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II.調査結果 付録集
(1)ロンドン条約及び関連文書の概要
〔外務省資料〕
 
この議定書の締約国は、
海洋環境を保護し並びに海洋資源の持続的利用及び保存を促進する必要を強調し千九百七十二年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の枠組みにおける成果、特に、予防及び防止に基づく取り組みに向けた進展に留意し、
海洋環境の保護を目的とし及び地域及び国の特別の事情及び必要を考慮した地域及び国の補完的な文書の貢献に留意し、
この問題に対する世界的な考え方の価値、特に、条約及び議定書の実施における締約国の間の協力を継続することの重要性を再確認し、
海洋における投棄からの海洋環境の汚染の防止及び消滅に関し国際条約又はその他の型の世界的な合意に規定する措置よりも厳格な措置を国及び地域の規模でとることが望ましいことを認識し、
関係する国際的な合意及び行動、特に、千九百八十二年の海洋法に関する国際連合条約、環境及び開発に関するリオ宣言並びに二十一の課題を考慮し、
開発途上国、特に、小島嶼国である開発途上国の関心及び能力を認識し、
海洋環境を保護し及び保全するため並びに海洋の生態系が海洋の正当な利用を引き続き維持し及び現在及び将来の世代の必要を引き続き満たすような形で人間の活動を管理するため、投棄による海洋汚染を防止し、軽減し及び実行可能な場合には消滅させるための一層の国際的な行動を遅滞なくとることができること及び
とらなければならないことを確信して、
次のとおり協定した。
 
第一条 定義
この議定書の適用上、
1. 「条約」とは、千九百七十二年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約(その改正を含む。)をいう。
2. 「機関」とは、国際海事機関をいう。
3. 「事務局長」とは、機関の事務局長をいう。
4. 1「投棄」とは、次のことをいう。
.1 廃棄物その他の物を船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物から海洋へ故意に処分すること。
.2 船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物を海洋へ故意に処分すること。
.3 廃棄物その他の物を船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物から海底及びその下に貯蔵すること。
.4 プラットフォームその他の人工海洋構築物を故意に処分するのみの目的で現場において放置し又は引き倒すこと。
2 「投棄」には、次のことを含まない。
.1 船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物及びこれらのものの設備の通常の運用に付随し又はこれに伴って生ずる廃棄物その他の物を海洋へ処分すること。ただし、廃棄物その他の物であって、その処分に従事する船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物によって又はこれらに向けて運搬されるもの及び当該船舶、航空機又はプラットフォームその他の人工海洋構築物における当該廃棄物その他の物の処理に伴って生ずる物を処分することを除く。
.2 物を単なる処分の目的以外の目的で配置すること。ただし、その配置がこの議定書の目的に反しない場合に限る。
.3 1.4の規定にかかわらず、単なる処分以外の目的で配置されたケーブル、パイプライン、海洋調査機器その他の物を放置すること。
3 海底鉱物資源の探査及び開発並びにこれらに関連して行われる沖合における加工から直接又は間接に生ずる廃棄物その他の物の処分及び貯蔵は、この議定書の適用を受けない。
5.1 「海洋における焼却」とは、廃棄物その他の物を船舶又はプラットフォームその他の人工海洋構築物の上で故意に処分する目的で熱分解することをいう。
 .2 「海洋における焼却」には、船舶又はプラットフォームその他の人工海洋構築物の通常の運用の間に生ずる廃棄物その他の物を当該船舶又はプラットフォームその他の人工海洋構築物の上で焼却することを含まない。
6. 「船舶及び航空機」とは、種類のいかんを問わず、水上・水中又は空中を移動する機器(自動推進式であるか否かを問わず、エアクッション船及び浮遊機器を含む。)をいう。
7. 「海洋」とは、国の内水を除くすべての海域並びにその海底及びその下をいい、陸上のみから利用することのできる海底の下の貯蔵施設を含まない。
8. 「廃棄物その他の物」とは、あらゆる種類、形状又は性状の物質をいう。
9. 「許可」とは、第四条1.2又は第八条2によってとる関係する措置に基づき、事前に与えられる許可をいう。
10. 「汚染」とは、人間による海洋環境への廃棄物その他の物の直接的又は間接的な導入であって、生物資源及び海洋生物に対する害、人の健康に対する危険、海洋活動(漁獲及びその他の適法な海洋の利用を含む。)に対する障害、海水の水質を利用に適さなくすること並びに快適性の減殺のような有害な結果をもたらし又はもたらすおそれのあるものをいう。
 
