日本財団 図書館


2−2.海外における実態
(1)諸外国における浚渫土砂の海洋投入基準
1)出典資料の概要
[1]資料名
 International Association of Dredging Companies(IADC)/Central Dredging Association(CEDA):「浚渫の環境側面 浚渫物にかかわる各国の法規制実施:海洋投棄(”Environmental Aspects of Dredging 2a:Conventions,Codes and Conditions:Marine Disposal”)」.IADC/CEDA,The Hague,1997.
 
[2]資料の位置付け
 本資料は、IADC(International Association of Dredging Companies)及びCEDA(Central Dredging Association)という業界団体により作成され出版されたものである。IADCは民間企業の浚渫深部門の会員で構成される団体であり、「公正な取引の実施、健全な入札及び標準契約条件の利用促進を目指すこと」のほか、「浚渫に係る一般の理解を広めること、特に浚渫材料に係る環境上の健全技術と有効利用のための研究を奨励すること」を目的としている。また、CEDAは、WODA(World Organization of Dredging Associations)のメンバー組織であり、公私や個人・団体を問わず、浚渫業界及びその関連業界に従事する全ての関心者の(浚渫関連の)関心事を扱っている。
 本資料には、1996年7月31日現在で、可能な限り最新の情報が記載されている。したがって、その後の基準値等の改正の有無については確認する必要がある(日本の基準値は2度の改正を経る前のものが掲載されている)。
2)全体の概要
 浚渫土砂の海洋投入処分に関する各国の状況は表2−5に示すとおりである。
[1]試験方法
 試験方法については、海洋投入処分は、資料中に記述があったものはすべて含有量試験であった(参考として、陸上投棄の場合、ドイツ及びイギリスでは溶出試験による評価も併用されていた)。
 なお、本出典資料中に掲載されているヨーロッパ諸国の海洋投入処分基準の多くは、オスロ・パリ条約の海洋活動に関するワーキンググループ(SEBA)に対して提案された段階のものである(注:その後の状況に関しては不明)。オスロ・パリ条約はロンドン条約よりも狭い海域(北海・大西洋中心)に適用される地域的条約であるため、基準値が比較的厳しくなっている。
 
[2]化学試験に関する数値基準
 大抵の国が、化学試験に関して一段階から数段階の数値基準を設けている。比較的細かい基準を設けている例としては、水中生態系への影響を考慮して5段階の基準値を設定しているオランダが挙げられる。しかし、一方で、ケースバイケースの対処を基本とするため基準値を設けないとするイギリスのような国もある。相対的にはヨーロッパ諸国の基準は化学物質濃度を重視しているが、これは生物影響を考慮していない、といった指摘も出典資料中ではみられた。
 
[3]生物影響
 生物影響への配慮を行っている国としては、ベルギー、オランダ、スペイン、カナダ、アメリカが挙げられた(注:基準、試験方法についての記述は本資料中にはないが、別資料による情報を後述する)。
 
[4]影響評価システム
 いずれの国のシステムにしても、処分案件ごとに浚渫土砂の影響評価を行い、処分場所を指定しているとみられた。
 ヨーロッパの国の多くは、まず「浚渫土砂を廃棄物として扱うかどうか」が最初の質問として発せられる。すなわち、「浚渫土砂は優先的に海洋投入処分」という図式には必ずしもなっておらず、「不要なものか否か」の判定、さらには「有害か否か」の判定が重要視されている。特にヨーロッパ諸国ではEC(現在はEU)の意思決定に影響される部分も大きいため、廃棄物に関するEC通達に基づいた考え方が主流になっている。
表2−5 浚渫土砂の海洋投入処分に関する各国の状況
No 国名 化学試験 生物影響への配慮(生物試験)*1 試験方法 備考
現行の数値基準 SEBAに対する基準(提案)*2
アジア  
1 香港 1段階
・管理値
  検討中    
2 フィリピン なし        
ヨーロッパ  
3 ベルギー 5段階 2段階 *3 含有量試験  
・アクションレベル1
(目標値)
・アクションレベル2
(限界値)
4 ドイツ
(見直し中)
2段階   含有量試験 浚渫関連の法令やガイドラインは数多くある。浚渫行為にあたっては計画段階で多くの法令を注意深く検討する必要あり。(参考)陸上投棄に関しては溶出試験を行っている。
・アクションレベル1
(参考値)
・アクションレベル2
(限界値)
5 オランダ 5段階 2段階 含有量試験  
・目標値 ・レベル1
・限界値 (一般環境)
・参考値 ・レベル2
・調停値 (海洋投入処分する浚渫土砂中の含有量目標値)
・警告値
 
6 ノルウェー
(見直し中)
5段階   含有量試験 ケースバイケースを基本とする。
・クラス1(清浄)
・クラス2(適合)
・クラス3
(貧相、要検討)
・クラス4(不良)
・クラス5
(強度に汚染)
7 スペイン 2段階   含有量試験 法規制はなく勧告段階であるが、近い将来に勧告が法的拘束力を持つよう目
指している。
・アクションレベル1
・アクションレベル2
8 イギリス ガイドライン基準なし     含有量試験 ケースバイケースを基本とする。
(参考)陸上投棄に関して溶出試験も実施している。
北米地域  
9 カナダ(オンタリオ州)        
10 アメリカ     ケースバイケースを基本とする複雑な枠組みあり(詳細は「グリーンブック」に記載されている)。
大洋州地域  
11 オーストラリア       ケースバイケースを基本とし、州ごとに法や基準がある。
(参考)  
  日本 1段階     溶出試験  
注)
*1.生物影響については別資料による情報を後述する。
*2.OSPAR条約(ヨーロッパにおける地域条約)の海洋活動に関するワーキンググループ(SEBA)に提案されたもの。
*3.「○」は、出典資料において、化学試験については底質に係るガイドラインや基準があり、生物試験については何らかの配慮がなされていると示されていたものである(詳細記述はなし)。
出典)国土交通省港湾局資料








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION