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4 集落移転を実施したことのない団体での集落再編整備に対する考え方
〜愛媛県野村町、熊本県水上村及び多良木町の調査から〜
 愛媛県野村町では、過去に移転の可能性について検討したこともあるが、住民に移転の意思が無く、現在では住居の移転を伴う再編整備を行政側から持ち出す考えはないとのことであった。また、限界集落から旧村単位の中心集落に移転しようにも、当該中心集落に移転に必要な用地が確保できないとしている。
 熊本県水上村では、昭和45年の国の制度の創設時に住民に移転を募ったが、希望する集落がなくこれまで移転の実績はない。しかし、昨今では介護保険、救急、消防などのサービスの提供をより効果的に行うためには、いわゆる「飛び地民家」については本来、移転が望ましいとしている。特に、「飛び地民家」の隔絶性は、救急救命の観点から一刻を争う問題になる可能性があり、村としては深刻な問題として受け止めているとのことであった。
 
 以上から、
・集落移転をこれまで想定していなかった団体にあっても、例えば、かつての小国町のように集落の置かれた環境を点検するために客観的な要件を設定し、点検の結果一定の要件に該当する集落について、真摯にその集落の在り方、進むべき方向を検討することが必要である。
・既存の集落を超えた複数の集落による新たな地域単位をベースとして農林地の利用・管理を行う体制を構築し、個々の集落機能の低下や集落の消滅が農林地の管理の放棄に直結しないようにする方法も視野に入れる必要がある。
すなわち、最初から住居の移転を伴う集落再編整備によるのではなく、まずはより緩やかな再編、すなわち複数集落の統合により国土保全機能を維持することも考えられる。また、行政区の統合を行うことなく集落と集落が機能的に連携する集落連合的な考え方も最初の段階では有効と考えられる。
・いずれの方法を選択するにしても、声を上げようとしても上げられない集落もあることから、集落の在り方について住民の意思を反映するためには、まず、行政が集落をしっかりウオッチしていくことが重要である。
行政によるウオッチを前提として住民と住民、住民と行政で十分話合う機会が設けられる必要があると考えられる。
この点については、平成12年度から中山間地域直接支払い制度が創設され、支払いの前提とされる集落協定の締結に向けて、集落内あるいは複数集落間で農地の管理について話合う機会が創出されたことは有力な手がかりになるものと思われる。
また、例えば小国町の「ふるさとづくり総合助成事業補助金」や野村町の「集落熾し運動」のように、自ら知恵を出し自ら集落の施設整備等を行うやる気のある集落住民に対し助成することにより集落住民間の議論を活発化する、集落住民の内発性を高めるような仕掛けは有効であると考えられる。
・これまで、集落内で地域の課題について話し合う機会がほとんどなかった場合でも、例えば多良木町槻木地区の「教育懇話会」のような学校の問題と地域の問題の双方についての意見交換の場を設けるような仕組みは、住民に集落の課題を考えてもらう第一歩になるものと考えられる。
・総務省は、小学校区単位で住民がまちづくりについて話し合う「わがまちづくり推進事業」を平成13年度からスタートし、普通交付税の算定上所要の財政措置を講じているところであり、これを受けて、今後さらに複数集落間での話し合いを促進する仕掛けが必要と考えられる。
 
5 集落の有する地域資源・地域環境の点検の必要性
〜小国町の樽口集落の事例に学ぶ〜
 小国町の樽口集落は「滝の次は樽口(が移転する)」とまで言われた限界集落であった。そのような状況から今日まで集落機能を維持してきた源は、集落の共有財産である地域資源を活用した観光ワラビ園の運営の成功にあった。
 
 このことから、
・小国町の観光ワラビ園の成功は、集落の共有財産の効果的な活用によるものであり、このことは、集落の有する地域資源、集落を取り巻く地域環境を自ら点検してみることが如何に重要であるかを物語っている。
このような点検を行う主体は集落住民自身で市町村が支援を行うかたちが基本と考えられるが、国、県においても、集落点検そのものの啓発及び点検手法の提示を行う必要がある。
6 「集落への移転」という逆発想
〜大塔村ふるさと定住促進竹ノ又団地の事例から〜
 農林業に就業するUJIターン者による集落の維持・活性化は従来から考えられてきた方策であるが、大塔村竹ノ又団地(ふるさと定住促進団地)は、限界集落に都市への若年通勤就労者が定住するといったかたちで集落の活性化が図られた興味深い事例である。
 
 このことから、
・都市への通勤就労者の集落への定住は、集落の有する国土保全機能維持の直接の担い手としての定住ではないものの、集落の高齢化比率を低下させ、集落の旧住民との間の心の融合を通じて集落全体を活性化させる効果があると言える。また、若年層の定住による児童・生徒数の増加により小・中学校の維持の可能性が高まるといった点も集落の維持に効果があると考えられる。
都市への通勤就労が可能であるような一定の条件を満たす集落にあっては、大塔村竹ノ又団地の整備のように「集落への移転」といった従来の集落移転とは逆の発想からの施策も集落の機能維持のために効果を有するものと考えられる。
このような観点からも、国による集落における定住促進団地の整備のための支援が今後とも必要と考えられる。
(参考)
大塔村の竹ノ又団地は総務省の地方単独事業支援施策である「国土保全特別対策事業」を活用し整備されたものである。
・平成12年の国勢調査ではUJIターンの波がおき、過疎地域で20歳〜24歳の年齢層の人口が増加している市町村が多数発生している。例えばUJIターンの波を受けとめるため森林組合の作業班での雇用を受け皿とするといった方策を視野に入れた取り組みを進めるべきである。
 
7 集落における住民リーダーの存在の必要性
 小国町樽口集落の観光ワラビ園による集落の維持・活性化、河原角集落住民の営農による滝集落移転跡地の管理は、いずれも当該集落におけるリーダーの発案に基づくものである。
 
 このことから、
・集落対策を考えるに当たっては、行政が積極的に集落を見据え取り組んでいく必要があることは既に述べたが、集落の有する地域資源を常日頃から点検し、その活用方策等を考えることができる集落住民リーダーの存在が不可欠である。
集落の在り方について住民間、行政と住民間で話し合いを行う場合でも住民の意見の調整役としてのリーダーの存在が不可欠である。
したがって、集落住民の中に地域づくりのリーダーを育てる施策が今後とも充実されるべきと考える。








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