第二条 目的
締約国は、単独で及び共同してあらゆる汚染の発生源から海洋環境を保護し及び保全し並びに自国の科学的、技術的及び経済的能力に従って、廃棄物その他の物の投棄又は海洋における焼却による汚染を防止し、軽減し及び実行可能な場合には消滅させるため効果的な措置をとる。
 
第三条 一般的義務
1. 締約国は、この議定書を実施するに当たり、廃棄物その他の物の投棄からの環境の保護に対し予防的考え方を適用し、海洋環境に持ち込まれた廃棄物その他の物が害をもたらすおそれがある場合には、inpulとその効果との間の因果関係を証明する決定的な証拠があるか否かを問わず、この考え方により適当な防止措置をとる。
2. 締約国は、汚染者が原則として汚染の費用を負担すべきであるとのアプローチを考慮して、公共の利益に妥当な考慮を払いつつ、投棄又は海洋における焼却に従事することを許可された者が許可された活動に係る汚染の防止及び管理のための費用を負担するような慣行を促進するよう努力する。
3. 締約国は、この議定書の規定を実施するに当たり、直後に又は間接に、損害又は損害の蓋然性を一の区域から他の区域へ直接もしくは間接に移転させないように又は、一の類型の損害又は損害の蓋然性を他の類型の損害又は損害の蓋然性に変えないように行動する。
4. この議定書のいかなる規定も、締約国が汚染の防止、軽減及び実行可能な場合には消滅のため国際法に従ってより厳格な措置を単独で又は共同してとることを妨げるものと解してはならない。
 
第四条 廃棄物その他の物の投棄
1. 1 締約国は、廃棄物その他の物(附属書Iに掲げるものを除く。)の投棄を禁止する。
2 附属書Iに掲げる廃棄物その他の物の投棄は、許可を必要とする。締約国は、許可の発給及び条件が附属書IIの規定に適合することを確保するため行政上及び立法上の措置をとる。環境に好ましい代替手段により投棄を回避するための機会には,特別の注意を払う。
2 この議定書のいかなる規定も、締約国が附属書Iに規定する廃棄物その他の物の投棄を自国について禁止することを妨げるものと解してはならない。当該締約国は、そのための措置を機関に通報する。
 
第五条 海洋における焼却
締約国は,廃棄物その他物の海洋における焼却を禁止する。
 
第六条 廃棄物その他物の輸出
締約国は、投棄又は海洋における焼却のために廃棄物その他の物を他の国に輸出することを認めてはならない。
 
第七条 内水
1 この議定書の他の規定にかかわらず、この議定書は、2及び3に規定する範囲において内水に関係する。
2 締約国は、廃棄物その他の物を内水において故意に処分すること(海洋において実施する場合には、第一条に規定する投棄であるか海洋における焼却であるかを問わない。)を管理するため、自国の裁量により、この議定書の規定を適用するか又は他の効果的な許可及び規制のための措置をとる。
3 締約国は、内水における実施・遵守及び執行に係る立法及び体制に関する官報を機関に提供すべきである。締約国は、内水に投棄された物質の型及び性質についての報告を任意に提供するためすべての努力を払うべきである。
 
