15 |
4 |
[3] |
28 |
9 |
4 |
17 |
5 |
7 |
1 |
2 |
0 |
[4] |
30 |
12 |
6 |
12 |
6 |
15 |
4 |
3 |
0 |
[5] |
4 |
2 |
1 |
2 |
0 |
2 |
0 |
0 |
0 |
計 |
154 |
53 |
27 |
59 |
31 |
54 |
16 |
24 |
11 |
表1:司会発言
(2)校長式辞
(2)において、口話のみが15式と目立っているが、子どもたちには口話で話すが、字幕提示や手話通訳などの視覚的な手だても行っていると断っている式数が5式あった。口話のみで行う場合、司会者は、子どもたち全員が発言を楽に読みとりのできるような配慮が必要であろう。これについては、回答用紙から判断することはできなかった。なお、2年前の調査との比較は当時のデータが不明のためできなかった。
  |
記入のあった式数 |
話者手話使用 |
手話通訳[1] |
手話通訳[2] |
字幕提示 |
印刷物配布 |
口話のみ |
その他 |
殆ど |
一部 |
[1] |
31 |
5 |
5 |
15 |
8 |
5 |
2 |
4 |
5 |
[2] |
63 |
10 |
5 |
34 |
15 |
47 |
26 |
9 |
1 |
[3] |
29 |
3 |
2 |
22 |
5 |
22 |
9 |
0 |
0 |
[4] |
30 |
8 |
5 |
21 |
8 |
27 |
15 |
1 |
0 |
[5] |
4 |
0 |
3 |
4 |
0 |
3 |
2 |
0 |
0 |
計 |
157 |
26 |
20 |
96 |
36 |
104 |
54 |
14 |
6 |
表2:校長式辞
式別にみた情報保障の手だては、表2のようであった。表3は、合計式数について2年前の調査と比較したものである。表3において、口話のみの百分率は前回と大きな差はないが、他の項目はいずれも、この2年間で大きな変化が見られる。
校長自ら手話を用いようとする式が増えていること、また手話通訳の話者のそば(つまり舞台上)への配置や字幕提示式数の大幅な増加など、きこえない子どもたちへの情報保障の手だての必要性が、共通に認識されるようになっていることが分かるであろう。
  |
有効回答式数 |
話者手話 |
手話通訳[1] |
手話通訳[2] |
字幕提示 |
口話のみ |
式数 |
% |
式数 |
% |
式数 |
% |
式数 |
% |
式数 |
% |
1998年 |
128 |
26 |
20.3 |
63 |
49.2 |
25 |
19.5 |
68 |
53.1 |
12 |
9.4 |
今回 |
157 |
46 |
29.3 |
96 |
61.1 |
36 |
22.9 |
104 |
66.2 |
14 |
8.9 |
表3:前回調査との比較(校長式辞)
(3)聴覚障害者来賓の祝辞
回答に無記入が大変目立ち、記入があったのは58式にとどまった。(2)と(3)の式では参列生徒の年齢幅が非常に広く、コミュニケーション手段も様々であると思われるから、話者が手話を使用するだけでなく、キューによる通訳や字幕提示の併用などにより、子どもたちに確実に伝わるような工夫が必要であろう。
なお、1名以上の聴覚障害者来賓の参列があったと回答した学校は50校、参列がなかったと回答したのは19校、残りは無記入であった。ただし、来賓としての参列がなくとも、聴覚障害のある教職員や保護者の参列はあったわけで、聴覚障害者の参列が全くなかったと回答した学校は4校、該当欄が全て無記入であったのは17校である。
  |
記入のあった式数 |
話者手話使用 |
手話通訳[1] |
手話通訳[2] |
字幕提示 |
印刷物配布 |
口話のみ |
その他 |
殆ど |
一部 |
(1) |
3 |
0 |
0 |
1 |
2 |
0 |
0 |
1 |
0 |
(2) |
21 |
9 |
1 |
7 |
5 |
17 |
6 |
3 |
2 |
(3) |
16 |
10 |
0 |
9 |
3 |
11 |
2 |
1 |
1 |
(4) |
16 |
12 |
1 |
5 |
4 |
15 |
5 |
1 |
0 |
(5) |
2 |
1 |
0 |
1 |
0 |
2 |
1 |
0 |
0 |
計 |
58 |
32 |
2 |
23 |
14 |
45 |
14 |
6 |
3 |
表4:同窓会長祝辞
表5は、2年前の結果との比較である。字幕提示のポイント数が大幅に増えていることは、校長式辞と同様に、伝達の手だてに対する認識の深まりがうかがえる。
有効回答式数 |
話者手話 |
手話通訳[1] |
手話通訳[2] |
字幕提示 |
口話のみ |
式数 |
% |
式数 |
% |
式数 |
% |
式数 |
% |
式数 |
% |
44 |
24 |
54.5 |
12 |
27.3 |
7 |
15.9 |
27 |
61.4 |
0 |
0.0 |
58 |
34 |
58.6 |
23 |
39.7 |
14 |
24.1 |
45 |
77.6 |
6 |
10.3 |
表5:前回との比較同窓会長の祝辞
(4)卒業生答辞(補足:在校生送辞について)
卒業生答辞には、お別れのことばなども含めた。
2年前の調査と比較すると、話者手話による式数の増加だけでなく、手話通訳[1]字幕提示の2項目において大幅なポイント数の増加が見られる一方、手話通訳[2]と口話のみのポイント数は僅かながら減少している。
  |
記入のあった式数 |
話者手話使用 |
手話通訳[1] |
手話通訳[2] |
字幕提示 |
印刷物配布 |
口話のみ |
その他 |
殆ど |
一部 |
(1) |
24 |
10 |
3 |
4 |
4 |
7 |
7 |
2 |
5 |
(2) |
62 |
28 |
5 |
16 |
11 |
47 |
25 |
7 |
2 |
(3) |
29 |
19 |
1 |
9 |
4 |
22 |
9 |
0 |
1 |
(4) |
30 |
26 |
0 |
5 |
4 |
27 |
14 |
3 |
0 |
(5) |
4 |
3 |
0 |
1 |
0 |
3 |
2 |
0 |
0 |
計 |
149 |
86 |
9 |
35 |
23 |
106 |
57 |
12 |
8 |
表6:卒業生答辞
表は省略するが、在校生送辞についてもほぼ同様の傾向を示している。
有効回答式数 |
話者手話 |
手話通訳[1] |
手話通訳[2] |
字幕提示 |
口話のみ |
式数 |
% |
式数 |
% |
式数 |
% |
式数 |
% |
式数 |
% |
118 |
65 |
55.1 |
16 |
13.6 |
20 |
16.9 |
69 |
58.5 |
10 |
8.5 |
149 |
95 |
63.8 |
35 |
23.5 |
23 |
15.4 |
106 |
71.1 |
12 |
8.1 |
表7:前回との比較 卒業生答辞