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成果-I.様々な社会参加への道
 
1、 起業による社会参加
 昨年提案した起業して社会参加というものが、今年度更に具体化した内容となった。5月に行われたベンチャー企業2社が主催する「子どものための就職セミナー」は、小・中学生を対象とした起業家の教育のセミナーであった。ここには当時障害児でありながら1 5才で会社を設立した(株)クララオンライン社長の家本賢太郎氏(20才)や、昨年紹介したNPO法人エティックの宮城治男代表理事(29才)もパネラーとして参加している。家本氏の学歴は言うまでもなく中卒である、つまりやる気さえあれば社会参加は可能だ、ということである。(株)C・E・S(板庇 社長)では既に数年前から小・中学生に起業家教育を行っている。又、同社では昨年から小・中学生に通信制の起業家教育も開始しており、これは通信ということから不登校生にも十分活用できると思われる。
 高校生向きにはジュニアアチーブメントという民間教育団体が行っている起業家教育システムもあるし、京都の第三セクター「ソフト・アプリケーション」の起業家教育センターでは高校生対象の教育を行っており、多数の高校が参加している。(株)セルフウィング(平井由紀子社長)では早稲田大学大江建教授の監修による“WASEDA・V・kids”の起業家育成プログラムを行っている。これはビジネスのおもしろさや苦労を疑似体験しながら、子どもたちの独創性や行動力、自立心を伸ばし、ビジネスセンスや生きる力を身につけるプログラムである。
 子どもたちが事業計画を作り、仲間と相談し、商品を作り、第三者に販売するという実体験を通じて、自分で考え、行動し、解決することで、「失敗を恐れずに挑戦するこころ」「自分の、そして他人の得意なところに気づき、それをほめるこころ」「幸せに生きる知恵をみつけるこころ」を育てる。実際に起業し、経済活動を行うことを通じて、「自分は何がしたいのか」「何が得意なのか」を発見し、それと他者に評価されることによって、ひとりひとりが自信を持ち、生きることの喜びや、自己に対する価値を見出すようになる。NPO法人マイビジョンは、主に小中高校生を対象にした体験教育や指導者の育成に全国で取り組む。自治体や学校、商工会議所など地域の有力団体と連携、千葉のマザー牧場(富津市)をはじめ、茨城、熊本、福島、島根、大阪の各府県などで拠点の候補先企業や組織が名乗りをあげている。新規事業創出による地域活性化事業を継続するには、自治体や学校、地域の有力団体などとの連携が欠かせない。
 介業家教育では、生徒たちが本物そっくりの会社を設立し、商品を製造・販売し経営することを通じて会社の実体を学ぶもので、学校の普通の授業では得られない社会の厳しさや苦労を実感する。2002年2月25日の読売新聞によれば、静岡女子商業高校の三年生約60名が地元企業60社とタイアップしてネット上に仮想商店街を設置した。これは授業の一環ではあるが、実際に220の商品が出展され三ヶ月で12000件のアクセスがあり、多い日では1日10万円の取引があったと言う。売れた場合の歩合はないが、通信セキュリティー費として月額1万円を受け取る。生徒達は2人一組で企業回りの営業を行い、デジカメで商品紹介ぺージまで作っている。
 これは1高校の例であるが、「仕事とは何か、商売とはどういうものか」「売る、儲けるとはどういうことか」「大人になるとは、生きていくとは」と様々な事を学び、社会に出るきっかけになると思う。この方法は高校でなくともその地域のネットワークとその中心になる人、コーディネーターがいればできるはずである。つまり起業家教育というのは、それ程難しいものではなく、不登校生が多数を占める通信制高校、大検予備校、フリースクール等でも、そしてやる気さえあれば地域社会でも可能だと思われる。
 我々はこの事業で正にこういう形を求めていたのではないか、とすら思える。次年度は今まで2年間かけて培ってきたものを完成させるつもりで取り組もうと決意を新たにしている。
 
2.
起業と言えばベンチャーかと思われるが、農業のような在来型事業や地域に根ざした市民ビジネスも近年広がっており、不登校経験者にとっては、こちらの方が身近で参入し易いと言えるかもしれない。
 例えば全国組織の一つ、ワーカーズコレクティブ・ネットは、ここ5年で4割増えて5600になった。この就農では各県もかなり力を入れており、様々な融資制度や優遇制度を設けている。就農○○センターや農業公社で相談にのっているので資料として後に掲載する。この他各県で農業体験や農業実習、ワーキングホリデーツーリズム。大学校、農業研修業等実に豊富な対応をしている。(社)大日本水産会では漁業研修生の募集も行っている。林業でも各地の森林組合で、林業および木工品製作や木材加工の職員を募集している。
 Uターン、Iターン、定住を希望する人の為には、(財)地域活性化センターが地域づくりの人材募集を扱っており、各地で就職面接会も行っている。このように探せば実に幅広い就業(社会参加)の方法があることがわかる。
図 新しく農業を始めるまで
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実際はいろいろな場合があります。おおまかなモデルケースと考えてください。








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