第八条 例外
1 第四条1及び第五条の規定は、荒天による不可抗力その他人命に対する危険又は船舶・航空若しくはプラットフォームその他の人工海洋構築物に対する現実の脅威がある場合において人命又は船舶、航空機若しくはプラットフォームその他の人工海洋構築物の安全を確保することが必要であるときは、適用しない。ただし、投棄がその脅威を避けるための唯一の方法であると考えられること及び投棄の結果生ずる損害が投棄を行わなかった場合に生ずる損害よりも少ないと十分に見込まれることを条件とする。投棄は、人命及び海洋生物に対する損害の可能性を最小限にするように行わなければならず、また、その投棄については、直ちに機関に報告されるものとする。
2 締約国は、人の健康、安全又は海洋環境に容認し難い脅威をもたらし、かつ、他のいかなる実行可能な解決策をも溝ずることができない緊急の場合においては、第四条1及び第五条の規定の例外として許可を与えることができる。当該締約国は、許可を与えるに先立ち、影響を受けるおそれのあるすべての国及び機関と協議するものとし、機関は,他の締約国及び適当な国際機関と協議の上、第十八条6の規定により、当該締約国に対し、とるべき最も適した手続を速やかに勧告する。当該締約国は、措置をとるべき最終時点を考慮し及び海洋環境に対する損害を防止する一般的義務に即して実行可能な最大限度まで当該勧告に従うものとし、また、自国がとる措置を機関に通報する。締約国は、そのような状況において相互に援助することを誓約する。
3 締約国は、この議定書の批准若しくは加入の時に又はその後に、2の規定に基づく自国の権利を放棄することができる。(署名締結、受諾、承認のときには放棄できない)
 
第九条 許可の発給及び報告
1. 各締約国は、次のこと行う一又は二以上の適当な当局を指定する。
.1 議定書に従って許可を発給すること。
.2 投棄の許可が発給されたすべての廃棄物その他の物の性質及び数量、並びに実行可能なときには、実際に投棄された数量並びに投棄の場所、時期及び方法を記録すること。
.3 この議定書の適用上、単独で又は他の締約国及び権限のある国際機関と協力して海洋の状態を監視すること。
2. 締約国の適当な当局は、投棄が意図されている次の物又は第八条2の定める海洋における焼却につき、議定書に従って許可を与える。
.1 当該締約国の領域において積み込まれる物
.2 当該締約国の領域において登録された船舶若しくは航空機又は当該締約国を旗国とする船舶若しくは航空機にこの議定書の締約国でない国の領域において積み込まれる物
3. 適当な当局は、許可を与えるに当たっては、第四条の要件並びに適切と認める追加の基準、措置及び要件に従う。
4. 各締約国は、次のものにつき、直接に又は地域的取極に基づいて設立される事務局を通じて、機関及び適当な場合には他の締約国に対し報告する。
.1 1.2及び1.3の定めることに係る情報
.2 執行措置の概要を含む議定書を実施するためにとられる行政上及び立法上の措置、
.3 4.2に定める措置の効果及び適用上の問題
1.2及び1.3に定める情報は、一年年ごとに提出される。4.2及び4.3に定める報告の手続及び性質は、締約国が協議の上合意する。
5 .4.2及び4.3により提出される報告書は、締約国協議会議が決定した適当な補助機関によって評価される。当該機関は、締約国の適当な会議又は特別会合にその結果を報告する。
 
第十条 適用及び執行
1 各締約国は、次のすべてのものにつき、この議定書を実施するために必要な措置をとる。
.1 当該締約国の領域において登録され又は当該締約国を旗国とする船舶及び航空機
.2 投棄又は海上における焼却が意図されている廃棄物その他の物を当該締約国の領域において積み込む船舶又は航空機
.3 国際法に従って管轄権を行使することが認められている水域において、投棄又は海洋における焼却に従事していると思われる船舶、航空機及びプラットフォーム又は他の人工(海洋)構築物
2 各締約国は、この議定書の規定に反する行為を防止し及び必要な時には処罰するため、国際法に従って必要な措置をとる。
3 締約国は、この議定書をいずれの国の管轄を越えた水域において効果的に適用するための手続(この議定書の規定に違反して投棄又は海洋における焼却を行っていることが発見された船舶及び航空機についての報告に関する手続を含む。の作成に協力することに同意する。
4 この議定書は、他国の主権が及ばないことが国際法により認められている船舶及び航空機については、適用しない。もっとも、各締約国は、適当な措置をとることにより、自国が所有し又は運用する当該船舶及び航空機がこの議定書の目的に沿って運用されることを確保するものとし、また、その措置を機関に通報する。
5 国は、この議定書に拘束されることの同意を表明した時点、又はそれ以後のいつの時点においても、当該国のみが、4に定める自国の船舶及び航空機について、この議定書の規定を執行できることを認識し、当該船舶及び航空機について、これらの規定を適用することを宣言することができる。
 
