II.自分自身の体力の衰えを正しく認識する
中高齢者の労働災害を防ぐには、環境や設備面での配慮も重要だが、中高齢者自身が自らの体力の衰えを正しく認識し無理な作業行動をしないということが大切である。
加齢に伴って知識や技能は熟達していくが、体力は確実に衰えていく。気持ちの上ではこの程度は大丈夫と思っても実際には体力が追いついて行かないことが多くなり、その認識と実際の体力とのギャップの大きさが災害発生の大きな潜在要因の一つであると考えられる。
中高齢者の被災率の高さは統計上にも明確に現れており、50才未満と50才以上との死亡災害を比較すると、概ね50才以上が2倍の発生率になっている。
労働災害(死亡)に占める中高齢者の割合
(注)日造協資料(平成9年〜12年)より
また、死亡災害に限らないが、突発事態に対する反応の鈍化等全体的な体力の衰えが、被災した場合の身体へのダメージを相対的に大きくする(中高齢者ほど被災の程度が重くなる)ことをよく認識しておくことも大切である。
年齢階層別の被災程度(死亡、傷病)(製造業全体)
  |
40才未満 |
40〜50才
未満 |
50〜60才
未満 |
60才以上 |
死傷者の年齢層別
比率(A) |
35.5% |
21.2% |
29.2% |
14.1% |
(A)のうち死亡だけ
の年齢層別比率(B) |
26.6% |
18.6% |
35.2% |
19.6% |
(B)/(A) |
0.75 |
0.88 |
1.2 |
1.4 |
(注)厚生労働省資料(平成10年度分)より
死傷者全体合計に占める50才以上の比率(A)
死傷者全体のうち50才以上の死亡災害の比率(B)
下図は作業の安全に関係の深い心身機能について、20〜24歳または最高値を100とし、55〜59歳ではどのように変化するかをまとめたデータを表したものである。
参考にしていただきたい。
心身機能の加齢による変化
作業の安全に大きく影響する機能と50歳代後半の低下状態
(拡大画面: 184 KB)
注1:指数は20〜24歳または最高値に対する55〜59歳の機能の相対比(%)
斎籐一・遠藤幸男:高齢者の労働能力(労働科学研究所 労働科学叢書53)から作表