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IV.不可欠な中高齢者の活用
 
 最近の少子化傾向等からわが国の労働人口は、今後確実に減少していく。
 造船協力業にあっても、年々世代交代は進んでいくが、当面は中高齢者が依然として大きな比率を占め続けることは間違いない。こうした前提の上に立てば、中高齢者をいかに活用していけるかが、今後の大きな課題である。
 中高齢者であるからケガの発生が多いと決めつけるのではなく、中高齢者の今までの経験、知識、技量をうまく引き出すのは、事業主並びに管理・監督者の中高齢者に対する認識と意欲にかかっている。中高齢者の長所・短所を知り、何をなすべきかを考えることが大事ではないかと考える。
 また、休業災害等が発生した場合には、受傷者から災害に至った経緯等を十分に聞き取り、中高齢者が何を考え、どのような心理状態にあったのかを良く知ることによりその対応も違ってくる。その上で、必要な作業基準、教育、日常の指導、作業環境の改善等を平行して取り組むことが必要である。
 
中高齢者の長所と適性
 
[1]出勤率が高く、遅刻が少ない。
[2]判断力があり、意欲が高い。
[3]義理堅く、常識が豊かである。
[4]勤務態度がまじめで責任感に富み、仕事に真剣に取り組む。
[5]持久力があり、辛抱強く、単純作業に従事しても飽きない。
[6]仕事が丁寧でむらが無く、手順が良いので仕事が遅くない。
[7]定着率が高い。
[8]礼儀正しく職場の規律を守り、集団行動の場合でも協調性に富む。
[9]仕事の経験が豊富で段取りがうまく、注意力があり熟練技能に活かせる。
[10]精神的にも安定しており、落ち着いている。
[11]物と時間を大切にする。
[12]仕事や人間関係に豊富な知識や経験を活かすことができ、未熟練者や若年層の相談相手になれる。
 
[13]不平や不満、わがままが少ない。
[14]創意工夫をすることが上手である。
 
長所が危険要因となることもある
 
 長所と適性があったからといって、ケガをしないとは限らないし、長所が逆に危険要因として作用することを忘れてはならない。
 熟練者であれば、作業をうまく、速く、疲れずに安全にやれる能力は普通の作業者より高い。しかし、作業の個々の手順が無意識的、自動的に連続動作として進行してしまうので、たとえば、機械に日常と違い異常があっても見逃してしまうことがある。慣れすぎによるエラーが起こり得ることも認識しておく必要がある。
 
 熟練者がケガをする理由としては、
[1]長年同じ作業をしている→習慣動作がでる
[2]仕事をよく知っている→早合点をする
[3]上手に仕事ができる→手抜きをする
[4]仕事に自信を持っている→確認をしない
[5]速く仕事ができる→別のことに手をだす








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