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2. 意識障害の臨床症状
 昏睡状態は一目でわかります。まったく反射のなくなった状態で,痛みの刺激を与えても反応がない状態です。問題は,軽い意識障害です。これは寝ぼけに似ているところがあります。大声で呼ぶとわれに返り,意識清明に近いレベルに戻りますが,.放っておくとまた意識混濁に入っていくという状態です。この状態では記憶障害や,自分がどこにいるのか,時間もわからない見当識障害,そして人物誤認したり,錯覚が起こりやすい。それからインコヘレンツといいますが,思考の散乱がある。脈絡が乱れて,何を言っているのかわからない状態です。思考の脈絡が乱れるのは精神分裂病でもありますが,精神分裂病の場合は滅裂思考といい,脳の損傷や意識障害による場合はインコヘレンツです。実態は同じです。
 もうひとつ大きな特徴は,注意・集中力の持続が低下します。注意が定まらず,すぐに気が散るように持続性がなくなります。食事の時にボンヤリしているので,声をかけるとハッとして食べ始めますが,しばらくすると虚ろな表情のまま箸で茶碗を突っついているような無意味なことをしている,といった状態がみられます。
 そして幻覚が出やすい。とりわけ症状精神病や器質性精神病では幻視が多い。それに対して精神分裂病の場合は幻聴が多い。ですから幻視をみた時にはまず薬とか身体的な病気による症状と考える必要があります。
 また,雲が人の顔に見えたり,壁のしみが虫に見えるパレイドリアがよくみられます。あるものが違うものに変形して見える錯覚で,何もないのに見える幻覚とは違います。








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