IV 熊本県水上村、多良木町の集落の現状と集落対策
1 水上村の概況
(1)位置等
・水上村は、熊本県の東南部の九州脊梁山地に位置し、西部が五木村、多良木町、南部が湯前町、北部が泉村、東部が宮崎県椎葉村、西米良村に接しており、東西約16km、南北約19km、面積192.11km2の村である。
・明治28年に、岩野村、湯山村、江代村の3村が合体し、現在の水上村が誕生した。
(2)自然・地形条件等
・市房山(1,722m)、江代山(1,607m)、高塚山(1,508m)などの山々が村域を囲むように連なってそびえており、村の北西部奥地に源を発する球磨川と、市房山を源とする湯山川が市房ダムに流れて込んでいる。
・平地は、人吉盆地の北東端にあたる岩野地区の一部と、市房山麓に広がる湯山地区中央部に限られ、江代地区は深い谷で構成され、村全体に平坦な耕地が少ない。
・年平均気温は約14℃、準高冷地に位置するため寒暖の差が著しい。降水量は比較的多く、年平均2,800〜3,000mmとなっている。
・水上村の行政区域の約91%は森林で占められている。地目別土地利用面積は表IV−1のとおり。
表IV−1地目別土地利用面積(水上村)
(単位:ha、%)
|
全体 |
|
森林 |
農用地 |
宅地 |
その他 |
面積 |
19,211 |
17,487 |
518 |
60 |
1,146 |
率 |
100.0 |
91.0 |
2.7 |
0.3 |
6.0 |
(平成12年)
(3)交通条件
・熊本市まで1時間30分、鹿児島市及び宮崎市には約2時間で行くことができるようになり、九州内はほぼ日帰り圏に入った。
・国道388号線や県道上椎葉湯前線、県道五木湯前線を基幹とし、村道、林道、農道等が整備され住民の生活向上に寄与してきているが、まだ山間地のため改良を要する箇所も依然として多い。
(4)人口等
・人口は、昭和35年の5,896人であったのが、平成12年には2,706人となっており、54.1%と大幅な減少となっている。本村については、昭和40年までは、ダム建設に伴う立ち退き者が多かったことも、人口減少の要因となっている。
・年齢階層別の人口の推移は、昭和35年と平成12年の比較で、年少人口(0歳〜14歳)が2,273人から396人と激減しており、逆に65歳以上の老年人口が384人から839人となり、少子高齢化が顕著に表れている。
表IV−2人ロの推移(水上村)
(単位:人)
|
昭和35年 |
昭和40年 |
昭和45年 |
昭和50年 |
昭和55年 |
昭和60年 |
平成2年 |
平成7年 |
平成12年 |
総数 |
5,896 |
5,141 |
4,410 |
3,874 |
3,668 |
3,446 |
3,115 |
2,919 |
2,706 |
0〜14歳 |
2,273 |
1,778 |
1,276 |
897 |
755 |
655 |
552 |
479 |
396 |
15歳〜64歳 |
3,239 |
2,950 |
2,674 |
2,465 |
2,350 |
2,214 |
1,896 |
1,665 |
1,471 |
65歳以上 |
384 |
413 |
460 |
512 |
563 |
577 |
667 |
775 |
839 |
(5)就業者人口
・平成12年時点の就業者数は1,456人で、割合は第1次産業35.0%、第2次産業26.9%、第3次産業38.1%となっている。
・就業人口を見ると、第1次産業が減少、第2次、第3次産業の割合が増加しているが、今後もこの状況は変わらず、特に第3次産業の割合が増加するものと考えられる。
(6)農業
・農家数
昭和40年に623戸あった総農家数は、その後減少し続け、平成12年には375戸となっている。
・経営耕地面積
平成12年の耕地面積は378haとなっており、内訳は田217ha、畑9ha、樹園地152haとなっている。平均耕地面積は1.0haであり、その中の40.2%を占める樹園地は高齢化、改廃が近年多くなり、その対策に苦慮している。
・農業粗生産額
平成11年の農業粗生産額は、568百万円で、農家1戸当たりで587千円となっている。種別で見ると、野菜が188百万円で33.1%、米が154百万円で27.1%となっている。
(7)林業
・平成12年現在、森林面積は17,487haで、うち国有林が1,985haで11.3%、民有林は15,502haで88.6%となっている。
・村内の約91%が森林で占められているが、保有山林面積5ha以下の小規模林家数が全体の約68%となっており、零細経営が中心である。
(8)商業・工業
・商業
表IV−3より分かるように、平成9年度と平成11年を比較すると、卸売に関しては商店数、従業者数ともに減少傾向にあり、年間商品販売額においては53.9%と大幅な減少となっている。一方、小売に関しては、商店数、従業者数、年間商品販売額の全てにおいて、増加傾向にある。
表IV一3商業の状況の推移(水上村)
|
卸売 |
小売 |
商店数 |
従業者数(人) |
年間商品販売額(万円) |
商店数 |
従業者数(人) |
年間商品販売額(万円) |
平成9年度 |
5 |
15 |
11,959 |
39 |
76 |
78,463 |
平成11年度 |
4 |
9 |
5,511 |
44 |
80 |
86,260 |
・工業
水上村の平成11年の状況は、事業所数が8事業所、従業者数が90人、製造品出荷額が135,971万円となっている。
(9)観光・リゾート
・水上村への観光客数は、平成12年度で約25万人となっており、平成2年の約16万人と比較すると1.6倍であり、着実に増加してきている。
・熊本県下第2の高峰で九州中央山地国定公園に指定されている市房山(1,722m)があり、その4合目にある市房神社には樹齢千年ともいわれる大杉が林立している。また、市房ダムの周辺には、現在約三万本の桜が植えられ、河川敷ではさくら祭等も開催され賑わいをみせている。
・村全体を学校に見立て、各種カリキュラムを作成し(例えば、「タケノコ山で春を味わう学校」、「ひがん花の里をウキウキ歩く学校」等々その数約20メニュー)、自分達の資源を再発見すると共に、情報発信することで、村民と都市住民との交流に取り組んでいる。JRとタイアップするなど情報発信にも工夫を凝らし、開始から3年目の平成12年度においては、延べ約2,500人が参加するなど成功をおさめている。
熊本県 球磨郡 水上村全図
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