第十一条 議定書遵守手続
1 締約国会議は、この議定書が効力を生じた後遅くとも二年以内に、この議定書の遵守を評価し及び促進するために必要な手続及び制度を制定する。そのような手続及び制度は、建設的な方法で、十分かつ開かれた情報の交換を考慮に入れるために(?)、作成される。
2 締約国会議は、この議定書に従って提出される全ての情報及び1に従って制定された手続又は制度を通じて行われる全ての勧告を十分に検討した後、締約国及び非締約国に対し、助言、援助又は協力を提供することができる。
 
第十二条 地域的協力
 この議定書の目的を推進するため、特定の地理的区域における海洋環境について擁護すべき共通の利益を有する締約国は、地域的特性を考慮した上で、廃棄物その他の物の投棄又は海洋における焼却によって生じる汚染の防止、軽減及び実現可能なときには除去を目的とするこの議定書と両立する地域的な取極の締結を含む、地域的な協力を促進するように努める。締約国は、この議定書の締約国及び地域的取極の締約国が従うことができるような調和のとれた手続を作成するため、地域的取極の締約国と協力するように努める。
 
第十三条 技術的協力及び支援
1 締約国は、機関における協力を通じ、及び、その他の権限のある国際機関と協調して、次の事項のための援助を要請する締約国に対して、この議定書に定めるところに従い、投棄により生じた汚染の防止、軽減及び実現可能なときには除去のための二国間の及び多国間の援助を促進する。
.1 研究、監視及び執行のための、科学及び技術の分野における要員の訓練(適当なときには、国の能力を強化するために必要な設備及び施設の提供を含む。)
.2 この議定書の実施に関し助言すること
.3 発生する廃棄物量の最少化及び健全な生産技術に関する情報及び技術協力
.4 投棄により生ずる汚染を防止し、軽減し及び実現可能なときには除去するための廃棄物及びその他の物の処分及び処理に関する情報及び技術協力
.5 開発途上国及び市場経済への移行期にある国の特別なニーズとともに知的所有権を保護する必要性を考慮し、相互の合意に従った特権的及び優先的条件を含む有利な条件の下、特に開発途上国及び市場経済への移行期にある国に対する環境保全上の健全な技術及び当該技術に関する知識の利用及び移転
2 機関は、次の任務を実施する。
.1 技術的能力等の要素を考慮し、技術協力を必要とする締約国の要請を他の締約国に通知する。
.2 支援要請について、適当なときには、他の権限のある国際機関と協力する。
.3 適切な財源の利用可能な範囲内で、この議定書の締約国となる意図を宣言した開発途上国又は市場経済への移行期にある国が、この議定書の完全な実施を達成するために必要な措置について検討することを支援する。
 
第十四条 科学的及び技術的研究
1 締約国は、投棄及びこの議定書に関係する海岸汚染の他の発生源による汚染の防止、軽減及び実現可能なときには除去に関する科学的及び技術的な研究を促進するための適当な措置をとる。特に、そのような研究は、科学的な方法による汚染の観察、測定、評価及び分析を含む。
2 締約国は、この議定書の目的を達成するために、次の情報を要請する他の締約国が、関係する情報を利用する機会を促進する。
.1 この議定書に従ってとられた科学的及び技術的な活動及び措置
.2 海洋に関する科学的及び技術的計画及びその目的
.3 第九条1.3に従って行われた監視及び評価から観察された影響
 
第十五条 責任
 締約国は、他の国の環境又は他のすべての区域の環境に与える損害の国家責任に関する国際法の諸原則に基づき、廃棄物その他の物の投棄又は海洋における焼却から生ずる責任に関する手続を作成することを約束する。
 








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