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第2章 看護記録をめぐる課題
I.看護記録の現実的な問題・課題
1.看護記録に要する時間の問題
2.院内で定めた看護記録の基準を守っていない事実(病棟毎の記録の文化)
3.POSやフォーカスチャーティングの誤解:自己流の解釈すなわち標準化が困難
4.問題表現の妥当性・適切性・信頼性に疑問
5.問題解決のための計画は抽象的、一般的
6.客観的事実・適切な情報を、根拠・証拠にした評価・アセスメントの記載が困難
7.客観的記載が困難.記録に感情がこめられている
8.公的に認められていない独自の略語が多すぎる
9.鳥羽(診療情報管理士)が指摘する看護記録記載の問題
(1)誤解を招きやすい表現
(2)医療に直接関係ない事柄の記載
(3)他の医療従事者を椰楡・攻撃するような内容の表現
(4)文字、用語、表現の誤り
(5)感情的記述
II.看護記録をめぐる今後の課題
1.診療情報の提供とその一環としての診療記録開示の目的にかなう記録
 インフォームドコンセントの理念に基づく医療の推進に貢献できる記録
 *infrmed・インフォームド:「〜について知識がある、明るい、詳しい」
 *consent・コンセント:「よく考えた上で、承諾する、賛成する」
 *お任せ医療から、積極的な医療への参加を促す。共に問題解決に取り組む。看護記録は診療記録の一部でもある。
2.リスクマネジメントと看護記録
 看護記録と法律との関係、訴訟問題・事実認定と看護記録との関係
3.記録の質と効率および看護記録の標準化
1)看護記録に要する時間の削減
2)看護記録の標準化と公的記録への努力
3)看護記録記載内容と質の改善
4)POSや経過記録の一方法であるフォーカスチャーティングに関する基本的な理解:枝葉をみて幹と根をみない文化。本質を理解し、記載をする
4.今、求められていること
(1)記録の時間を最小限に。ケアの時間を最大限に。
(2)ケアに活用出来る・活用する記録を。
 特に、継続看護への活用・医療チーム間、患者とのコミュニケーションの手段
III.診療記録開示時代の看護記録:診療情報提供の目的にかなう看護記録
:今後、標準化された診療記録としてPOSが一般化
 日本医師会は、標準化された診療録としてPOSとする。
(医師会雑誌123、NO12、2000年「医療の基本ABC」)
 POSとは、問題解決・結果・成果(アウトカム)をめざすシステム
 日本看護協会の看護業務基準:看護記録は、看護実践の一連の過程の記録
1.根拠に基づいた医療(evidence-based medicine, EBM)が強調される時代の記録
 全ておいて信頼出来る情報が記載されているかどうか
 情報とは、真実・事実
2.求められる条件(石川1999、岩井一部用語修正)
 責任性(accoutability) 確実性(authenticity) 完全性(integrity) 守秘性(confidentiality) 常時利用可能性(availablity)
 :正確な情報がわかりやすく表現され、同じ内容を共有し、情報(経過)が記録に残る。しかも、一般化できる記載方法とする。
3.ガイドライン、標準化の必要性
 日本看護協会「看護記録の開示に関するガイドライン」2000年5月
 公的基準(日本看護協会の看護記録の概念と構成要素、入院基本料の届け出要件、 第3者評価機構の評価内容など)に基づいた標準化および統一した記録システムを 整える。記録のガイドラインを作成する。
 各病院ではガイドラインに基づいたマニュアルも必要になる。
4.看護記録と診療録との統合:患者を中心とした診療記録
 患者を中心とした診療記録が必要となる。(整合性、情報の活用、共有)
 現在統合できる診療記録はPOSである。
5.患者と共に立案する看護計画
 問題の明確化と共に解決策を考え、実行。問題解決への取組の主体は患者・家族。
6.公的記録としての助産録は、理念的には看護記録のモデルとなりうるだろう。
 ・看護記録においては保助看法の第5条が鍵:業務記録としての意義
7.公的な記録として、健康保険法・入院基本料の規定に準拠する。
 記録として看護業務を規定し、その実行を証明するものとして「患者個人の記録」[1]経過記録、[2]看護計画を書くべきと規定している。現在は、まずこの事を守る。
8.看護記録の構成要素等記載内容の再検討
 看護記録の概念、看護記録の構成要素、用紙の名称そしてその内容、現状の記載内容の評価、倫理的側面に関して各病院で検討する。
IV.看護記録の前提として取り組むべきこと(基盤整備の課題)
1.日本看護協会(1995)「看護業務基準」に準じた看護実践と記録が鍵(必読)
 看護記録は、記載方法も課題ではあるが、日々の実践そのものの水準が基本。
1)看護業務基準とは、看護職の責務を記述したもの。
2)看護業務の範囲:保助看法により規定され、かつ看護倫理に基づいて実践
2.記録の概念を明確にすること
 :看護記録とは看護実践の一連の過程(日本看護協会)
 看護実践には、医療行為も含まれることを理解する。
 看護記録とは何か。看護記録を構成する要素を整理する。
 各記録用紙を構成する各用語の概念を明らかし、記載内容のモデルを提示する。
3.看護記録の構成要素および記載内容の標準化とスリム化
4.第3者が読んで意味があり、わかりやすい記録.ケアに活用できる記録
5.各施設ごとに記録の現状を分析・評価
 何が問題なのか。何故なのか。課題は何か。:基本「事実」を記載
6.基本に「看護倫理」が問われる
7.看護記録に関する教育
1)倫理教育:患者の権利と看護倫理
2)看護、看護実践の過程(日本看護協会看護業務基準)の結果としての看護記録
診療録との一貫性、協働の手段:入院診療計画書さらに看護の説明
3)看護と法律との関連
:保助看法、医療法、健康保険法・療養担当規則、医師法、民法
4)本質や概念を重視した教育の重要性
How toではなく、考え方、そして自ら考える能力
本質(必然的な働き、欠くことができない要素)概念(用語の意味・内容)
:看護記録は、多くの要素が関連した統合的存在(診療記録の一部)
図−2【看護記録に関連する要素】
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協働の時代の診療記録
協働・Collaborationとは:
 患者のニーズに対し、看護婦と医師の(医療従事者)ケアを統合し、包括的なアプローチをおこなうことである。このために目的を共有し、相互の補完的な役割に基づき、尊敬と信頼関係によって共同の意思決定を促すことである。
The National Joint Practice Commision(NJPC1981年)
8.今後の看護記録の実際:標準化
 :看護記録とは、看護実践の過程および業務記録としての意識化
1)日本看護協会:「看護記録の開示に関するガイドライン」に準じた標準化
日本医師会はPOSを導入すると教育・研修を始めた。医療従事者間の記録の共有が課題
一患者一記録(いちかんじゃいちきろく)の時代。経過記録記録の共有と一貫性
2)看護記録の構成要素とその概念および構成要素間の関連性の理解を徹底
3)アメリカの記録モデルをそのまま導入するのではなく、その背景も考え、批判的に活用する。
アメリカでは、JCAHOの監査や保険会社などの病院選定基準などに影響をうける。特に、3年ごとに実施されるJCAHOの監査をパスしないと保険の支払いや教育病院としての認定に影響をうけ、病院経営上の大きな問題となる。
例 看護記録は、[1]アセスメント(入院時情報・アセスメントツール等)、[2]患者の二一ズ/あるいは看護診断[3]計画[4]実践と評価、患者教育、退院時教育という規定がある。日本はこのような詳細な規定はない。








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